タクシー業界は深刻な人手不足と高齢化に直面しており、持続可能な運営のために新たなドライバーの採用が急務となっています。
しかし、タクシードライバーの採用は一朝一夕でできるものではなく、採用に向けてしっかりとした準備が求められます。
本記事では、タクシードライバーの採用を取り巻く現状と課題に触れつつ、効果的な採用戦略について解説します。
- タクシードライバーの採用難の背景と課題
- タクシードライバー採用成功のための求人作成のポイント
- タクシードライバーの採用に成功した企業の取り組み事例
1.タクシードライバー採用の現状
タクシードライバー業界は、近年、ますます厳しい採用環境に直面しています。
このような状況下で、業界が抱える課題を明確にし、持続可能な運営に向けた対策を検討することが重要です。
深刻化する人手不足と高齢化
タクシードライバー業界は、深刻な人手不足に加え、高齢化が急速に進行しています。
2023年の賃金構造基本統計調査によると、タクシードライバーの平均年齢は男性で60.4歳に達しており、業界全体で高齢化が顕著です。
この高齢化が進行する中で、新たなドライバーを採用しない限り、業務の維持が難しくなることが懸念されます。
さらに、高齢ドライバーの増加は、交通事故リスクの増加や健康問題に起因する業務効率の低下を招く可能性があり、業界全体の健全な発展を妨げる要因となっています。
2.タクシードライバー採用の課題
タクシードライバーの採用が難しい理由はいったい何にあるのでしょうか?
ここでは、タクシードライバーの採用が難しい理由について、いくつか事例をあげてご紹介していきます。
若い世代のタクシードライバーへの関心が低い
高齢化が進む中、若い世代のドライバーを採用することが、タクシー業界の発展に不可欠です。
しかし、若者のタクシー業界への関心は低いのが現状です。そのため、若手の積極的な採用を促進するためには、業界全体で待遇改善や働きやすい環境の整備が求められています。
加えて、柔軟な労働条件の導入やキャリアアップの機会を提供することも、若い世代を惹きつける重要な要素です。
さらには、デジタル技術を活用したサービス向上や効率化も、若手ドライバーにとって魅力的なポイントとなります。
有効求人倍率が高く、他社募集との差別化が難しい
タクシー業界では、有効求人倍率が高く、採用難易度が非常に高い状況が続いています。
その背景には、タクシーの運転において二種免許が必須であることが挙げられます。二種免許の取得には時間と費用がかかるため、応募者の数が限られており、多くの企業が採用に苦労しています。
また、タクシー業界内での求人情報がほぼ一律であるため、他の企業との差別化が難しく、優秀な人材を確保するための工夫が必要です。
結果として、業界全体で母集団形成が難しいという課題が浮き彫りになっています。
タクシードライバーのマイナスイメージが強い
タクシードライバーに対するマイナスイメージが強いことも、採用における大きな障害となっています。
「きつい」「低収入」「トラブルが多い」「女性には不向き」といった固定観念が根強く、特に若年層や女性の応募が少ない原因となっています。
こうしたイメージを払拭し、タクシー業界の魅力を伝えるためには、労働環境の改善や収入面での安定を訴求するだけでなく、実際に働いているドライバーの声を発信するなどの広報活動が重要です。
3.タクシードライバーへ転職した方の声
ここでは、タクシードライバーへの転職を考える主な理由を取り上げてご紹介していきます。
タクシードライバーの転職理由で多い声とは?
