飲食の採用コストは、人手不足と入れ替わりの多さから、多くの店舗で負担が大きくなりやすい費用です。
「求人広告を出しても応募が来ない」「採用してもすぐ辞めてしまう」と悩む採用担当者や経営者も少なくありません。
この記事では、アルバイト・正社員別の相場と計算方法、コストが高くなる理由を公的データで整理し、採用単価を抑える7つの対策(実践策5つと定着支援2つ)を紹介します。
- 飲食業界におけるアルバイト・中途正社員の採用コストの目安
- 採用コストを構成する外部コスト・内部コストの内訳と計算方法
- 選考歩留まりの改善や定着支援による採用コストの削減策
1.飲食業界における採用コストの平均相場

飲食業界の採用活動を適正化する第一歩は、採用単価の相場を把握することです。雇用形態によって採用の難しさや活用する募集チャネルが異なるため、相場感も大きく分かれます。
アルバイト・パートの採用コスト相場(1人あたり約5万〜8万円が目安)
飲食店におけるアルバイト・パートの1人あたり採用コスト
一般的に約5万円から8万円前後が目安
地域の最低賃金の改定や、他業種との募集条件の競合により、求人広告の掲載単価や応募獲得単価は上昇しやすい状況にあります。
なお、全業種を対象とした厚生労働省の委託調査(令和3年実施)では、非正社員の1件あたりの平均採用コストは、求人情報誌・チラシで7.7万円、インターネットの求人情報サイトで10.8万円でした。
中途正社員の採用コスト相場(1人あたり約40万〜100万円が目安)
店長候補や料理長、マネージャー層などの中途正社員を採用する場合、1人あたりのコストの目安は約40万円から100万円前後まで幅があります。
一般的な中途採用向け求人サイトを利用する場合は40万〜60万円程度が目安とされる一方、即戦力の調理技術者やエリアマネージャークラスを人材紹介(エージェント)経由で採用する場合は、紹介会社が定める手数料(理論年収の30〜40%程度に設定されることが多いとされます)が発生するため、1人あたり80万〜100万円以上になるケースもあります。
全業種を対象とした厚生労働省の委託調査(令和3年実施)でも、紹介会社を利用した正社員採用の1件あたりの平均採用コストは85.1万円でした。
また、紹介手数料率は、医療・介護分野などの一部を除く多くの職種で「30%以上40%未満」とする紹介会社の割合が最も高くなっています。
出典:厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領(第6 手数料)」、厚生労働省「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書」(令和3年度厚生労働省委託調査)
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人材紹介を使って店長候補や調理経験者を採用する場合、費用の大半を占めるのが紹介手数料です。次の記事では、人材紹介の手数料相場や計算式に加え、手数料を安く抑えるためのコツを解説しています。
2.採用コストの構造と計算方法(外部コストと内部コスト)

採用コストを正確に把握するには、求人媒体に支払う直接的な費用だけでなく、社内で発生している見えにくい人件費も含めて算出する必要があります。
採用コストは大きく「外部コスト」と「内部コスト」の2つに分類されます。
外部コスト|求人広告費・人材紹介手数料・イベント出展費など
外部コストとは
採用活動に伴って外部の事業者やサービスへ直接支払う費用の総額
- 求人広告の掲載料(Web媒体、求人折込チラシなど)
- 人材紹介会社への成功報酬手数料
- スポットワーク(スキマバイト)や人材派遣の利用手数料
- 合同企業説明会や採用イベントへの出展費用
- 応募者向け適性検査の受検料
外部コストは請求書ベースで金額を把握しやすいため、予算管理の対象になりやすい費用です。
内部コスト|面接官・採用担当者の人件費・選考管理工数
内部コストとは
自社の従業員や店舗スタッフが採用活動に関わることで発生する工数・人件費
- 求人原稿の作成や打ち合わせに要した時間
- 応募者への連絡、面接日程の調整にかかる工数
- 店長やエリアマネージャー、本部人事による面接対応の時間
- 合否連絡や内定通知書などの書類作成工数
- 入社手続きや受け入れ研修(OJT)を担当する既存スタッフの人件費
内部コストは見落とされがちですが、面接を担当する店長や本部責任者の人件費を考慮すると、店舗運営にとって大きな負担になっている場合があります。
1人あたり採用コスト(採用単価)の算出式
採用コスト全体を管理するための指標が「採用単価(1人あたり採用コスト)」です。以下の計算式で算出します。
採用単価 =(外部コスト総額 + 内部コスト総額)÷ 採用人数
■たとえば…
(求人広告費(外部コスト)30万円 + 面接や書類対応の人件費(内部コスト)10万円)÷ 採用人数2名 = 1人あたりの採用コストは20万円
この指標を定期的に確認することで、投資対効果の推移を客観的に評価できます。
3.なぜ飲食業界の採用コストは高騰しやすいのか?

