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タイムカード改ざんは違法!7つの対処法と防止策について解説

タイムカードの改ざんは、どんなに信頼関係がある職場でも起こりうる問題です。従業員による残業代の水増しから、会社側による残業時間の隠ぺいまで、その手口は年々巧妙化しています。

しかし実際には、「改ざんを見つけても、どう対応すればよいのかわからない」「どこからが違法になるのか判断が難しい」と悩む人事担当者も少なくありません。対応を誤ると、労働紛争に発展したり、企業側が法的責任を問われたりするリスクもあるため、注意が必要です。

この記事では、タイムカード改ざんの法的位置づけから具体的な対処法、最新の防止策まで、人事担当者が知っておくべき知識を網羅的に解説します。

この記事を読んでわかること
  • タイムカード改ざんの具体的な罰則内容と、会社が負う法的責任の範囲について。
  • 改ざん発見時の証拠収集から懲戒処分まで、7つのステップに沿った適切な対応手順について。
  • 最新の勤怠管理システムや運用改善により、改ざんを根本的に防ぐ具体的な方法について。
目次
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1.タイムカード改ざんの基本知識

タイムカード改ざんの基本知識

人事・総務担当者として、タイムカードの改ざん問題は避けて通れない重要なリスク管理項目です。ここでは改ざんの定義や発生する背景など、基本的な知識を確認していきましょう。

タイムカード改ざんとは?

タイムカード改ざんとは、実際の出勤・退勤時刻とは異なる時刻を記録する行為を指します。具体的には、次のような手口がよく見られます。

  • 手書きタイムカードの時刻を書き換える
  • 他の従業員に代理で打刻してもらう
  • 電子タイムカードのデータを不正に変更するなど

改ざんは、従業員が残業代を多く受け取ろうとする場合や、遅刻を隠そうとする場合に発生することが多く、逆に会社側が残業代の支払いを避けるために行うケースもあります。どちらの場合であっても、正確な労働時間の記録を妨げる重大な行為として法的に問題視されています。

なぜタイムカード改ざんが問題なのか

タイムカード改ざんが深刻な問題とされる理由は、労働時間の正確な把握が賃金計算の基礎となるためです。

改ざんによって不正確な労働時間が記録されると、適正な賃金の支払いができなくなり、労使間の信頼関係が著しく損なわれます。また、改ざんが常態化すると、労働者の健康管理や安全配慮にも支障をきたし、過労死などの重大な事故につながるリスクも高まるでしょう。

企業としては、コンプライアンス体制の根幹に関わる問題として認識する必要があります。

Warning

労働基準法では、使用者に対して労働時間を適切に把握する義務を課しており、この義務を果たせない状況(タイムカード改ざんの常態化)は法的責任を問われる可能性があります。

2.従業員による改ざんで適用される法律と罰則

従業員による改ざんで適用される法律と罰則

従業員がタイムカードを改ざんした場合、複数の刑事罰が適用される可能性があります。人事担当者として適切な対応をとるために、具体的な法律と罰則内容を把握しておきましょう。

詐欺罪(刑法第246条)

従業員による最も典型的な改ざんパターンとして、実際には働いていない時間の残業代を不正に取得する行為があります。これは刑法第246条の詐欺罪に該当し、10年以下の懲役という重い刑罰が科される可能性があります。

以下の条件を満たした場合、詐欺罪が成立します。

  1. 従業員が虚偽の労働時間を申告
  2. 会社がそれを信じて賃金を支払う
  3. その結果、実際に財産的損害が発生
Warning

実際に残業代を受け取らなくても、不正な申告をした時点で詐欺未遂罪が成立する可能性もあります。

人事担当者は、このような重大な犯罪行為であることを従業員に周知し、予防に努める必要があります。

私文書偽造罪・電磁的記録不正作出罪

タイムカードは法的に重要な意味を持つ私文書として扱われるため、これを偽造・変造する行為は私文書偽造罪や私文書変造罪に該当します。なお、手書きのタイムカードと電子タイムカードでは、適用される罪の種類が異なります。

手書きのタイムカード【私文書偽造・変造罪】
3ヶ月以上5年以下の懲役刑が科せられる。
電子タイムカード【電磁的記録不正作出罪】
システムのデータを不正に操作した場合は、罪に問われる可能性がある。

