企業の経理・人事・労務担当者の皆様、契約書や領収書を発行する際の収入印紙について、「このケースはいくらの印紙が必要?」「金額を間違えて、後から過怠税を課されたらどうしよう」といった不安を感じていませんか。
収入印紙は全部で31種類もあり、文書の種類や契約金額によって貼付すべき金額が細かく定められています。もし貼り忘れると、本来の印紙税額の3倍もの過怠税が課される可能性があり、企業のコンプライアンス上、極めて重要な業務です 。
この記事では、経理・人事の実務ですぐに役立つよう、収入印紙の種類一覧から、領収書・契約書別の選び方、正しい貼り方、そして電子契約などを活用した印紙税のコスト削減テクニックまで、専門知識を分かりやすく解説します。
- 適切な収入印紙を迷わず選択できるようになる
- 印紙税のペナルティを回避する方法を理解し、税務リスクを未然に防げる
- 電子契約やキャッシュレス決済を活用した節約術を習得できる
1.収入印紙とは?基本的な仕組みを理解しよう

収入印紙について正しく理解するため、まずは基本的な仕組みから確認していきましょう。
収入印紙は国に納税するための証票
収入印紙とは、印紙税法に基づいて国が発行する証票のことです。契約書や領収書などの特定の文書に貼り付けることで、印紙税を納めたことを証明します。収入印紙を正しく貼付することで、法律に定められた納税義務を果たすことができるのです。
印紙税が課される書類の内容については、後述の「収入印紙が必要な「課税文書」とは何か」の項目で詳しく解説します。
印紙税とは
文書の作成者が負担する税金で、経済取引に伴って作成される文書に課税されます。
収入印紙・収入証紙・切手の違いは?
収入印紙とよく混同されるものに「収入証紙」と「切手」がありますが、これらは全く異なるものです。
収入印紙 | 国税である印紙税を納めるために使用 |
収入証紙 | 都道府県の手数料を納めるために使用 |
郵便切手 | 郵便料金の支払いが目的 |
それぞれ使用目的と発行者が異なるため、間違えないよう注意が必要です。
収入印紙が必要な「課税文書」とは何か
収入印紙を貼る必要がある「課税文書」は、文書の名称ではなく記載内容によって判断されます。たとえば「覚書」や「合意書」という名称でも、実際に企業間の契約内容が記載されていれば課税文書に該当します。
例えば、ビジネスシーンで頻繁に作成される以下の文書は、代表的な課税文書です。
- 不動産売買契約書、金銭消費貸借契約書(第1号文書)
- 工事請負契約書(第2号文書)
- 約束手形、為替手形(第3号文書)
- 定款(第6号文書)
- 売買取引基本契約書、業務委託契約書(第7号文書) * 金銭又は有価証券の受取書、領収書(第17号文書)
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契約書の適切な管理と運用は企業経営の基盤です。以下の記事では、労働条件通知書の正しい作成方法と法改正への対応方法について詳しく解説します。
2.収入印紙の種類は全31種類!金額一覧表で確認

収入印紙の種類と金額について、具体的な一覧表とともに詳しく見ていきましょう。
1円から10万円まで31種類の完全リスト
収入印紙の額面は、1円から10万円まで全31種類が発行されています。具体的な金額は以下の通りです。
1円台 | 1円、2円、5円 |
10円台 | 10円、20円、30円、40円、50円、60円、80円 |
100円台 | 100円、120円、200円、300円、400円、500円、600円 |
1,000円台 | 1,000円、2,000円、3,000円、4,000円、5,000円、6,000円、8,000円 |
10,000円台 | 10,000円、20,000円、30,000円、40,000円、50,000円、60,000円 |
100,000円台 | 100,000円 |
これらを組み合わせることで、必要な印紙税額を過不足なく納めることができます。
よく使われる収入印紙の種類トップ5
よく使用される収入印紙の種類を把握しておくと、必要なストック数を検討する際の参考になります。以下でみていきましょう。
■1位 200円
5万円以上100万円以下の領収書に必要なため日常的な商取引で頻繁に使用
■2位 400円
100万円超200万円以下の領収書で使用
■3位 1,000円
300万円超500万円以下の領収書や50万円超100万円以下の契約書で使用
■4位 2,000円
500万円超1,000万円以下の領収書や100万円超500万円以下の契約書で使用
■5位 10,000円
3,000万円超5,000万円以下の領収書や500万円超1,000万円以下の契約書で使用
これらの収入印紙はコンビニでも購入できる場合があります。
偽造防止技術が施された新形式の収入印紙
現在の収入印紙は、特殊な用紙と印刷技術により複製が困難な仕様になりました。光の角度を変えると色が変化する特殊インクや、触ると凹凸を感じる加工など、視覚と触覚の両方で真偽を判別できる工夫がされています。
古い収入印紙と比べて偽造防止機能が大幅に向上しているため、購入時は新しい形式のものを選ぶよう注意しましょう。偽造印紙の使用は法的な問題となるため注意が必要です。

