運送業界でのドライバーの無断欠勤は、配送遅延や信頼低下など深刻な影響をもたらします。
本記事では、無断欠勤の主な原因から発生時の対応ステップ、効果的な予防策、法的知識まで、運送会社の管理者が知っておくべき対策を解説します。
ドライバーの働きやすい環境づくりと業務の安定化を実現するための具体的なアプローチをご紹介します。
- ドライバーの無断欠勤の5つの主な原因と、それぞれに適した対応方法
- 無断欠勤発生時に管理者がとるべき5つの具体的対応ステップ
- 運送業界で無断欠勤を予防するための効果的な対策と法的知識
1.運送業界における無断欠勤の現状と影響

運送業界では、ドライバーの無断欠勤が他の業種以上に深刻な問題となっています。
時間的制約の厳しい配送業務においては、一人のドライバーが突然欠勤することで、多くの荷物の配送が滞り、企業の信頼を大きく損なう可能性があります。
無断欠勤の背景には様々な要因が複雑に絡み合っており、それらを理解することが効果的な対策の第一歩となります。
過酷な勤務環境からくる身体的・精神的疲労
運送業界のドライバーは、非常に過酷な労働環境に置かれています。その特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- 長時間の運転による身体的負担
- 不規則な勤務時間(早朝・深夜勤務)
- 荷物の積み下ろしといった肉体労働
- 早朝や深夜の勤務も多く、体内リズムの乱れによる慢性的な疲労感や睡眠障害
特に長距離輸送を担当するドライバーは、家族との時間が取れないストレスも抱えています。こうした状況が限界に達すると、心身のバランスを崩し、突然の無断欠勤につながることがあります。
過労による体調不良が進行しても、人手不足の状況では休みを取りづらい雰囲気があり、結果として「もう限界だ」と感じた瞬間に連絡もなく休んでしまうケースが見られます。
運送会社として、ドライバーの健康状態や疲労度を定期的に確認し、適切な休息を取らせる体制づくりが重要です。
人間関係のトラブルやハラスメント問題
職場での人間関係の悩みやハラスメントも、無断欠勤の大きな原因となっています。運送業界特有の人間関係の問題には以下のようなものがあります。
- 配車担当者とドライバー間の不公平な配車
- 業務量や納期に関する過度な要求
- コミュニケーション不足からくる誤解や摩擦
- 先輩ドライバーからのいき過ぎた厳しい指導によるパワーハラスメント
- 職場内でのいじめや孤立
こうした人間関係の悩みを抱えたドライバーは、「今日は職場に行きたくない」という気持ちが強まり、連絡を入れること自体に恐怖を感じて無断欠勤に至ることがあります。
特に、ハラスメントの加害者が上司や先輩である場合、休みの連絡先が加害者自身であるというジレンマに陥り、結果として連絡できないまま欠勤するケースも少なくありません。
▼ハラスメント予防と対応策について詳しく
以下の記事では、企業人事向けにハラスメントの基礎知識から予防・対応策までを解説しています。法的責任や具体的な防止策もわかりやすく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
急な体調不良や事故・トラブル
ドライバーは道路上で長時間過ごすため、様々な予期せぬ事態に遭遇する可能性があります。結果的に無断欠勤につながりうる突発的な状況には、以下のようなものが挙げられます。
- 突然の体調不良や急病
- 交通事故や車両トラブル
- 悪天候による通行止めや道路状況の悪化
特に遠方での配送中に体調を崩したり、事故に遭遇したりした場合、連絡する余裕がないまま病院に搬送されるケースも考えられます。また、一人暮らしのドライバーが自宅で急病や事故に見舞われた場合、誰にも発見されないまま無断欠勤となることもあります。
さらに、スマートフォンの故障や紛失、バッテリー切れなど、連絡手段自体のトラブルが原因で連絡できないケースも存在します。会社側としては、ドライバーの安否確認を最優先し、連絡が取れない場合の対応手順を明確にしておく必要があります。
労働条件への不満や将来への不安
運送業界では、給与体系の複雑さや労働時間の長さに対する不満が無断欠勤の背景となることがあります。
また、運送業界の将来性への不安や自身のキャリアパスが見えないことによる焦りも、職場への帰属意識を弱める要因となります。
特に若手ドライバーの場合、将来設計が描けず「この仕事を続けても意味がない」と感じると、退職を考え始めます。その過程で「どうせ辞めるつもりだから」という気持ちから、無断欠勤に至るケースも見られます。