これらの犯罪は、実際に経済的な損害が発生しなくても、改ざん行為そのものが処罰対象となるため注意しましょう。

従業員に対する教育では、改ざん行為自体が犯罪であることを強調することが重要です。

器物損壊罪の可能性

タイムレコーダーや勤怠管理システムは会社の重要な備品であり、これらを故意に破損させたり、正常に機能しないよう妨害したりする行為は器物損壊罪に該当する可能性があります。3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料が科せられます。

具体的には、以下のような行為が該当します。

  • タイムレコーダーの時計を意図的に狂わせる
  • 機械に異物を入れて故障させる
  • システムにウイルスを送り込んで動作を妨害するなど

近年は巧妙な手口で勤怠システムを妨害するケースも報告されており、人事担当者は物理的なセキュリティ対策だけでなく、システムのセキュリティ強化も検討する必要があります。また、これらの行為は刑事罰だけでなく、会社に対する損害賠償責任も発生するため、就業規則での規定も重要です。

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3.会社による改ざんで適用される法律と罰則

会社による改ざんで適用される法律と罰則

会社側がタイムカードを改ざんする行為は、従業員以上に重大な法的責任を問われます。人事担当者は会社を守るため、これらのリスクを正確に把握し、適切な対策を講じる必要があります。

労働基準法違反(残業代未払い)

会社によるタイムカード改ざんの最も深刻な問題は、労働基準法に基づく残業代の未払いです。労働基準法第37条では割増賃金の支払いが義務付けられており、これに違反すると第119条により6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

さらに深刻なのは、労働基準法第114条に基づく付加金の支払い義務です。これは未払い残業代と同額の金銭を追加で支払わなければならない制度で、実質的に未払い分の2倍の支払いが必要となります。また、未払い賃金には年14.6%の遅延損害金も発生するため、改ざんが発覚した場合の経済的損失は非常に大きくなります。

Warning

労働基準監督署による監査で改ざんが発覚すれば、会社の信用失墜も避けられません。

私文書変造罪・電磁的記録不正作出罪

会社がタイムカードを改ざんする行為は、刑法上の私文書変造罪や電磁的記録不正作出罪に該当する可能性があります。タイムカードは労働時間を証明する重要な私文書であり、これを意図的に変更する行為は刑法第159条の私文書変造罪(5年以下の懲役)に問われる可能性があります。

特に、労働基準監督署への提出書類として改ざんされたタイムカードを使用した場合、行使罪も成立する恐れがあります。電子化された勤怠システムのデータを操作した場合は、電磁的記録不正作出罪の適用も考えられます。

これらの犯罪は会社の代表者や管理責任者個人が処罰対象となるため、組織ぐるみの改ざんは経営陣にとって極めて危険な行為といえます。法人としても社会的信用の失墜や取引先との関係悪化など、長期的な損失は計り知れません。

安全配慮義務違反のリスク

労働契約法第5条は、使用者に対して労働者の安全と健康を確保する義務を課しています。タイムカードの改ざんによって実際の労働時間が把握できない状況は、この安全配慮義務に違反する可能性があります。

特に長時間労働による健康被害や過労死が発生した場合、改ざんによって適切な労働時間管理ができていなかったことが安全配慮義務違反の根拠とされる危険性があります。この場合、労働災害として認定されれば、会社は損害賠償責任を負うことになります。

人事担当者は、改ざんが単なる賃金問題にとどまらず、従業員の生命と健康に関わる重大な問題であることを認識し、予防策の徹底を図る必要があります。

近年、働き方改革の推進により労働時間管理の重要性が高まっており、厚生労働省のガイドラインでも客観的な労働時間把握が求められています。

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4.タイムカード改ざんでよくある事例パターン

タイムカード改ざんでよくある事例パターン

実際の職場で発生しやすい改ざんパターンを知ることで、早期発見と適切な対策につなげることができます。従業員側と会社側それぞれの典型的な事例をみていきましょう。

従業員による残業時間の水増し

従業員による改ざんで最も多いのが、残業代を多く受け取るための労働時間の水増しです。具体的な手口は以下の通りです。

  • 退勤時にタイムカードを打刻せずに帰宅し、翌日に手書きで実際より遅い時刻を記入する
  • 休憩時間中にも働いていたように装って労働時間を延長する
  • 実際には早く終わった業務を遅くまで行っていたように偽装する

電子タイムカードの場合でも、他人のIDカードを借用して不正打刻を行ったり、システムの脆弱性を悪用してデータを操作したりする事例が報告されています。人事担当者は、残業申請と実際の打刻時間に大きな乖離がある従業員や、毎日決まって同じ時間に退勤している従業員に注意を払う必要があります。

