退職手続きは専門用語も多く、難しいのではと感じる方も多いでしょう。毎月のように発生するものではないため、久しぶりに担当すると「前回はどう対応したんだっけ」と記憶があいまいになり、不安に思っている方もいるのではないでしょうか。
しかし、社会保険や雇用保険の手続きは、法律の背景をすべて暗記する必要はなく、「いつまでに」「何を」「どこへ」提出するかという決まった「型」さえ押さえれば、正しく処理ができます。
この記事では、従業員が退職する際の社会保険や雇用保険の手続きについて、人事総務担当者向けに分かりやすく解説します。手続きの期限や必要な書類、退職する従業員への案内方法まで、事例を交えて具体的にまとめました。
- 退職時に発生する社会保険と雇用保険の手続きの全体像
- 各手続きの具体的な期限、提出先、必要な書類
- 退職する従業員に案内すべき健康保険・国民年金の切り替え方法
1.退職時に必要な社会保険と雇用保険の手続き一覧

従業員の退職時には、社会保険や雇用保険に関する様々な手続きが集中します。いつまでに何をすべきか全体のタイムラインを把握しておくことで、手戻りなくスムーズに実務を進めることができるでしょう。
全体の流れと期限(5日以内と10日以内)
従業員が退職する際、会社が行うべき主な公的手続きは「社会保険(健康保険・厚生年金)」と「雇用保険」の資格喪失手続きです。これらには厳格な提出期限が設けられています。
| 社会保険 | 退職日(資格喪失日)の翌日から5日以内 |
| 雇用保険 | 退職日の翌々日から10日以内 |
提出期限に遅れてしまうと、以下のようなトラブルが発生するリスクがあります。
- 退職した従業員本人が国民健康保険への切り替え手続きを進められない
- 失業給付の受給手続きが滞る
全体の流れを事前に把握し、余裕を持って期限内に進めましょう。
退職時に回収するもの・渡すものリスト
手続きを滞りなく進めるためにも、退職者との間でやり取りする書類や備品を整理しておきましょう。
| 区分 | 項目 | 備考 |
|---|---|---|
| 会社が回収するもの | 資格確認書(マイナ保険証未登録者のみ) | 扶養家族分も含めて回収。協会けんぽの場合は資格喪失届に添付して年金事務所へ提出(健康保険組合の場合は組合の指示に従う) |
| 社員証・セキュリティカード | ||
| 貸与PC・携帯電話・制服等 | ||
| 名刺 | 自社分の残りや、業務で受け取った他社の名刺も対象 | |
| 鍵類 | オフィス、ロッカー、キャビネット、社用車の鍵等 | |
| 通勤定期券 | 現物支給の場合のみ回収対象 | |
| 業務データ・記憶媒体 | 社用USBメモリ、外付けHDD等。情報漏洩防止の観点で重要 | |
| 会社が退職日当日に渡せるもの | 雇用保険被保険者証 | 本人保管でなく会社に控えがある場合 |
| 基礎年金番号通知書 | 会社保管分がある場合 | |
| 退職証明書 | 本人からの請求があれば遅滞なく交付する義務あり(労働基準法第22条) | |
| 退職金の支給明細書 | 退職金がある場合で、退職日までに金額が確定しているとき | |
| 会社が退職後に郵送するもの | 離職票 | ハローワークでの処理を経るため、退職後2週間前後が目安 |
| 源泉徴収票 | 退職後1か月以内に交付義務あり(所得税法第226条) | |
| 退職所得の源泉徴収票 | 退職金がある場合のみ。通常の源泉徴収票とは別の書類(所得税法第226条第2項) | |
| 健康保険・厚生年金保険資格喪失確認通知書 | 年金事務所での処理後に発行される、資格喪失を証明する通知書 |
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退職者へ渡す書類の中でも、源泉徴収票は年末調整や確定申告に直結する重要な書類です。発行義務や記載内容の確認方法、転職先への提出時の注意点などをまとめた記事もあわせてご覧ください。
2.社会保険(健康保険・厚生年金)の手続き