タクシードライバーへの転職理由としてよく挙げられるのは、まず自分の時間を自由に作れる点です。シフト制が一般的であり、自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能です。
また、職探しが比較的容易だったという声も多く聞かれます。
さらに、自分の努力次第で高収入が得られることや、年齢に関係なく長く働けることも、転職を決断する大きな要因となっています。
加えて、タクシー業界では、未経験者でも研修やサポート体制が充実しているため、安心してスタートできる点が魅力です。
実際にタクシー各社の待遇はどうなっている?(給与、休日、残業時間など)
タクシードライバーの待遇は、給与や労働時間、休日の面で他の職種と比較すると特徴があります。
2023年の年間推計給与は約4,189,900円で、月間労働時間は189時間に達します。これは全産業労働者の平均178時間よりも多めです。
また、2024年6月時点でのドライバーの平均残業時間は月24.7時間であり、全職種の平均13.4時間に比べて多いことが分かります。
さらに、2018年の就労条件総合調査によると、ドライバーの平均休日日数は年間100.3日で、全職種平均の107.9日を下回る結果となっています。
労働時間や休日については、他の業界と比較すると見劣りするかもしれませんが、タクシードライバーの魅力は給与に歩合制を組み込んでいる会社が多いことです。
長時間労働の面もありますが、やればやるだけ稼ぐことができるのがタクシードライバーの特徴となります。
参考
タクシー運転者賃金・労働時間の現況│一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会
平成 30 年就労条件総合調査の概況│厚生労働省
勤労統計調査 令和6年6月分結果確報│厚生労働省
4.タクシードライバーの採用に失敗する理由と見直しポイント
採用ターゲットの明確化
まず挙げられるのが、採用ターゲットが明確でない場合です。ここが定まらないと、自社が求める適切な候補者にアプローチすることが難しくなります。
求人票の作り込み
また、求人票の内容が魅力的でなければ、求職者の関心を引きつけることができません。自社ならではの特徴や魅力を盛り込み、働くイメージが湧くように具体的に記載することが大事です。
採用ページの整備
さらに、企業情報を伝える採用ページの整備も重要なポイントです。採用ページがないと、求職者が会社のことを十分に理解できず、応募をためらう可能性があります。
そこからせっかく応募してもらったとしても、求職者とのやりとりが遅かったり、対応が雑だったり、面接時の対応が悪いと、信頼を損なうリスクが高まります。
そもそもの社内の働く環境の整備
また、社内の待遇が他社と比べて見劣りする場合、応募してくれた求職者の長期的な雇用を確保することが難しくなります。
これらの問題点を見直すことで、採用成功率を向上させることができるでしょう。
5.タクシードライバーの魅力的な求人作成のポイント
魅力的な求人を作成するためには、求職者が応募したくなるような内容を的確に伝えることが重要です。
ここからは求人を作成するうえで意識すると良いポイントについて解説します。
求職者目線で魅力的な労働条件をアピール
自社の魅力を整理し、ドライバー目線でアピールすることが求められます。
業界の魅力、会社の魅力、仕事内容のやりがい、給与の魅力を明確に伝えることが大切です。福利厚生、休日・休暇、勤務時間、職場の人間関係やオフィス設備の魅力も積極的に打ち出しましょう。
実際に働く社員へのアンケートを通じて、リアルな声を反映させるのも効果的です。
ただし、綺麗事だけを並べるのではなく、実際の社内環境と一致する内容を伝えることが重要です。入社後のギャップが生じると、ミスマッチによる即離職につながる可能性があります。
先輩ドライバーのリアルな声を届ける
採用したい人物像に近い現役ドライバーのリアルな声を紹介することも大切です。等身大の経験談を通じて共感を呼び、求職者に安心感を与えられます。
また、キャリアごとに異なる社員の声を取り上げることで、多様な視点からの情報提供が可能です。
未経験者の採用も検討しよう
最近では未経験者を対象にした採用が増加しており、二種免許の取得支援制度などを提供する企業も増えています。
例えば、1年間の給与保障制度を導入している企業もあり、こうした支援制度を積極的にPRすることで、未経験者の応募意欲を高めることができます。