2018年に偽造が難しい新デザインの収入印紙に代わりましたが、旧デザインの収入印紙も引き続き使用できます。
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3.場面別!収入印紙の使い分け方法

文書の種類によって必要な収入印紙の金額は異なります。主要な場面での使い分け方法を確認しましょう。
領収書に貼る収入印紙の選び方
領収書に貼る収入印紙は、記載された受取金額によって決まります。
領収書の金額 | 必要な収入印紙 |
---|---|
5万円未満 | 非課税のため印紙不要 |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超200万円以下 | 400円 |
200万円超300万円以下 | 600円 |
300万円超500万円以下 | 1,000円 |
消費税が別記されている場合は税抜金額で判断します。受取金額の記載がない領収書には一律200円の印紙が必要です。
〇領収書に貼る収入印紙の選び方〇
領収書(印紙税法上の第17号文書)に貼る収入印紙は、記載された受取金額によって決まります。詳細なルールは国税庁の「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」で定められています 。
契約書に貼る収入印紙の選び方
契約書の収入印紙は、契約の内容と金額によって決まります。
■不動産売買契約書や金銭貸借契約書
→第1号文書に該当
- 1万円以上10万円以下は200円
- 10万円超50万円以下は400円
- 50万円超100万円以下は1,000円
■工事請負契約書
→第2号文書に該当
- 1万円以上100万円以下は200円
- 100万円超200万円以下は400円
■売買取引基本契約書や業務委託契約書
→第7号文書に該当
一律4,000円/ただし契約期間が3カ月以内かつ更新規定がない場合は非課税
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契約書作成時には、労働条件の記載内容も重要です。以下の記事では、運送業界における労働条件通知書の適切な作成方法について詳しく解説します。
【人事・労務担当者向け】雇用契約書に収入印紙は必要?
結論から言うと、雇用契約書(労働契約書)は非課税文書とされており、収入印紙を貼る必要はありません。
印紙税法では、継続的な取引の基本となる契約書(第7号文書)は課税対象ですが、雇用契約は「委任に関する契約書」に該当せず、また「請負」にもあたらないと解釈されているためです。
ただし、「業務委託契約書」など、名称や実態が請負契約とみなされる場合は課税対象(第7号文書または第2号文書)となる可能性があるため、契約内容を正確に把握することが重要です。
その他の書類で使う収入印紙
領収書や契約書は収入印紙が必要となる代表的な書類ですが、それ以外にも対象となる文書があります。
■約束手形や為替手形
→第3号文書
- 10万円未満200円
- 10万円以上100万円未満400円
- 100万円以上1,000円
■株式譲渡契約書、金銭消費貸借契約書の変更契約書
→第1号文書
- 1万円以上10万円以下200円
- 10万円超50万円以下400円
- 50万円超100万円以下1,000円
- 100万円超500万円以下2,000円
- 500万円超1,000万円以下10,000円
■定款
→第6号文書
4万円の印紙が必要だが、電子定款なら不要
■保険証券
→第5号文書として1契約につき200円
■信用状
→第13号文書
200円
文書の性質を正しく判断して適切な印紙を選択しましょう。
4.収入印紙はどこで買える?購入方法を解説
収入印紙の購入場所と、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
郵便局|全31種類を購入可能
郵便局は収入印紙を購入する最も確実な場所と言えるでしょう。全国どの郵便局でも基本的に31種類すべての収入印紙を取り扱っており、必要な種類を確実に購入できます。購入時は現金での支払いが基本で、まとめ買いも可能です。
営業時間内であればいつでも購入できるため、計画的な調達に適しています。

