外国人ドライバー採用のメリットと注意点｜人手不足解消の切り札

日本の運送・物流業界は深刻な人手不足に直面しており、その解決策として外国人ドライバーの採用が注目されています。

本記事では、外国人ドライバー採用のメリットから具体的な採用プロセス、注意点まで徹底解説。人手不足解消の切り札となる外国人ドライバー活用法をご紹介します。

1．深刻化する運送業界の人手不足問題

日本の運送・物流業界は今、かつてない規模の人手不足に直面しています。

この問題の実態と背景、そして対応策としての外国人ドライバー活用の可能性について詳しく見ていきましょう。

日本の運送・物流業界が直面している危機的状況

日本の運送・物流業界は、少子高齢化による労働人口の減少と若年層のドライバー職離れという二重の問題に直面しています。

トラックドライバーの有効求人倍率は全産業平均の2倍以上を維持し、ドライバーの高齢化も進行中です。

50歳以上のドライバーが全体の約50%を占める一方、若年層の新規参入は減少しています。

▼運送会社の離職率はどれくらい？

以下の記事では、離職率の計算方法と改善策を人材定着に悩む運送会社向けに解説しています。ドライバーの定着率を高める具体的な施策や、業界の成功事例も紹介しています。あわせて参考にしてください。

2024年問題とは？運送業界への影響

「2024年問題」とは、2024年4月から自動車運送業に時間外労働の上限規制（年間960時間）が適用されることを指します。

大型トラック運転者の労働時間は全産業平均より年間432時間も長く、この規制により配送能力の低下、運送コストの上昇、物流網の再編、サービス品質への影響が懸念されています。

この問題に対応するため、業界では自動化技術の導入や業務効率化、そして何より人材確保が喫緊の課題となっています。

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2．外国人ドライバー採用に注目が集まる背景

外国人ドライバーが注目される背景には、政策的な動きや社会的変化などの複合的な要因があります。ここでは、その具体的な背景と最新動向について解説します。

2025年4月最新！特定技能制度の拡充

国土交通省は2025年4月現在、外国人労働者の在留資格「特定技能制度」を16業種に拡充しており、その中に自動車運送業も対象に含まれることになりました。

なお、在留資格申請には、バス・タクシーは第二種運転免許、トラックは第一種運転免許が必要となり、タクシー、バスドライバーは日本語能力試験のN3レベルが求められます。

参考：国土交通省｜国土交通省所管５分野における新たな在留資格「特定技能」による外国人材の受入れ

訪日外国人観光客増加に伴うタクシー需要の拡大

訪日外国人観光客の増加に伴い、観光地でのタクシー不足が問題視されています。

言語対応ができるドライバーの需要が高まっており、外国人ドライバーの活用が注目されています。政府は2030年に訪日外国人観光客数を6,000万人に増やす目標を掲げており、多言語対応可能なタクシードライバーの増加が不可欠です。

外国人ドライバーの導入により、母国語でのコミュニケーションや観光案内サービスの提供など、インバウンド観光の活性化が期待されています。

政府の外国人材活用に関する政策パッケージ

政府は2023年6月に策定した政策パッケージで「外国人材の有効活用に向けて調整を進める」と明記し、運送業界における外国人材活用を推進しています。

このパッケージには在留資格の見直し、受け入れ環境整備、日本語教育や技能研修の充実、生活支援や地域との共生促進などが含まれています。

特に2024年問題への対策として外国人ドライバーの活用は重要視されており、関連省庁が連携して環境整備を進めています。

これにより外国人ドライバー採用への障壁が低くなり、業界全体での受け入れ体制が整備されつつあります。

参考：内閣官房│ 物流革新に向けた政策パッケージ

3．外国人ドライバー採用の7つのメリット

外国人ドライバーを採用することで、運送・物流企業には様々なメリットがもたらされます。ここでは、主要な7つのメリットについて詳しく解説します。

深刻な労働力不足の即効的な解消

外国人ドライバーの採用は、運送業界の深刻な労働力不足を即効的に解消します。

株式会社NX総合研究所の調査データによると、2020年度時点で約4万6千人が不足、2025年度では14万5千人が不足、2030年度では21万4千人が不足すると予測されています。この需要に日本人ドライバーだけで対応することは困難です。