6.採用基準の設定と人材の見極め方
タクシードライバーの採用においては、求職者のスキルや経験に加え、タクシー業務に適した性格や行動特性を持っているかを判断することが重要です。
採用条件のすりあわせを十分におこなう
採用プロセスの初期段階で、必須条件と歓迎条件を明確に提示することが大切です。
求職者に期待する最低限のスキルや資格、経験をはっきりと伝え、それに加えて、望ましい能力や性格を具体的に示します。
これにより、双方のミスマッチを防ぐことができます。
人物重視の面接をおこなう
人物重視の面接では、タクシー業務に必要な適性を多角的に評価します。
例えば、安全運転に対する意識の高さ、自己管理能力、コミュニケーション能力、そして健康面に不安がないかといった点を確認します。
また、会社の社風に合うか、自社の既存社員と似た特性を持っているかどうかも重要なチェックポイントです。
こうした人物面の見極めには、適性テストを活用し、客観的な基準を設けることも有効です。
7.【事例】ドライバー採用成功企業に学ぶ取り組み
タクシードライバーの採用成功は、多様な工夫と戦略によって実現されています。
以下に、各企業がどのようにして人材確保に成功したか、具体的な事例を紹介します。
事例①働き甲斐のある職場の実態をホームページで紹介
国際自動車株式会社は、人材確保のために、新卒採用、女性採用、中途採用に分けた専用サイトを設け、現場の実態を伝えるインタビューを掲載し、仕事内容を親しみやすく紹介しました。
特に女性ドライバーの活躍を強調し、女性客のニーズに応える職場であることをアピールしました。この結果多くの女性ドライバーが活躍しています。
参照元:人材確保に向けた取組事例集│国土交通省北陸信越運輸局
事例②新入社員の半数が社員の紹介制度で採用
長電タクシー株式会社では、社員紹介制度を活用して新入社員の採用を進めています。
社員が個人的なネットワークを通じて応募者を募り、採用が成功した場合には手当を支給しました。
この制度により、中途採用者の約半数が紹介によって採用された年もあり、安定した人材確保を実現しています。
参照元:人材確保に向けた取組事例集│国土交通省北陸信越運輸局
事例③1日4時間、週1回勤務も可能な勤務形態の導入
ホテルハイヤー株式会社では、子育て中の女性ドライバーが働きやすい勤務形態を導入しています。
フレックス制を採用し、パートやアルバイトでは1日3時間から、正社員では1日4時間から勤務が可能です。さらに、週1回の勤務も認められています。
給与は時給制で、女性ドライバーが家事や育児と仕事を両立しやすい環境を提供しています。この取り組みにより、多くの女性ドライバーが活躍中です。
参照元:人材確保に向けた取組事例集│国土交通省北陸信越運輸局
事例④「ママさんドライバー」の活躍に向けた保育所設置
株式会社ハートフルタクシーは、女性ドライバーが働きやすい環境を重視し、事業所内に保育所を設置しました。
この保育所は土日祝日も利用可能で、無料で生後6カ月から小学校入学前までの幼児を受け入れています。
さらに、フレックス制や時間給制を導入し、学童保育料も会社が負担しています。子どもの病気による欠勤時にもペナルティがなく、多くの女性ドライバーの中途採用に成功しました。
参照元:人材確保に向けた取組事例集│国土交通省北陸信越運輸局
事例⑤体験型説明会の開催
宝交通株式会社は、タクシードライバーの安定的な確保に向け、体験型説明会を実施しています。
自動車教習所でタクシー乗務体験や車両試乗、新人研修体験などを提供しています。この体験型説明会には、女性を含め多くの若者が参加し、そのうち若干名が入社しました。
タクシードライバーの仕事を実際に体験することで、仕事内容の理解を深め、採用につなげる効果的な取り組みとなっています。
参照元:人材確保に向けた取組事例集│国土交通省北陸信越運輸局
8.タクシー採用に強いサービス
タクシードライバーの採用は、一般的な求人活動とは異なり、専門的な知識やネットワークが求められます。
スムーズかつ効果的な採用を実現するためには、タクシー業界に特化した専門家に相談するのもひとつの手段です。
タクシーに特化した専門エージェントを活用|5サービスを紹介
ここでは、タクシードライバー採用に強い専門エージェントを紹介します。
カラフルエージェント ドライバー
カラフルエージェントは、即日でお近くのマッチした転職希望のドライバーをご紹介します。面接調整、条件交渉なども代行するため、簡単に採用活動ができます。