健康保険と厚生年金の資格喪失手続きは、退職日の翌日から5日以内という非常に短い期限が設定されています。速やかに年金事務所へ届出を行うための具体的な手順と添付書類の取り扱いについて解説します。
資格喪失届の提出先と期限
会社は退職日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を作成し、管轄の年金事務所へ提出(電子申請(e-Gov)や郵送も可)しなければなりません。
なお、退職者がマイナ保険証を利用登録しておらず、「資格確認書」の交付を受けている場合は、退職者本人と扶養家族分の資格確認書を回収し、協会けんぽの場合は資格喪失届に添付します。健康保険組合に加入している場合は、返却方法を組合に確認してください。
提出期限が短いため、退職が決まった段階で資格確認書の有無を確認し、最終出社日までに確実に回収できるよう、事前に本人へ案内しておくことが重要です。
参照:日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」
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資格喪失届の提出は郵送のほか、e-Govを使った電子申請にも対応しています。詳しい手順はこちらの記事でご紹介しています。
資格確認書を回収できない場合の対応

退職者が資格確認書を紛失してしまい、回収できない

最終日に回収できず、退職後に連絡がつかなくなってしまった
実務の現場では、こういったトラブルも珍しくありません。このような場合、紛失や未回収の理由を記載した「健康保険 資格確認書回収不能届」を資格喪失届に添えて提出することで、通常通り手続きを受理してもらえます。
参照:日本年金機構「資格確認書の添付を必要とする届書提出時に添付ができないとき」
■ドライバー職の欠員補充にお困りの方へ
従業員の退職に伴う対応は、退職手続きだけではありません。退職によって生じた欠員を補充するための採用活動も必要になります。特にドライバー職は慢性的な人手不足が続いており、採用に時間がかかるケースも少なくありません。
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欠員の補充を考える際は、入社手続きにも目を向けておきましょう。必要書類や社会保険・雇用保険の加入基準など、退職時と共通する部分も多く、担当者として知っておくと業務の理解がぐっと深まります。
3.雇用保険の手続き(資格喪失と離職票)

雇用保険の手続きは、ハローワークに対して退職日の翌々日から10日以内に行います。退職者の失業手当受給に直結するため、必要書類の作成ポイントと留意点をしっかり確認しておきましょう。
ハローワークへの提出書類と期限
雇用保険の資格喪失手続きは、退職日の翌々日から10日以内に、会社の所在地を管轄するハローワークへ書類を提出して行います。
■必要な書類
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)
離職証明書には、過去の賃金支払い状況や離職理由などを正確に記入する必要があるため、出勤簿や賃金台帳などの根拠資料をあらかじめ手元に準備した上で、誤りなく作成を進めましょう。

【編集部からのワンポイント】
離職証明書に記載した賃金額が、退職者の失業手当の支給額を算定する基礎となるため、必ず正確に記載してください。
参照:厚生労働省「事業主の行う雇用保険の手続き」
離職票発行時の注意点
離職証明書に記載する「離職理由(自己都合か会社都合かなど)」は、退職者が受け取る失業手当の給付開始時期や支給日数に直結する重要な項目です。
しかし、会社都合退職者がいると、雇用調整助成金やキャリアアップ助成金などの受給に一定の制限がかかるため、会社側が「こっそり自己都合にしよう」と処理してしまうケースがあります。
事実と異なる離職理由を記載すると、退職者から異議申し立てを受けるほか、悪質な場合は助成金の不正受給として扱われるおそれがあります。
後からトラブルにならないよう、退職届などの客観的な書類を確認し、事実に基づいて正確に記載しましょう。
なお、離職票は、転職先がすでに決定している場合など、退職者本人が「不要」と希望した場合には発行を省略することができます。
4.社会保険料の控除ルール|退職日(月末と月中)による違い

退職日が月末か月中かによって、最終給与から控除する社会保険料の月数が変わります。ここでは、実務で混乱しやすい社会保険料の控除ルールや仕組みを整理し、給与計算でのミスを防ぐためのポイントを解説します。
社会保険料がいつまで徴収されるかのルール
社会保険料は日割り計算を行わず、月単位で計算される仕組みになっており、「資格喪失日(退職日の翌日)が属する月の前月分まで」徴収されるという明確な基本ルールが存在します。
これらの原則を理解していれば、なぜ退職する日によって控除される保険料の月数が異なるのかを構造的に理解できます。
【具体例】月末退職と月中退職の控除シミュレーション
具体例をあげてみていきましょう。以下の図は8月31日に退職した場合と8月15日に退職した場合の社会保険料の控除の違いです。

8月15日に退職(月中退職)した場合、資格喪失日は8月16日です。この場合は「喪失日(8月)の前月分(7月分)まで」となるため、8月分の保険料は引かれません。
一方、8月31日に退職(月末退職)した場合、資格喪失日は翌日の9月1日となります。ルールに従うと「喪失日(9月)の前月分(8月分)まで」徴収対象となるため、最終給与からは7月分と8月分の2ヶ月分がまとめて控除されるケースが多くなります。
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「そもそも、社会保険てなんだっけ」という方は、こちらの記事でおさらいしておきましょう。各保険の負担割合や計算方法について解説いしてます。
5.退職する従業員へ案内すべき3つの健康保険と国民年金