飲食業界で採用コストが膨らみやすい背景には、業界固有の構造的な課題と、採用プロセスのボトルネックがあります。
有効求人倍率の高止まりと他業種との募集時給競争
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」によると、パートタイムを含む常用の有効求人倍率は、職業計の1.06倍に対し、飲食物調理従事者が2.21倍、接客・給仕職業従事者が2.31倍と、全職業の2倍程度の水準です。
前年同月と比べるとやや低下しているものの、求職者1人に対して2件以上の求人がある状態が続いています。
さらに、物流倉庫の仕分け作業や小売業のレジスタッフなど、未経験から働ける他業種との間で時給の引き上げ競争が起きており、以前と同じ掲載費用では十分な応募数を集めにくくなっています。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)について」
早期離職による「採用コストの掛け捨て・再募集ループ」

厚生労働省「令和7(2025)年雇用動向調査」によると、宿泊業,飲食サービス業の入職率は27.8%、離職率は23.7%で、いずれも産業計(入職率14.7%、離職率13.7%)を大きく上回り、調査対象の16大産業の中で最も高い水準です。
仮に従業員10人の店舗に離職率23.7%を当てはめると、1年間で2人強が入れ替わる計算です。パートタイム労働者に限ると、宿泊業,飲食サービス業の入職率は29.7%、離職率は25.0%と、さらに入れ替わりが大きくなっています。
この2人強をすべてアルバイトで補充し、1人あたりの採用コストを1章で示した目安(約5万〜8万円)とすると、欠員を埋めるだけで毎年およそ12万〜19万円がかかる計算になります。
飲食業の採用コストは単発の支出ではなく、離職率に連動して毎年発生する費用と捉えておく必要があります。

費用をかけて採用しても、職場の人間関係や想定以上の業務負荷などを理由に短期間で離職してしまうと、投じた採用コストを回収できないまま、再び広告費をかけて募集し直すという悪循環に陥ります。
出典:厚生労働省「令和7(2025)年雇用動向調査結果の概況」
応募後の連絡遅延や選考途中離脱による歩留まりの悪化
日々の店舗運営の忙しさから応募への対応が遅れると、求職者は他店の選考へ流れてしまいます。
応募から初回連絡までに数日かかったり、面接設定までのやり取りが滞ったりすると、面接の無断キャンセルや内定辞退が増え、実質的な応募獲得単価(CPA)と採用単価を押し上げる原因となります。
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応募が集まっているのに面接の無断キャンセルや内定辞退が続くと、広告費をかけても採用につながらず、採用単価は上がる一方です。次の記事では、採用歩留まりが悪化する原因の分析方法から、具体的な改善策までをくわしく解説しています。
4.飲食店の採用コストを抑える5つの実践的アプローチ

採用コストを抑えるには、掲載費用を単純に削るのではなく、選考プロセスの歩留まり向上と募集手法の多様化を図ることが有効です。
1. 応募対応のスピード化と選考ファネルの改善(面接来訪率の向上)
Web求人媒体経由の応募者は、複数の店舗に同時応募していることが一般的です。
応募を受け付けたらできるだけ早く(可能であれば1時間以内に)最初の連絡を入れ、遅くとも当日中に面接日程を確定させる運用を徹底すると、面接来訪率の向上が期待できます。
2. オウンドメディア・自社採用ページの活用(求人検索エンジンとの連携)
自社の公式ホームページ内に採用ページを整備し、求人検索エンジンと連携させる手法は、掲載期間に縛られずに応募者を集めやすい方法です。
3. スタッフ紹介制度(リファラル採用)の仕組み化
現在働いているアルバイトや社員から知人を紹介してもらうリファラル採用は、広告宣伝費を抑えやすい手法です。
4. スポットワークを活用した「お試し雇用」
スポットワークのサービスを活用し、繁忙日や突発的な欠員を単発のアルバイトで埋めながら、店舗と相性のよいスタッフを長期雇用へ切り替えるアプローチです。
長期雇用への切り替え条件や手数料はサービスごとに異なるため、事前に利用規約を確認しておきましょう。
5. 採用ペルソナの明確化によるマッチング精度の向上
「誰でも歓迎」といった曖昧な求人原稿は、応募者の幅を広げる一方で、店舗が求める人材との適合度を下げます。
◎自店が必要とする人材像(ペルソナ)を具体的に定義し、その人が求めるシフト条件や待遇を的確に伝えることで、ミスマッチによる選考辞退や早期離職を抑えやすくなります。
- 平日のランチ帯に週3日働ける人
- 将来の独立を視野に入れ、調理経験を積みたい人 など
なお、ペルソナは社内で募集ターゲットを整理・分析するための人物像です。
ただし、求人原稿に年齢や性別の条件を書くことは、法律で原則として禁止されています(年齢は一部の例外を除く)。
求人原稿では、年齢や性別ではなく、勤務時間帯や仕事内容などの条件面で訴求しましょう。
参考:労働施策総合推進法第9条、男女雇用機会均等法第5条(兵庫労働局「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」、大阪府「募集・採用の際の禁止事項と留意事項、公正採用選考」)
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ペルソナの考え方は、アルバイト採用だけでなく、店長のような中核人材の採用でも役立ちます。次の記事では、飲食店の店長採用を成功させるための手順を、ペルソナ設計から入社後の定着まで順を追って解説しています。
5.採用コスト削減の鍵は「早期離職防止」と「定着支援」にあり