規模の小さな郵便局では一部の高額印紙の在庫がない場合もあるため、1万円以上の印紙が必要な場合は事前に電話で確認するとよいでしょう。
コンビニや役所|限られた種類が購入できる
コンビニエンスストアでは、最も使用頻度の高い200円の収入印紙を購入できることが多いです。セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートなどの大手チェーンでは基本的に取り扱っていますが、個人経営店や駅構内の小型店舗では販売していない場合もあるため注意が必要です。
法務局や市区町村役場でも収入印紙を購入でき、これらの施設では幅広い種類を取り扱っています。ただし、役所は平日のみの営業が一般的で、土日祝日は購入できないため注意が必要です。
収入印紙購入時の注意点
収入印紙を購入する際は、偽造品に注意してください。金券ショップでは額面より安く購入できる場合がありますが、偽造品のリスクや在庫が不安定といった問題があります。また、たばこ屋でも購入できますが、印紙売りさばき所の登録を受けた店舗に限られるため、事前に確認が必要です。
購入後は印紙が破損しないよう丁寧に保管し、使用時まで汚れや折れ曲がりがないよう注意しましょう。
5.収入印紙の正しい貼り方と割印の方法
収入印紙を正しく使用するための貼り方と割印の方法を詳しく解説します。
収入印紙を貼る位置と貼り方
収入印紙の貼り方に法的な規定はありませんが、一般的なルールがあります。文書に印紙貼付欄が設けられている場合はその位置に貼付しますが、貼付欄がない場合は、文書のタイトル近くの左上部分に貼るのが通例です。

また、印紙を貼る際は以下の点に注意してください。
- 確実に接着させ、剥がれないよう注意する
- 複数枚の印紙が必要な場合は並べて貼る
- 印紙が書類の文字にかからないよう配置する
- 上下正しい向きで張り付ける
割印の正しい押し方
収入印紙を貼付した後は、必ず割印(消印)を押す必要があります。割印は印紙と文書の両方にまたがるように押印し、印紙の使用済みであることを示します。

使用する印鑑は、契約書に押印したものと同じ印鑑が理想的ですが、認印やシャチハタでも法的には問題ありません。印影が印紙と文書の両方にかかっていることが重要で、どちらか一方のみの押印では割印として無効となります。

複数の当事者がいる場合は、それぞれが割印を押すことが一般的です。
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収入印紙の適切な処理は企業の法務管理の一環です。運送業界では労働関連の法規制も多く、就業規則の作成時にも法改正への対応が重要になります。
複数枚貼る場合の注意点
必要な印紙税額が高額で複数の印紙を組み合わせる場合は、特別な注意が必要です。各印紙に個別に割印を押す必要があり、すべての印紙が使用済みであることを明確にしなければなりません。印紙同士が重ならないよう適切な間隔で配置し、それぞれの印紙と文書にまたがるよう割印を押します。
印紙の配置は縦一列または横一列に並べるのが一般的で、読みやすさと美観を考慮して整然と貼り付けましょう
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6.収入印紙を貼り忘れた場合のペナルティ

収入印紙の貼り忘れには厳しいペナルティが課せられます。具体的にみていきましょう。
過怠税は本来の印紙税額の3倍
収入印紙を貼り忘れた場合、文書の作成者には過怠税が課せられます。このペナルティは受取人には及ばず、作成者のみが責任を負います。過怠税の金額は「本来貼付すべき印紙税額の3倍」とされており、たとえば1万円分の印紙を貼り忘れた場合、3万円の過怠税を負担しなければなりません。
税務調査で発覚した場合も同様のペナルティが適用されるため、文書作成時は必ず印紙の要否を確認してください。
自主申告すれば1.1倍に軽減される
収入印紙の貼り忘れに自分で気づいた場合、税務署に自主申告することで過怠税を軽減できます。自主申告した場合の過怠税は、本来の印紙税額の1.1倍です。1万円の印紙の貼り忘れを自主申告した場合、1万円×1.1倍=1万1,000円の過怠税となります。
自主申告は貼り忘れに気づいた時点で速やかに行うことが重要で、時間が経過するほど税務調査で発覚するリスクが高まります。申告手続きは最寄りの税務署で行え、必要書類も比較的簡単です。
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印紙税の適切な処理は企業のコンプライアンス強化の一環です。法務・税務リスクを適切に管理できる人材の確保は企業成長の基盤となります。専門知識を持つ人材の採用でお困りの際は、ぜひカラフルエージェントへお気軽にご相談ください。
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間違って貼った場合の交換方法
必要以上の金額の印紙を貼ってしまった場合や、不要な文書に印紙を貼った場合は、税務署で交換ができます。交換には手数料として1枚につき200円が必要で、印紙の額面から手数料を差し引いた金額が還付されます。
交換には印紙を貼った原本と印鑑が必要で、印紙が汚損していないことが条件です。