代理打刻による遅刻隠し

遅刻や早退を隠すための代理打刻も頻繁に発生する問題です。朝の通勤ラッシュで遅刻しそうになった従業員が、同僚に依頼して始業時刻に打刻してもらうケースが典型例です。また、病院通院や私用で早退する際に、同僚に退勤時刻まで打刻を待ってもらう事例もあります。

このような代理打刻は一見軽微に思えますが、労働時間の正確な把握を阻害し、給与計算の根拠を揺るがす重大な問題です。特に、代理打刻が職場で常態化している場合、組織全体のコンプライアンス意識の低下を招く危険性があるのです。

Warning

ICカードや生体認証システムを導入していても、パスワードの共有や他人への貸与によって代理打刻が可能になってしまうため、システム面での対策と併せて従業員教育も徹底してください。

会社による残業時間の削減・隠ぺい

会社側による改ざんで最も深刻なのが、残業代の支払いを回避するための労働時間の削減や隠ぺいです。具体的な事例をみていきましょう。

  • タイムカードから給与計算システムへの転記時に残業時間を意図的に減らす
  • 定時退勤を強制的に打刻させた後に業務を継続させる
  • 残業申請をしないよう圧力をかけ、実際の労働時間とタイムカードに意図的な乖離を生じさせる

さらに悪質な場合、労働基準監督署の調査に備えて、事前にタイムカードを改ざんして提出する企業も存在します。これらの行為は労働基準法違反だけでなく、従業員の健康と安全を脅かす重大な問題であり、発覚すれば企業の社会的信用を大きく損なう結果となります。

5.改ざんを発見した時の対処法7つのステップ

改ざんを発見した時の対処法7つのステップ

タイムカード改ざんを発見した際は、感情的にならず冷静かつ組織的な対応が求められます。適切な手順を踏まなければ、後に法的トラブルに発展する可能性もあるため、以下の7つのステップを確実に実行しましょう。

STEP1. 証拠の収集と事実確認

改ざんの疑いが生じた場合、まず最優先で行うべきは確実な証拠の収集です。以下のような改ざんの事実を裏付ける資料を、漏れなく保全してください。

  • タイムカードの原本
  • 電子データのログ
  • 監視カメラの映像
  • 同僚の証言など

電子データの場合は、改ざんされる前にバックアップを取得し、システム管理者と連携してアクセスログを確認することが重要です。

また、改ざんが疑われる期間だけでなく、過去の勤怠記録も併せて調査し、常習性の有無を確認します。証拠収集の際は、プライバシーに配慮しつつ、法的に有効な証拠として使用できるよう適切な手続きを踏むことが必要です。

POINT

疑いの段階で当事者に知らせると証拠隠滅の恐れがあるため、内密に調査を進めてください。

STEP2. 従業員への事情聴取の実施

十分な証拠が集まった段階で、当事者である従業員への事情聴取を実施します。事情聴取は必ず複数の管理者立会いのもとで行い、録音や議事録の作成により内容を正確に記録します。質問は感情的にならず、事実関係の確認に徹しましょう。

従業員には改ざんの具体的な事実を示し、弁明の機会を十分に与えます。この際、従業員が改ざんを認めた場合でも、その動機や背景事情についても詳しく聞き取りを行ってください。

職場環境や業務負荷、上司からの指示など、会社側に問題がなかったかも併せて確認することで、再発防止策の検討材料とします。

事情聴取の結果は書面にまとめ、従業員に内容を確認してもらった上で署名を求めることで、後のトラブルを防ぐことができます。

STEP3. 過払い賃金の返還請求

従業員による改ざんで不正に支払われた賃金がある場合は、適切な手続きを経て返還を請求します。ただし、一方的な給与天引きは労働基準法第24条に違反するため、必ず従業員との合意に基づいて返還方法を決定します。返還額の計算は正確に行い、改ざんされた時間分の基本給、残業代、各種手当を含めて算出します。

返還方法については、一括返還が困難な場合は分割払いも検討し、従業員の生活に配慮した現実的な計画を立てます。返還合意書は書面で作成し、返還額、返還方法、返還期限を明記して双方が署名します。なお、返還請求権には時効があるため、過去の不正については法的な制限を考慮して対応してください。

STEP4. 就業規則に基づく懲戒処分の検討

改ざんの事実が確認できた従業員に、就業規則に基づいた適切な懲戒処分を検討します。処分内容は改ざんの悪質性、常習性、会社への損害額、従業員の反省の程度などを総合的に判断して決定しましょう。処分決定後は処分通知書を交付し、人事記録に適切に記載します。