退職者から、健康保険や国民年金の切り替えについて質問を受けることもあります。スムーズに案内できるよう、事前に理解しておきましょう。
国民健康保険・任意継続・家族の扶養の違い
退職する従業員は、退職日の翌日から会社の健康保険が使えなくなるため、速やかに新たな健康保険へ加入手続きを行う必要があります。退職後の健康保険には、以下の3つの選択肢があります。
- 国民健康保険:退職から14日以内に手続き
お住まいの市区町村で手続きを行う - 任意継続被保険者制度:退職から20日以内に手続き
現在の会社の健康保険にそのまま加入し続ける - 扶養に入る
配偶者や親族の健康保険の扶養に入る
制度ごとに加入条件や申請期日が異なるため、注意が必要です。
参照:全国健康保険協会(協会けんぽ)「任意継続|給付と手続き」
国民年金への切り替え手続き
60歳未満の退職者が次の勤務先の厚生年金にすぐ加入しない場合、厚生年金保険の被保険者(第2号被保険者)から国民年金の第1号被保険者へと切り替わります。この手続きは、退職日の翌日から14日以内に、退職者本人がお住まいの市区町村役場で行う必要があります。

【編集部からのワンポイント】
会社が代行する手続きではありませんが、健康保険の案内に紛れて抜け落ちやすいポイントであるため、あわせて伝えておくと親切です。
■退職者が多いとお悩みなら、採用のミスマッチが原因かもしれません
「最近、退職手続きが多い気がする」とお悩みではありませんか?その背景には採用段階でのミスマッチが隠れていることがあります。特にドライバー職は慢性的な人手不足もあり、せっかく採用してもすぐに離職されてしまい、人員確保に悩む企業が少なくありません。
ドライバー専門の転職エージェント「カラフルエージェント ドライバー」なら、経験豊富なキャリアアドバイザーが応募者の希望条件や適性を丁寧にヒアリングした上でご紹介するため、入社後のミスマッチを減らします。
入社後も定期的なアフターサポートを実施し、早期離職の防止までトータルでサポートします。
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6.よくある質問

ここでは、社員の退職手続きを行う際に、総務担当者からよく寄せられる疑問についてまとめました。
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社会保険の資格喪失手続きの期限(5日以内)を過ぎたらどう対処すればよいでしょうか。
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気づいた時点ですぐに管轄の年金事務所へ書類を提出してください。
期限を過ぎても手続き自体は問題なく受理してもらえます。ただし、会社側の手続きが遅れると、退職した本人が市区町村で国民健康保険への切り替えを行えず、一時的に全額自己負担で医療機関を受診せざるを得なくなるなどの不利益が生じます。
遅延に気づいたら直ちに届出を行い、状況に応じて本人へ一言状況を説明するなどのフォローを行いましょう。
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退職した元従業員から「会社を辞めたのに保険料の請求書が届いた」と問い合わせがありました。どう対応すべきですか。
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退職者本人が自身で手続きした国民健康保険や任意継続の保険料請求書が届いたケースがほとんどです。
会社が資格喪失届を出しているかどうかに関わらず、退職日の翌日をもって会社の健康保険の資格は法律上終了しており、保険料が本人に請求されることはありません。
「届いた請求書はご自身で切り替えられた新しい保険のものです」と説明しましょう。
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転職先がすでに決まっている場合も、退職に伴う社会保険の手続きは必要ですか?
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退職者のその後に関わらず、会社側は退職に伴う社会保険・雇用保険の資格喪失手続き(それぞれ5日以内・10日以内)を通常どおり行う必要があります。
7.全体像を把握して焦らずに対応しよう
ここまで、従業員の退職に伴う社会保険や雇用保険の手続きについて詳しく解説してきました。「5日以内」「10日以内」といった法定期限や、聞き慣れない届出の名称に、初めは戸惑うかもしれません。
しかし、退職手続きは「必要書類」「提出先」「提出期限」を整理しておけば、特別な専門知識がなくてもスムーズに進められます。まずは今回紹介した手順をもとにチェックリストを作成し、実務に活用してみてください。
全体の流れを把握し、期限や必要書類を一つずつ確認しながら進めることで、漏れやミスを防ぎ、正確に退職手続きを完了できるでしょう。