母国で運転経験を持つ外国人を採用することで、比較的短期間で戦力化が可能となり、若年層の日本人ドライバー減少を補完し、年齢構成のバランスを改善できます。

参考：株式会社 ＮＸ総合研究所│「物流の2024年問題」の影響について（２）

多言語対応によるインバウンド需要への対応力強化

外国人ドライバーの採用により、訪日外国人向けのサービス品質が向上します。特にタクシー業界では、多言語対応可能なドライバーが大きな差別化要因となります。

英語、中国語、韓国語などを話せるドライバーにより、外国人観光客の移動に関する不安が軽減され、より満足度の高いサービスを提供できます。

観光案内や地域情報の提供など付加価値の創出も可能となり、収益拡大と企業ブランド向上に貢献します。

異なる視点と経験がもたらす業務革新

外国人ドライバーは、自国での経験や異なる視点を持ち込むことで、日本の運送業界に新たな業務改善のアイデアをもたらします。

物流の多様化が進む中、海外の運送業務では日本とは異なる技術やノウハウが存在し、これらの知見が日本の運送業務の効率化や品質向上に寄与します。

異なる配送ルート最適化の手法や効率的な積載方法、デジタル技術を活用した配送管理システムなど、新たな視点からの改善提案が業務革新につながる可能性があります。

多様な文化背景による職場活性化

外国人ドライバーの採用は、職場に多様性をもたらし、組織文化を活性化させます。

異なる文化的背景を持つ人材の協働により、コミュニケーション能力の向上、柔軟な思考の促進、問題解決能力の強化、チームワークの強化などの効果が期待できます。

多様な価値観や考え方に触れることで日本人社員の視野が広がり、創造的な発想が生まれやすくなります。外国人ドライバーの存在が職場の雰囲気を明るくし、活気ある職場環境の構築につながることも少なくありません。

人件費の最適化と経営効率の向上

外国人ドライバーの採用は、人件費の最適化と経営効率の向上に貢献します。日本人ドライバーと同等以上の待遇を確保しつつも、人材配置の柔軟性が高まることで全体としての経営効率が向上します。

シフト調整の柔軟化により繁忙期や特定時間帯の人員配置を最適化でき、特定の言語や地域に特化したサービス提供も可能になります。多様な採用チャネルの確保により安定的な人材確保も実現します。

外国人材を適切に活用することで、労働コストの効率化とサービス品質の向上を同時に実現できるのです。

海外展開を見据えたグローバル人材の確保

物流業界のグローバル化が進む中、将来的な海外展開を見据えたグローバル人材の確保も外国人ドライバー採用の重要なメリットです。

外国人ドライバーは将来的に海外拠点設立時の核となる人材になり得、母国とのコネクションを活かした物流ネットワークの拡大も期待できます。

海外市場のニーズや商習慣に関する知見を得られるとともに、多文化環境の中で日本人社員のグローバル視点も養われます。

特に物流需要が拡大している東南アジア地域への進出において、その国出身のドライバーが貴重な架け橋となるでしょう。

地域社会との新たな共生関係の構築

外国人ドライバーの採用は、地域社会との新たな共生関係の構築にもつながります。地方の過疎化が進む中、外国人材の受け入れは地域活性化の一助となります。

人手不足による公共交通や物流サービスの縮小を防ぎ、地域の生活インフラを維持できます。

地域住民と外国人の交流による相互理解の深化や、外国人材の定住による消費活動や税収の増加など、地域経済への波及効果も期待できます。

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4．外国人がドライバーとして働くために必要な在留資格

外国人が日本でドライバーとして働くためには、適切な在留資格（ビザ）が必要です。ここでは、どのような在留資格でドライバー業務に就けるのか詳しく解説します。

特定技能ビザで働く場合

特定技能ビザは、外国人労働者受け入れ促進のため2019年に導入された制度です。このビザには在留期間5年までの「1号」と更新制限のない「2号」があります。

自動車運送業分野においては現状、特定技能2号の受け入れは認められていません。

自動車運送業分野における「特定技能1号」に必要なもの

• 日本語能力を証明する試験の合格（バス・タクシードライバーはN3レベル以上）
• 自動車運送業分野特定技能1号評価試験（トラック、バス又はタクシー）の合格
• 日本の自動車運転免許（トラックドライバーは第一種運転免許、バス・タクシードライバーは第二種運転免許）の取得
• バス・タクシードライバーは新任運転者研修の修了

参考：国土交通省│特定技能Q&A

永住者・日本人の配偶者等・定住者の資格で働く場合

「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4つの在留資格は、一般に「永定配」と呼ばれます。これらの最大の特徴は就労活動に制限がなく、どの職種でも就労可能な点です。

また、在留期間の更新が比較的容易で安定した身分が保証されます。

• 「永住者」：10年以上の在留歴等の条件を満たした外国人
• 「日本人の配偶者等」：日本人と結婚した外国人や、日本人の子供
• 「永住者の配偶者」：永住者の配偶者や、子供として日本に滞在する外国人
• 「定住者」：日系3世や難民認定者など