加えて、ワークライフバランスが取れないことへの不満や、家族からの理解が得られないストレスも、仕事への意欲を削ぎ、無断欠勤の誘因となります。
労働条件の明確化や将来のキャリアパスを示すことが、こうした不満や不安の解消につながります。
ビジネスマナーや責任感の欠如
一部のドライバー、特に経験の浅いドライバーの中には、社会人としての基本的なビジネスマナーや責任感が十分に身についていないケースがあります。
欠勤連絡の重要性や適切な方法を理解していなかったり、「少し遅刻するくらいなら休んでしまおう」という安易な考えから無断欠勤に至ったりすることがあります。
また、二日酔いや寝坊といった自己管理の問題が原因で、始業時間に間に合わないことを恥じて連絡を入れられないケースも少なくありません。さらに、SNSでの連絡や非公式な手段での連絡を「連絡したつもり」になっている例もあります。
運送業界では、荷物の時間通りの配達が顧客との約束であり、ドライバー一人ひとりの責任が大きいことを教育する必要があります。
無断欠勤が顧客や会社、同僚にどのような影響を与えるのか、具体的に示すことで責任感を育むことが重要です。
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2.無断欠勤発生時の5つの対応ステップ

ドライバーの無断欠勤が発生した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。感情的な対応は避け、問題の本質を見極めながら段階的に解決していくことが重要です。
ここでは、無断欠勤発生時に管理者が取るべき5つの対応ステップを解説します。
①迅速な状況把握と安否確認
事故や急病など、やむを得ない事情で連絡が取れない可能性も考慮し、複数の連絡手段を試みましょう。
- 電話やメール、SNSなど、普段から本人が使用している連絡ツール
- 緊急連絡先として登録されている家族や友人(連絡が取れない場合)
一人暮らしのドライバーで連絡が全く取れない場合は、自宅訪問や場合によっては警察への相談も検討すべきです。
特に普段から真面目に勤務しているドライバーの突然の無断欠勤は、何らかのトラブルに巻き込まれている可能性があります。
安否確認の際は、責めるような態度ではなく「心配している」というスタンスで接することが大切です。
状況把握の過程では、出勤予定時間や担当予定だった配送ルート、積荷の内容なども確認し、業務への影響範囲を素早く特定することも重要となります。
②代替ドライバーの手配と配送調整
無断欠勤したドライバーの安否確認と並行して、予定されていた配送業務を滞らせないための対応が求められます。
- 当日の配送スケジュールを確認する
- 荷物の重要度・緊急性に基づいて優先順位を決定する
- 他のドライバーの稼働状況を確認する
- 代替要員として対応可能なドライバーをリストアップする
代替ドライバーの選定では、配送ルートの知識や経験、当日の労働時間制限なども考慮する必要があります。
場合によっては、複数のドライバーで分担したり、配送時間の調整を顧客に依頼したりすることも検討します。特に、納期厳守が求められる重要顧客への配送は最優先で対応策を講じましょう。
顧客への連絡が必要な場合は、詳細な事情説明は避け、「配送体制の調整」など一般的な理由を伝え、新たな配送予定時間を明確に伝えることが重要です。
緊急時対応のためのバックアップ体制や代替要員リストをあらかじめ準備しておくことで、こうした事態への対応をスムーズに行うことができます。
③本人との面談と事情聴取
無断欠勤したドライバーと連絡が取れたら、できるだけ早く直接面談の機会を設け、欠勤の理由や背景について話を聞くことが重要です。
面談では、まず本人の状態を確認し、体調不良や精神的な問題がないかを優先的に把握します。責め立てるような対応は避け、「何があったのか教えてほしい」という姿勢で臨みましょう。

ドライバーが話しやすい環境を整えるため、プライバシーが確保された場所で、十分な時間を取って面談することが望ましいです。
無断欠勤の理由としては、体調不良や家庭の事情、職場でのハラスメントや人間関係の悩み、業務負担への不満など、様々な可能性が考えられます。特にハラスメントの訴えがある場合は、真摯に受け止め、詳細な状況を把握することが必要です。
また、面談では無断欠勤が業務や他のドライバーにどのような影響を与えたかを客観的に伝え、社会人としての責任について理解を促すことも大切です。ただし、叱責や脅しのような対応は避け、問題解決に向けた前向きな姿勢を示すことが重要です。
▼ドライバーに効果的な1on1とは?