軽微な事案であれば戒告や減給、悪質な場合は降格や懲戒解雇も考えられますが、処分は就業規則の規定内容と過去の処分例との均衡を考慮して決定することが重要です。懲戒処分を行う際は、従業員に対して処分理由を明確に説明し、弁明の機会を設けることが労働契約法上求められています。

Warning

処分が重すぎる場合は権利濫用として無効とされる可能性があるため、弁護士等の専門家に相談することも検討するとよいでしょう。

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STEP5. 労働基準監督署への相談

改ざん事案の対応に迷いが生じた場合や、法的な判断が必要な場合は、労働基準監督署への相談を検討します。特に、会社側による改ざんが疑われるケースや、従業員から労働基準監督署への申告があった場合は、早期に相談することで適切な対応方針を確認できます。

相談時には、改ざんの具体的な内容、これまでの対応状況、就業規則の該当条項などの資料を整理して持参しましょう。

労働基準監督署で受けられるサービス

労働基準監督署では、法的な解釈や適切な処分のあり方についてアドバイスを受けることができ、今後の対応方針を固める上で貴重な情報が得られます。

また、同様の事案での他社事例や最新の法改正情報なども入手できるため、人事担当者のスキルアップにもつながるでしょう。

STEP6. 弁護士への相談と法的対応

改ざん事案が複雑で法的リスクが高い場合は、労働法に詳しい弁護士への相談を強く推奨します。特に、以下のような場合は、専門家による的確な法的判断が求められます。

  • 高額な損害が発生している場合
  • 従業員が改ざんを否認している場合
  • 労働組合が関与している場合など

弁護士相談では、証拠の法的有効性、懲戒処分の妥当性、損害賠償請求の可能性、刑事告発の要否などについて具体的なアドバイスを受けることができます。また、従業員側から不当解雇等の訴訟を提起された場合の対応策についても事前に検討しておくことで、リスクを最小限に抑えることができます。

弁護士費用は発生しますが、適切な初期対応により大きなトラブルを回避できることを考えれば、必要な投資といえるでしょう。

STEP7. 再発防止策の策定と実施

改ざん事案の処理が完了した後は、同様の問題の再発を防ぐための抜本的な対策を講じることが重要です。

  1. 原因分析
    改ざんが起きた原因分析を徹底的に行い、システム面、運用面、人的面での問題点を明確にします。

  2. システムの見直し
    勤怠管理システムの見直し、管理体制の強化、従業員教育の充実など、多角的な再発防止策を策定します。

  3. 就業規則の見直しと従業員への周知
    改ざん行為が重大な違法行為であることを明記し、具体的な処分内容を規定することで抑止効果を高めます。

また、定期的な内部監査制度を構築し、早期発見体制を整備することも効果的です。再発防止策は一度策定して終わりではなく、定期的に見直しを行い、新たな改ざん手口に対応できるよう継続的に改善していくことが求められます。

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6.懲戒処分を行う際の注意点と限界

懲戒処分を行う際の注意点と限界

タイムカード改ざんに対する懲戒処分は慎重に行う必要があります。不適切な処分は労働紛争を招く恐れがあるため、法的要件と実務上の注意点を正確に理解しておきましょう。

適正な懲戒処分の要件

懲戒処分が有効に成立するためには、労働契約法第15条に定められた要件を満たす必要があります。以下でみていきましょう。

  1. 就業規則に懲戒事由と懲戒処分の種類が明確に規定されている
    タイムカード改ざんについても、具体的にどのような行為が懲戒対象となるかを明記し、従業員に周知しておくことが重要です。

  2. 処分内容が社会通念上相当である
    改ざんの悪質性、損害額、過去の処分例との均衡、従業員の反省の程度などを総合的に判断し、過重な処分とならないよう注意します。

  3. 適正手続きの保障
    事前の事情聴取、弁明の機会の付与、処分理由の明示などを確実に行い、従業員の防御権を保障することで、後の争いを防ぐことができます。

懲戒解雇する際の注意点

懲戒解雇は最も重い処分であるため、実施には特に慎重な検討が必要です。タイムカード改ざんを理由とする懲戒解雇が有効とされるためには、改ざんの悪質性が極めて高く、会社に重大な損害を与えたことが客観的に認められる必要があります。