採用単価を本質的に抑えるポイントは、採用した人材に定着してもらい、1人あたりに投じた採用費用を回収できる期間を長くすることです。
入社後オンボーディングと受け入れ体制の整備
新しく入社したスタッフの早期離職につながりやすい要因として、「教育担当が決まっておらず放置された」「マニュアルがなく何をすればよいかわからない」といった受け入れ体制の不備が挙げられます。
☑Check
以下の項目を明確にしておくことで、入社直後の不安を和らげやすくなります。
- 初日のオリエンテーション手順
- 基礎スキルの習得チェックシート
- 業務を教えるメンター担当者
心理的安全性を高める1on1や定期的な面談フォロー
心理的安全性とは
職場で意見や不安を安心して口にできる状態
⇒従業員のエンゲージメントとの関係でも注目されている考え方
入社後2週間、1か月、3か月といった節目で、店長や指導役が15分程度の短い面談(1on1)を設け、業務の疑問点やシフトの悩みを聞く仕組みを持つことで、不満の蓄積による突然の離職を防ぎやすくなります。
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入社後の受け入れ体制を整えるうえで、まず押さえておきたいのがオンボーディングの考え方です。次の記事では、オンボーディングの基礎から実践の進め方、具体的な導入事例や成功のポイントまでをわかりやすく紹介しています。
6.飲食店に合った採用手法・求人チャネルの比較

求める雇用形態や採用の緊急性に応じて、適切な課金モデルのチャネルを選ぶことが重要です。
課金形態別(掲載課金型・応募課金型・採用成功報酬型)のメリット・デメリット
求人サービスには主に3つの課金体系があり、それぞれ費用対効果の出方が異なります。
| 課金形態 | 特徴・メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 掲載課金型 (一般的な求人媒体など) | 掲載枠を期間で購入する。複数名を採用できれば1人あたりの単価を下げやすい | 応募が0件でも費用がかかる |
| 応募課金型 (一部のWeb媒体など) | 応募1件ごとに費用が発生する。初期費用がかからない | 連絡がつかない応募やターゲット外の応募にも費用がかかる場合がある |
| 採用成功報酬型 (人材紹介など) | 入社が決まった時点で費用が発生する。採用に至らなければ費用はかからない | 中途社員では1人あたり数十万〜100万円規模になることがある |
大量募集を行う新規オープン時は掲載課金型、通常時の欠員補充には自社採用ページやスポットワーク、専門職のピンポイント採用には成功報酬型というように、用途に応じて使い分けることがコスト管理につながります。
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課金形態の違いを理解したら、次は自店に合った求人サービスを具体的に比較してみましょう。次の記事では、飲食業界の採用に役立つ求人サービス・サイト9選を取り上げ、それぞれの特徴や課金形態別の費用の考え方、選び方を解説しています。
7.飲食の採用コストに関するよくある質問

飲食の採用コストについて、ハローワークの費用や助成金の活用、内部コストの試算方法など、採用担当者が抱きやすい疑問をまとめました。採用計画の見直しにお役立てください。
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ハローワークの求人に費用はかかりますか?
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ハローワークへの求人申し込みは無料です。外部コストをかけずに募集できる一方、求職者の層や応募の集まり方は地域や職種によって異なるため、自社採用ページなど他の手法と組み合わせて活用するとよいでしょう。
手続きの詳細は管轄のハローワークで確認してください。
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採用コストの負担を軽くできる助成金はありますか?
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厚生労働省の雇用関係助成金の中には、一定の要件を満たす人を雇い入れた事業主を対象とするものがあります。
対象者や支給要件、申請期限は制度ごとに異なり、改正されることもあるため、最新の情報は厚生労働省のホームページや管轄の労働局・ハローワークで確認してください。
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内部コストの人件費はどのように試算すればよいですか?
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採用業務に関わった人ごとに「時給換算の人件費 × 採用業務にかけた時間」を計算し、合計する方法が一般的です。月給制の場合は、月給を月の所定労働時間で割ると時給に換算できます。
面接や日程調整の時間を簡単に記録しておくと、試算の精度が上がります。
8.まとめ|飲食の採用コストは「相場の把握」と「定着支援」で見直そう
飲食業界の採用コストは、アルバイトで1人あたり約5万〜8万円、中途正社員で約40万〜100万円が目安とされ、求人広告費などの外部コストと、面接や研修にかかる内部コストを合わせて把握することが出発点です。
宿泊業,飲食サービス業は入職率・離職率がともに高く、採用コストは毎年くり返し発生しやすい費用です。応募対応のスピード化、自社採用ページやリファラル採用の活用、スポットワークによるお試し雇用、ペルソナの明確化に加え、オンボーディングや定期面談による定着支援まで一体で進めることで、採用単価を抑えやすくなります。