1on1とは?以下の記事では、ドライバーのための1on1について、基本的な実施方法から具体的な活用ポイント、期待される効果まで解説しています。
④適切な指導と再発防止の話し合い
無断欠勤の原因を把握したら、それに応じた適切な指導と再発防止策を話し合います。
ドライバーへの指導の際は、一方的な説教ではなく、相互理解を深めるコミュニケーションを心がけましょう。
具体的には、欠勤時の正しい連絡方法や連絡先、休暇申請の手続きなどを改めて説明し、理解度を確認します。
また、体調管理の重要性や自己管理の方法についてもアドバイスを行い、必要に応じて産業医や専門家の相談も勧めます。
再発防止策としては、個々の状況に合わせた支援策を検討します。
- 定期的な面談の実施
- 一時的な業務負担の軽減
- メンターの指名 など
この際、ドライバー自身にも再発防止に向けた意見や提案を求め、共に解決策を考えるプロセスを大切にすることで、当事者意識と職場への帰属意識を高めることができます。
⑤経過観察と職場環境の改善
無断欠勤の問題に対処した後も、継続的な経過観察と職場環境の改善が重要です。まず、当該ドライバーの勤務状況や体調、モチベーションなどを定期的に確認し、問題の再発兆候がないかを注意深く観察します。
定期面談や日々のコミュニケーションを通じて、ドライバーの悩みや不満を早期に把握できる関係性を構築しましょう。
また、一人のドライバーの無断欠勤は、職場全体の問題を映す鏡でもあります。同様の問題が他のドライバーにも潜在していないか、職場環境や労働条件に改善の余地はないかを検討することが大切です。
具体的な改善策
- 勤怠管理システムの見直し
- コミュニケーション機会の増加
- ストレスチェックの実施
- 労働時間や休憩時間の適正化 など
特に運送業界では、長時間労働や不規則な勤務体系が常態化しやすいため、ワークライフバランスを意識した勤務体制の構築を目指しましょう。
改善策の効果を定期的に評価し、必要に応じて見直しや追加対策を講じることで、無断欠勤のリスクを低減するだけでなく、ドライバー全体の働きがいと定着率の向上にもつながります。
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3.運送業界で無断欠勤を予防するための効果的な対策

無断欠勤が発生してからの対応も重要ですが、そもそも無断欠勤を未然に防ぐための予防策を講じることがより効果的です。
ここでは、運送業界の特性を踏まえた無断欠勤予防のための5つの対策を紹介します。これらを組み合わせて実施することで、ドライバーの働きやすさと業務の安定性を同時に向上させることができます。
①勤怠管理システムの導入と明確なルール設定
効果的な勤怠管理システムの導入は、無断欠勤予防の基盤となります。運送業界に適したシステムには以下のような特徴があります。
- スマートフォンやタブレットを活用したモバイル打刻システム
- GPSと連動した位置情報記録機能
- 配送先での業務開始・終了時刻の自動記録
- リアルタイムでの勤怠状況確認機能
こうしたシステムを導入する際は、単なる監視ではなく、公平な評価や適正な労働時間管理のためのツールであることを丁寧に説明し、ドライバーの理解を得ることが重要です。
また、欠勤・遅刻・早退に関するルールを明確に定め、就業規則や社内マニュアルに明記しましょう。
勤怠に関する具体的なルール
- 欠勤連絡の期限(例:始業時間の1時間前まで)
- 連絡方法(電話・メール・専用アプリなど)
- 連絡先(直属の上司、配車担当者、事務所など)
さらに、やむを得ない事情で正規の方法で連絡できない場合の代替手段も用意しておくことで、無断欠勤のリスクを減らせます。
これらのルールは入社時の研修で徹底し、定期的に再確認する機会を設けることが大切です。
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②ドライバーの健康管理とストレスケア
運送業界では、長時間の運転や不規則な勤務形態がドライバーの健康に大きな影響を与えます。健康管理の主な取り組みとしては、以下のような項目が挙げられます。
- 定期健康診断の確実な実施
- 睡眠時間や食生活についての教育
- ストレスチェックと対策
- リラクゼーション技法やストレス発散方法についての情報提供
特に、睡眠不足は運転の安全性に直結するため、十分な休息時間の確保と質の高い睡眠のためのアドバイスを提供しましょう。
また、ストレスチェックを定期的に実施し、高ストレス状態のドライバーには早期に対応することが無断欠勤の予防につながります。