単発的な改ざんや軽微な損害の場合は、懲戒解雇が無効とされる可能性が高いため、まずは戒告や減給などの軽い処分から段階的に対応するとよいでしょう。

POINT

解雇を検討する場合は、事前に弁護士に相談し、法的リスクを十分に検討した上で慎重に判断することが重要です。

会社側に問題がある場合の対応

タイムカード改ざんの背景に会社側の管理体制の不備がある場合、従業員への懲戒処分には大きな制約が生じます。

■例えば…

  • タイムカード管理が杜撰で改ざんが容易な状況を放置していた場合
  • 適切な勤怠管理システムを導入せず手書きによる記録に依存していた場合
  • 長時間労働の常態化により従業員が改ざんに走らざるを得ない状況を作り出していた場合など

このような状況では、従業員の責任を追及する前に、まず会社側の管理体制を抜本的に見直すことが求められます。従業員への処分についても、会社側の問題を考慮してより軽い処分とするか、場合によっては処分を見送ることも検討する必要があります。

重要なのは、従業員の処分と並行して会社側の問題解決に真摯に取り組む姿勢を示すことで、労使関係の悪化を防ぎ、再発防止につなげることです。

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7.タイムカード改ざん防止対策

タイムカード改ざん防止対策

改ざんを根本的に防ぐためには、技術的対策と運用面での工夫を組み合わせた包括的なアプローチが必要です。ここでは具体的で実効性の高い防止策を確認していきましょう。

物理的な管理体制の強化

従来のタイムカード管理では、物理的なセキュリティ対策が改ざん防止の基本となります。以下で抑えるべきポイントを見ていきましょう。

  • タイムカード・レコーダーの保管場所
    タイムカードは施錠可能なキャビネットや金庫で保管し、アクセスできる人員を管理職など限定的なメンバーに制限します。
    また、タイムレコーダーは多くの従業員の目が届く場所に配置することで、代理打刻などの不正行為を抑制できます。

  • 防犯カメラの設置
    打刻の様子を録画することで、後から不正の有無を確認できる体制を整えます。また、防犯カメラを設置していることを周知することで、タイムカード改ざんの抑制にもつながります。

  • 手書き部分の記入ルール
    消せないボールペンの使用を義務付け、修正液や修正テープの使用を禁止してください。

上記の対策に加え、タイムカードの印字時刻と手書き部分に大きな乖離がある場合は、必ず管理者の確認と承認を求める仕組みを構築することで、改ざんの早期発見が可能になります。

勤怠管理システムの導入

電子的な勤怠管理システムの導入は、改ざん防止に非常に効果的です。ICカードや生体認証を活用したシステムでは、本人以外の打刻が技術的に困難になり、代理打刻のリスクを大幅に軽減できます。特に指紋認証や静脈認証などの生体認証システムは、偽装が極めて困難で高い防止効果を発揮します。

また、クラウド型の勤怠管理システムでは、打刻データがリアルタイムでサーバーに送信され、後からの改ざんが技術的に不可能になります。システム選択の際は、操作ログの記録機能、異常値の自動検知機能、複数承認機能などを備えたものを選ぶことで、更なるセキュリティ強化が図れるでしょう。

POINT

導入コストはかかりますが、改ざんによるリスクと人的管理コストを考慮すれば、長期的には投資効果の高い対策といえるでしょう。

従業員教育と就業規則の整備

従業員の意識改革と規則の整備も重要です。まず、就業規則にタイムカード改ざんに関する具体的な禁止事項と懲戒処分の内容を明記し、全従業員に周知徹底します。新入社員研修や定期的な労務研修では、改ざんが詐欺罪等の犯罪行為に該当することを説明し、法的リスクの重大性を認識してもらいましょう。

また、残業代の正当な請求方法や有給休暇の取得方法など、適切な労働時間管理について教育することで、改ざんに頼らない健全な労働環境を作り出します。管理職に対しては、部下の勤怠管理の責任と適切な指導方法について研修を実施し、現場レベルでの予防体制を強化しましょう。

さらに、内部通報制度を整備して改ざんの早期発見を促すとともに、通報者の保護を徹底することで、組織全体でのチェック機能を高めることができます。

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定期的な監査体制の構築

改ざん防止には継続的な監視と検証が不可欠です。人事部門では、以下のような項目をチェックすることで、タイムカード改ざんの早期に発見につながります。

【勤怠データの異常値チェック】

  • 残業時間の急激な増減
  • 毎日同じ時刻の退勤記録
  • 打刻漏れの頻発など

【給与計算時】
前月との比較や同部署内での比較を行い、異常な残業代の支給がないかをチェック

【抜き打ちチェック】
タイムカードと業務内容の照合をし、不自然な記録がないかを確認

■年次ごと

【内部監査部門がある場合】
年次で勤怠管理業務全体の監査を実施し、制度の運用状況と改善点を評価する

これらの監査結果は経営陣に報告し、必要に応じて制度の見直しや追加対策の検討を行います。監査の実施状況を従業員に適切に伝えることで、改ざんに対する抑止効果も期待できます。

8.最新の勤怠管理システムとは?