これらの在留資格を持つ外国人は、すでに多くがドライバーとして活躍しています。

留学生アルバイトとして働く場合

「留学」の在留資格を持つ外国人学生も、一定条件下でドライバーのアルバイトとして雇用可能です。

留学生のアルバイトには資格外活動許可の取得が必要で、就労時間は週28時間以内（長期休暇中は1日8時間まで）に制限されています。

留学生をドライバーとして雇用する際は、学業との両立に配慮し、就労時間の上限を超えないようシフト管理を徹底する必要があります。また、有効な運転免許の所持確認や、運転技術・交通ルールの理解度チェックも重要です。

参考：出入国在留管理庁│資格外活動許可申請

海外派遣労働者ビザで働く場合

海外拠点から派遣される外国人ドライバーの場合、「企業内転勤」や「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格が適用されます。

• 「企業内転勤」：外国の事業所から日本の事業所への転勤形態であること、両事業所間の資本関係、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務、外国事業所での1年以上の業務経験
• 「技術・人文知識・国際業務」：専攻関連業務または10年以上の実務経験がある業務への従事、日本人同等以上の報酬など

5．外国人ドライバーの採用プロセス

外国人ドライバーを採用するためのプロセスは、日本人の採用とは異なる点に注意が必要です。ここでは、効果的な採用プロセスの進め方について詳しく解説します。

採用前に確認すべき法的要件と必要書類

外国人ドライバー採用時は、まず法的要件と必要書類の確認が不可欠です。

• 在留資格の確認：就労可能な資格の有無、在留期間、資格外活動許可の有無などをチェックします。
• 運転免許の確認：日本の免許か国際免許の有効性、必要種類の免許所持などを確認
• その他：在留カード、パスポート、住民票など

外国人雇用時はハローワークへの「外国人雇用状況届出書」提出も義務付けられており、特定技能の場合は四半期ごとの活動状況届出も必要です。

効果的な求人情報の作成と発信方法

外国人ドライバーを効果的に採用するには、適切な求人情報作成と発信方法が重要です。

求人情報に入れるべき内容

• 多言語対応の内容
• 詳細な就労条件
• 必要資格や経験
• 日本語能力要件
• ビザ・住居サポート
• 研修制度、会社の魅力など

発信方法

• 外国人向け求人サイト活用
• 日本語学校との連携
• 外国人コミュニティへのアプローチ
• 外国人材紹介会社の活用
• 現従業員からの紹介制度など

特に既存の外国人社員からの紹介は信頼性が高く、文化的適合性の高い人材確保につながります。給与以外の魅力も積極的にアピールしましょう。

面接時のポイントと適性評価の進め方

外国人ドライバー候補の面接では、通常の採用面接に加え特有のポイントに注意が必要です。

面接準備

• 通訳者の手配
• 多言語応募書類の用意
• オンライン面接環境整備
• 文化的配慮のある質問準備など

確認すべきポイント

• コミュニケーション能力
• 運転技術と知識
• 適応能力と姿勢

適性評価方法

• 筆記テスト
• 実技テスト
• ロールプレイ
• 性格検査

言語の壁を考慮し簡潔で明確な質問を心がけ、非言語コミュニケーションからも意欲や適性を読み取りましょう。文化的違いから不適切と捉えられる質問には注意が必要です。

入社後の研修プログラム設計のコツ

外国人ドライバーの入社後は、効果的な研修プログラムで早期戦力化を図ることが重要です。

研修プログラム内容

• 会社概要や就業規則を説明するオリエンテーション
• 交通ルールや車両操作を指導する技術研修
• 配車システムや顧客対応を教える業務研修

効果的な研修のコツ

• 視覚的教材の多用
• 多言語マニュアルの用意
• 段階的な進行
• 実践と座学のバランス
• 先輩外国人ドライバーのメンター活用
• 定期的なフォローアップ

特に日本人ドライバーとペアを組む「バディシステム」は実務ノウハウや企業文化の習得に効果的です。「おもてなし」精神など価値観の共有も重要です。

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6．外国人が日本で運転免許を取得する方法

外国人がドライバーとして働くためには、有効な運転免許が必須です。ここでは、外国人が日本で運転免許を取得するための方法について解説します。

母国の免許から日本の免許への切り替え手続き

外国の運転免許を持つ場合、「外国免許切替」で日本の免許に切り替えられます。条件は、外国免許が有効で、取得後その国に3ヶ月以上滞在したことが証明できることです。

手続きは運転免許センターで行い、外国免許証、日本語訳文、パスポート、在留カードなどの書類提出後、適性試験、知識確認、技能確認を受け、合格すれば日本の免許が交付されます。