運送業界特有のストレス要因としては、渋滞や天候不良による配送遅延、顧客からのクレーム対応、車両トラブルなどがあります。これらにどう対処すべきかを明確にし、必要なサポート体制を整えましょう。
加えて、リラクゼーション技法やストレス発散方法についての情報提供も効果的です。休憩施設の充実や、仮眠スペースの確保、健康的な食事の提供など、物理的な環境面での支援も重要です。
ドライバーの健康状態は企業の安全運転にも直結するため、健康管理を企業全体の重要課題として位置づけることが必要です。
▼ストレスチェックについて詳しく解説
以下の記事では、ストレスチェック制度の義務化要件から実施手順、サービス選びまで紹介しています。人事担当者のための実践的な運用を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
③コミュニケーション強化と相談しやすい職場づくり
無断欠勤の多くは、コミュニケーション不足から生じる問題です。ドライバーが悩みや不満を抱えていても、それを相談できる環境がなければ、最終的に無断欠勤という形で表れることがあります。
そのため、日頃からコミュニケーションを活性化し、相談しやすい職場づくりを進めることが重要です。
- 定期的な個別面談の実施
- 匿名で意見や提案を出せる仕組みの導入
- ドライバー同士の交流機会の創出 など
特に運送業界では、ドライバーが一人で業務に従事する時間が長いため、孤独感を感じやすい傾向があります。
デジタルツールを活用した連絡体制の整備や、社内SNSの導入なども検討しましょう。また、相談窓口を複数設置することで、直属の上司には言いづらい悩みも相談できる環境を整えることが大切です。
相談を受けた際には、真摯に耳を傾け、適切なフィードバックや解決策を提示するよう心がけましょう。
ドライバーが「この会社なら困ったときに助けてくれる」と感じられれば、無断欠勤ではなく正規の手続きで休暇を取るという選択をするようになります。
職場での人間関係の質が高まれば、仕事へのモチベーションも向上し、無断欠勤のリスクを大幅に減らすことができます。
④適正な労働環境と働きがいの創出
無断欠勤を防ぐためには、ドライバーが働きやすい環境を整え、仕事に対する誇りややりがいを感じられるようにすることが重要です。
ドライバーが単なる「荷物を運ぶ人」ではなく、「物流を支える重要な専門職」としての誇りを持てるよう、その価値や社会的意義を伝えることも大切です。
顧客からの感謝の声を共有したり、優秀なドライバーを表彰する制度を設けたりすることで、仕事に対する満足度を高めることができます。
働きがいを感じられる職場であれば、ドライバーは会社への帰属意識を高め、無断欠勤という選択をしにくくなります。
⑤緊急時対応計画の整備と訓練
ドライバーが予期せぬ事態に遭遇した際に、適切に対応できる体制を整えておくことも無断欠勤防止につながります。
具体的には、体調不良、交通事故、車両トラブル、悪天候などの緊急事態が発生した場合の連絡方法や対応手順を明確にしたマニュアルを作成し、全ドライバーに周知しましょう。
24時間対応の緊急連絡先を設置し、いつでも相談できる体制を整えることも重要です。
また、スマートフォンのバッテリー切れや通信圏外など、通常の連絡手段が使えない場合の代替連絡方法も用意しておくと安心です。
定期的に緊急時対応訓練を実施し、実際の場面で冷静に対応できるよう備えておくことも効果的です。
また、ドライバーが一定時間連絡が取れない場合の安否確認プロトコルを策定しておくと、無断欠勤が発生した際の初期対応がスムーズになります。
運行管理システムやGPS機能を活用し、ドライバーの位置情報をリアルタイムで把握できる仕組みも有効です。

これらの対策は、無断欠勤の予防だけでなく、ドライバーの安全確保にも直結する重要な取り組みとなります。
緊急時の対応が整備されていれば、ドライバーは「何かあったときに会社がサポートしてくれる」という安心感を持って業務に従事できるようになります。
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4.無断欠勤に関する法的知識と懲戒処分の注意点

無断欠勤が続く場合、懲戒処分を検討することがありますが、その際には法的知識を持ち、適正な手続きを踏むことが重要です。
不適切な対応は、後々労使トラブルに発展するリスクがあります。ここでは、無断欠勤に関連する法的知識と懲戒処分を行う際の注意点について解説します。
無断欠勤に対する懲戒処分の種類と適用基準