また、登録者の91%以上が各種ドライバー職に必要な資格を所持しており、即戦力となる求職者をすぐにご紹介可能です。
さらに、入社後も求職者へのアフターサポートを実施し、離職防止に努めてくれます。工数をかけずに、スムーズに求職者の方々から入社後のギャップを引き出すことができます。
プレックスジョブ
業界最大級の90万人以上が登録しているエージェントで、そのうち約90%が資格保有者です。
プレックスジョブの強みは、専任のキャリアアドバイザーによる高品質なマッチングサポートにあります。求人作成から採用後の定着フォローまで、専任担当者が手厚くサポートしてくれるのが特徴です。
また、企業の採用担当者は、登録者のプロフィールをもとにスカウトを送信し、必要な人材に直接アプローチすることが可能です。
基本的なサービスや求人掲載は無料で、費用は採用が成功した場合にのみ発生します。求人作成やアドバイスに加え、採用後のフォローまで、企業の採用プロセス全体を包括的にサポートする仕組みが整っています。
ドライバーキャリア
毎月100万人以上のユーザーが閲覧するドライバー特化型のエージェントです。
ヒアリングを通じて求人票を作成し、面接の調整までおこないます。費用は採用時にのみ発生し、採用後すぐの離職に対しては限定的な返金制度もあります。
タクシーハローワーク
タクシードライバーや運行管理者を全国から紹介するエージェントです。月間の平均申込者数は250~300人です。
事前面談を通じて条件に合った求職者を紹介するため、入社後の定着率が高くなっています。
費用は採用成功時にのみ発生し、採用後すぐの離職に対しては限定的な返金制度が適用されます。
プロタク
東京近郊のドライバー募集に特化したエージェントです。
タクシードライバー経験のあるアドバイザーが対応してくれます。また、入社後の売上アップや事故防止に関するコンサルティングサポートも提供しています。
▼タクシーに特化した転職エージェントサービスについて詳しく知りたい方はこちら
タクシーに特化した求人広告を活用|5サービスを紹介
ここでは、タクシードライバー採用に強い求人広告を紹介します。
ドラEVER
月間サイト閲覧数は111万PV、利用者数は21.7万人を誇る、ドライバーに特化した求人サイトです。
月間掲載費用は4.4万円からで、他の求人媒体にも無料で連携ができます。登録ユーザーのうち7割以上が20~40代の働き盛り世代で、ドライバー経験者も多いのが特徴です。
転職道.com
タクシー専門の求人サイトで、求職者とのマッチング率が高く、採用率も優れています。
転職相談窓口を設け、求職者の希望や企業のニーズに応じたマッチングを実現しています。月額固定費のみで、応募者の数に応じた追加料金は発生しません。
シン・ノルワークス
ドライバー特化型の求人サイトで、毎月3.2万人以上が閲覧しています。
掲載料は無料で、何原稿でも掲載可能です。掲載期間も無期限で、8,000社以上の企業と取引実績があります。
さらに、スカウトメールの配信を無料で代行するサービスも提供しています。
タクQ
タクシー業界に特化した求人サイトで、完全成功報酬制を採用しています。
入社に至った場合のみ費用が発生し、掲載料や制作費は一切かかりません。
担当者との綿密な打ち合わせのもと、提供された素材を基に求人情報ページを作成します。
ドライバーズワーク
5万人以上の利用実績があるドライバー特化型の求人サイトです。
人材紹介サービスと求人掲載サービスを提供し、企業の採用ニーズに合ったトータル支援をおこないます。
キャリアアドバイザーが求職者をヒアリングし、採用要件に合った人材を紹介してくれます。また、早期退職時の返金保証もあるのが特徴です。
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9.タクシードライバー採用を成功させるために
タクシードライバーの採用成功には、ドライバー目線での魅力発信、人物重視の面接、働きやすい環境づくりが重要です。
専門エージェントや求人広告の活用も有効な手段です。
各社の優れた取り組みを参考に、自社に合った採用戦略を立てることが求められます。
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以下の記事では、タクシードライバーにおける新卒採用について、その現状や採用担当者が知っておきたいポイントについてご紹介しています。