イギリス、オーストラリア、韓国など約30カ国は「免除国」として知識・技能確認が免除されますが、それ以外の国は試験が必要です。

特に技能確認では日本の交通ルールに沿った運転が厳しくチェックされます。

参考：警視庁│外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替えるには

国際運転免許の取得と有効期間

国際運転免許証は短期滞在者に便利ですが、長期的なドライバー業務には不向きです。ジュネーブ道路交通条約に基づき発行され、発行国の免許証と併せて携帯することで有効となります。

日本での有効期間は「発行日から1年間」と「入国日から1年間」のいずれか短い方で、この期間を過ぎると使用できません。

また、一時帰国して新たに取得しても、前回の出国から3ヶ月経過していなければ日本では使用不可です。

国際運転免許は観光目的を想定しており、長期就労には適していないため、長期的に働く予定なら早めに日本の免許に切り替えるか、新規取得することをお勧めします。

参考：KAFLIX CLOUD│ジュネーブ道路交通条約とは？

7．外国人ドライバー雇用時の注意点と対策

外国人ドライバーの採用は多くのメリットをもたらす一方で、文化や言語の違いから生じる課題も存在します。ここでは、主な注意点と効果的な対策について解説します。

言語と文化の壁を乗り越えるコミュニケーション術

外国人ドライバーとの最大の課題は言語と文化の壁です。

業務指示の伝達ミスや緊急時の意思疎通問題などが生じやすいため、翻訳アプリの導入や視覚的な指示書の活用、段階的な日本語教育、異文化理解ワークショップの開催、バディシステムの導入などの対策が効果的です。

特に重要なのは相互理解の姿勢で、外国人ドライバーの文化や価値観を尊重しつつ、日本の職場文化や業務のあり方を段階的に理解してもらうプロセスが大切です。

言語だけでなく非言語コミュニケーションも含めた総合的なアプローチが、円滑な意思疎通につながります。

日本特有の道路事情と運転マナーの教育方法

外国人ドライバーには日本特有の道路事情や運転マナーの理解が不可欠です。

左側通行への適応、狭い道路や複雑な交差点への対応、季節による道路状況変化、日本特有の交通標識や暗黙のマナー理解などが課題となります。

効果的な教育方法としては、定期的な交通法規研修、段階的な実務導入、視覚的な学習ツール活用、定期的な運転技能チェックなどがあります。

特に重要なのは「なぜそうするのか」という理由の説明で、背景にある安全理念も含めた教育が深い理解と定着を促します。

適切な労働条件と福利厚生の設定

外国人ドライバーの定着と能力発揮には、適切な労働条件と魅力的な福利厚生が不可欠です。

労働基準法遵守、同一労働同一賃金の徹底、明確な給与体系と昇給制度、十分な休息時間確保、定期的な健康診断などが重要です。

効果的な福利厚生としては、社宅提供などの住居サポート、多言語対応の相談窓口設置などの生活支援、語学習得支援などのキャリア支援、家族の滞在支援などが考えられます。

これらの施策は単なるコスト増ではなく、定着率向上や生産性向上につながる重要な投資です。

▼ドライバーの福利厚生とは？

以下の記事では、トラック、タクシードライバーの法定および法定外福利厚生を解説しています。企業の具体的な取り組み事例も紹介。充実の理由もひも解いていますので、ぜひ参考にしてください。

外国人ドライバーの定着率を高める職場環境づくり

外国人ドライバーの早期離職を防ぎ長期定着を図るには、計画的な職場環境づくりが必要です。

キャリアパスの明示、会社理念の共有、異文化理解研修の実施、定期面談の実施などが効果的です。特に外国人ドライバー同士のコミュニティ形成支援は孤独感軽減や情報共有促進に役立ちます。家族を含めたイベントやサポートも定着率向上に貢献します。

定着率向上のカギは「単なる労働力」ではなく「会社の重要な一員」として外国人ドライバーを尊重し、成長を支援する姿勢にあります。

彼らの声に耳を傾け継続的に職場環境を改善していくプロセスが多様性のある強い組織づくりにつながります。

8．外国人ドライバー採用で未来を切り拓く

外国人ドライバーの採用は、単なる人手不足対策を超えた運送業界の未来を切り拓く戦略的施策です。

言語や文化の壁を乗り越える工夫と適切な環境整備により、労働力確保だけでなく、多言語対応によるサービス向上、業務革新、職場活性化など様々なメリットが得られます。

計画的な採用プロセスと入社後の育成支援が成功の鍵です。外国人ドライバーと共に、多様性を強みとする持続可能な運送業界を創り上げていきましょう。

2024年問題を控えた今こそ、行動を始めるべき時です。