無断欠勤に対する懲戒処分には、軽いものから順に、口頭注意、厳重注意、始末書提出、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などがあります。
どの処分を適用するかは、無断欠勤の頻度や期間、理由、これまでの勤務態度、業務への影響度などを総合的に判断する必要があります。
例えば、初めての無断欠勤で理由に一定の合理性がある場合は口頭注意程度にとどめ、繰り返し無断欠勤を行い業務に大きな支障をきたした場合はより重い処分を検討するという具合です。
重要なのは、処分の程度が「社会通念上相当」と認められる範囲内であることです。過度に厳しい処分は、裁判で無効とされるリスクがあります。
また、懲戒処分を行うためには、就業規則に懲戒事由と処分の種類が明記されていることが前提条件となります。
懲戒処分を行う際は、まず当該ドライバーに弁明の機会を与え、十分に事情を聴取した上で判断することが大切です。処分を決定したら、その理由と根拠を明確に説明し、書面で通知するようにしましょう。
解雇を検討する場合の法的リスクと注意点
無断欠勤を理由に解雇を検討する場合、特に慎重な対応が求められます。
労働契約法第16条では、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」の解雇は、権利の濫用として無効とされています。
無断欠勤による解雇が有効と認められるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 無断欠勤の回数や期間が相当程度に達していること
- 改善の見込みがないこと
- 業務に重大な支障をきたしていること など
また、解雇する前に、出勤を促す文書の送付や、面談の実施など、会社側が復職に向けた努力を行っていることも重要なポイントです。
さらに、無断欠勤の背景に会社側の問題(ハラスメントや過重労働など)がある場合は、解雇が不当と判断されるリスクが高まります。
解雇を行う場合は、労働基準法第20条に基づき、原則として30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
特に懲戒解雇の場合は、解雇予告を不要とする労働基準監督署の認定(解雇予告除外認定)を受けることも検討すべきです。
いずれにせよ、解雇は最終手段と位置づけ、それ以外の方法での解決可能性を十分に検討することが望ましいでしょう。
就業規則への無断欠勤関連規定の盛り込み方
無断欠勤に対して適切に対応するためには、就業規則に明確な規定を設けておくことが不可欠です。効果的な就業規則の整備には以下の要素が重要です。
- 無断欠勤の明確な定義
「事前の届出や承認なく欠勤すること」「欠勤当日の始業時刻までに連絡なく欠勤すること」など、就業規則に具体的に記載する - 欠勤・遅刻・早退の手続きの詳細規定
・連絡方法(電話、メール、専用アプリなど)
・連絡先(上司、配車担当、事務所など)
・連絡期限(始業時間の何時間前までかなど) - 必要書類と提出期限の明記
・欠勤届の提出タイミング
・診断書が必要となる条件
・有給休暇との関係性
懲戒規定においては、無断欠勤が懲戒事由に該当することを明記し、回数や期間に応じた段階的な処分基準を設けるとよいでしょう。
例えば「無断欠勤1回目:口頭注意」「2回目:厳重注意と始末書提出」「3回目:減給」など、具体的な基準を示すことで、公平性と透明性を確保できます。
さらに、連続して無断欠勤が続いた場合の対応や、自然退職(退職扱い)となる条件なども明確にしておくことが望ましいです。
就業規則を改定した際は、社内での周知を徹底し、ドライバー全員が内容を理解できるようにしましょう。
▼使用期間中の解雇は可能?
以下の記事では、試用期間中の解雇における正当な理由と手続きについて、ドライバー採用を例に実務的な観点から詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
5.健全な職場で防ぐ無断欠勤対策
無断欠勤の問題解決には、ただ厳しい罰則を設けるだけでは不十分です。その背景にある原因を理解し、予防的な対策を講じることが何より大切です。
ドライバーの健康管理とストレスケアを支援し、風通しの良いコミュニケーション環境を構築することで、悩みや不満を早期に発見できます。
また、明確な勤怠ルールと緊急時対応マニュアルを整備し、ドライバーが責任を持って行動できる環境を整えましょう。
何より大切なのは、ドライバーが「この会社で働きたい」と思える職場づくりです。適正な評価と報酬、キャリアパスの提示、研修機会の提供など、モチベーション向上につながる施策を積極的に取り入れ、無断欠勤のない健全な職場環境を実現していきましょう。