最新の勤怠管理システムとは?

技術の進歩により、従来では困難だった高精度な勤怠管理が可能になっています。最新システムの機能と導入メリットを理解し、自社に最適なソリューションを選択しましょう。

ICカード・生体認証システム

■ICカードを活用した勤怠管理システム
従業員ごとに固有のカードを発行し、専用リーダーで打刻を行う仕組み
暗号化された個人情報が記録されており、偽造が困難で代理打刻のリスクを大幅に軽減

さらに進歩した生体認証システムでは、指紋、静脈パターン、顔認証、虹彩認証などの生体情報を活用し、本人以外の打刻を技術的に不可能にします。特に静脈認証は、指紋が薄い方や手荒れのある方でも安定した認証が可能で、製造業や医療現場でも導入が進んでいます。

顔認証システムは非接触で衛生的な打刻が可能で、感染症対策の観点からも注目されています。これらのシステムでは打刻時刻がリアルタイムでデータベースに記録され、後からの改ざんが技術的に不可能になるため、極めて高い信頼性を確保できるでしょう。

POINT

導入コストは従来のタイムカードより高額ですが、改ざんリスクの排除と管理業務の効率化を考慮すれば十分な投資効果が期待できます。

クラウド型勤怠管理

■クラウド型勤怠管理システム
インターネット経由でサービスを利用する仕組み
初期投資を大幅に抑えながら高機能なシステムを導入できる

クラウド型勤怠管理システムは、サーバーの購入や保守が不要で、月額利用料金のみでサービスをすぐに開始できる点が特徴です。また、スマートフォンやタブレットからの打刻に対応しており、テレワークや外勤が多い職場でも柔軟な勤怠管理が可能です。

さらに、GPS機能を活用した位置情報の記録により、適切な場所からの打刻であることを確認でき、不正打刻の防止にも効果を発揮します。データはクラウド上で自動的にバックアップされ、災害時でも勤怠情報が失われる心配がありません。

POINT

給与計算システムや人事システムとの連携機能により、勤怠データから給与計算まで一連の業務を自動化でき、人的ミスの削減と業務効率の向上が実現できます。

コスト効率的なシステム選択のポイント

勤怠管理システムの選択では、機能性と経済性のバランスを考慮した判断が重要です。以下でみていきましょう。

  • 小規模企業→基本的な打刻機能で十部な場合が多い
  • 複数拠点を持つ企業→リアルタイム集計機能があるシステムが便利
  • 変則勤務が多い企業→複雑なシフト管理機能が必要

自社の従業員数、事業形態、勤務パターンを正確に把握し、必要な機能を明確にします。

  • 導入費用
  • 月額利用料
  • 保守費用
  • カスタマイズ費用など

また、既存の給与計算システムや人事システムとの連携可能性を確認し、データ移行コストや運用コストも考慮に入れてください。

  • ベンダーのサポート体制
  • システムの安定性
  • セキュリティレベルなど

また、無料トライアル期間を活用して実際の操作性を確認し、従業員の習得難易度も評価しましょう。長期的な視点で自社の成長に対応できる拡張性を持ったシステムを選ぶことで、将来的なシステム変更コストを抑制できます。

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9.タイムカード改ざんを許さない組織づくり

タイムカードの改ざんは単なる社内ルール違反ではなく、刑法や労働基準法に抵触する重大な違法行為です。従業員による改ざんは詐欺罪や文書偽造罪に、会社による改ざんは労働基準法違反や安全配慮義務違反に該当し、深刻な法的責任を伴います。

人事担当者は、タイムカード改ざんのリスクを正しく理解し、日頃から勤怠データの確認やシステム設定を見直すことが大切です。あわせて、従業員へのルール周知や教育を行いましょう。

本記事を参考に、改ざんのない、透明性の高い勤怠管理体制を整え、労使の信頼関係を守り、健全な職場づくりを目指してください。

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