ただし、既に割印を押した印紙は交換できないため、ご注意ください。
7.年間コストをゼロに?収入印紙代を節約する3つの戦略
3つの方法
収入印紙は1枚200円からと少額に見えますが、積み重なると大きなコストになります。例えば、毎月5万円以上の領収書を50件発行する企業の場合、年間でかかる印紙税は120,000円(50件 × 200円 × 12ヶ月)にも上ります。
ここでは、このコストを削減し、業務を効率化するための具体的な方法を3つ紹介します。
電子契約なら収入印紙は不要
最も効果的なのが電子契約への移行です。印紙税は物理的な「文書」に課される税金のため、電子データでやり取りされる契約書や領収書は課税対象外となります 。これにより、印紙税コストを完全にゼロにできるだけでなく、印刷・郵送・保管の手間とコストも削減できます。
大量の契約書を扱う企業では、年間数十万円から数百万円の印紙代削減効果が期待できるでしょう。電子契約サービスの利用料を考慮しても、トータルコストの削減につながるケースが多いようです。
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電子化による業務効率化は印紙税削減以外にも多くのメリットがあります。以下の記事では、運送業界の経費管理強い「燃料費精算システム」を紹介しています。システム導入を検討する際の参考にしてください。
キャッシュレス決済は印紙不要
以下のようなキャッシュレス決済による取引では、領収書に収入印紙を貼る必要がありません。
- クレジットカード決済
- 銀行振込
- 電子マネー
- QR決済
これは現金の授受が発生せず、印紙税法上の「金銭の受取書」に該当しないためです。ただし、領収書に「クレジットカード利用」等と明記しなくてならず、単に金額のみを記載した場合は印紙が必要です。
契約金額の調整で印紙税を下げる方法
契約金額を工夫することで、印紙税を軽減できる場合があります。
■具体例
〇契約金額が印紙税の区分境界に近い場合
→消費税を別途記載することで税抜金額での判定となり、印紙税額を下げられることがある
〇大きな契約を複数の小さな契約に分割する
→それぞれの印紙税額を軽減できる場合がある
ただし、実質的に一つの取引を人為的に分割することは税務上問題となる可能性があるため、実体に即した分割である必要があります。

契約条件の見直しにより印紙税の軽減を図る場合は、税務の専門家に相談することをおすすめします。
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企業が管理すべき税務は印紙税だけではありません。以下の記事では、社会保険料の管理から各種手続きまで、企業の税務管理について解説します。
8.企業における収入印紙の正しい取り扱い方
収入印紙は全31種類あり、文書の種類や金額に応じて適切に選択する必要があります。貼り忘れた場合には、本来の3倍にあたる過怠税が課されるため、十分に注意してください。人事担当者としては、法的リスクを回避するためにも、基本的な仕組みを理解し、正しいルールを押さえておきましょう。
さらに、電子契約やクレジット決済を活用すれば、印紙自体が不要となり、大幅なコスト削減につながります。印紙税を正しく理解することで、契約金額の設定や文書の取り扱い方に工夫を加え、税額を抑えることも可能です。法改正や税制改正に対応しつつ、管理の徹底を心がけましょう。
■効率的な業務運営で競争力を高めませんか
収入印紙の管理をはじめとする事務処理の効率化は、企業の競争力向上に直結します。業務改善に貢献する人材の採用をお考えの際は、ぜひカラフルエージェントにご相談ください。
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