運送業界は、2024年4月から適用された時間外労働の上限規制という働き方改革における大きな転換点を迎えています。
多くの運送企業が対応に苦慮する中、この既に始まった「2024年問題」を乗り越えるための実践的な対策が求められています。
本記事では、働き方改革における法令遵守と業績維持を両立させる5つの実践ステップと、実際に成果を上げている企業の事例を紹介します。
- 運送業界における2024年問題の実態と、適用中の時間外労働上限規制が企業に与える影響
- 労働時間削減と生産性向上を両立させる5つの実践ステップとその具体的方法
- 実際に働き方改革で成果を上げた運送企業の成功事例と、今すぐ始められるアクションプラン
1.運送業界が直面する働き方改革と2024年問題の現状

運送業界は既に適用された時間外労働上限規制に直面しています。長時間労働と人手不足という構造的問題の中、この規制は事業モデルの抜本的見直しを迫っています。
運送ドライバーの労働環境に関する厳しい現実

厚生労働省の「はたらきかたススメ」によると、令和5年度におけるトラックドライバーの年間労働時間は全産業平均と比較して、大型トラックで405時間、中小型トラックでも372時間も長いという厳しい現実があります。
この長時間労働はドライバーの健康被害やワークライフバランスの崩壊だけでなく、交通事故リスクの増加にも繋がっています。
2025年現在もこの状況は大きく改善されておらず、深刻な人手不足と高齢化が進行しています。
若年層のドライバー志望者が減少する一方、ベテランドライバーの定年退職が進み、人材確保と定着が経営課題の上位に挙がっています。
荷主都合による長時間の待機時間や不規則な勤務形態も労働環境を悪化させる要因となっています。
これらの問題は個々の企業の課題ではなく、物流という社会インフラを維持するための業界全体の構造的な課題として認識される必要があります。
2024年4月から始まった時間外労働の上限規制とその影響

2024年4月から、運送業界に対する時間外労働の上限規制が実施されています。具体的には、年間の時間外労働が960時間を超えることが許されなくなりました。
施行から1年が経過し、様々な影響が顕在化しています。全日本トラック協会の調査によれば、規制施行前は回答事業者の25.9%が「時間外労働の上限規制を超過するドライバーがいる」と回答しており、およそ4社に1社が法令違反となるリスクを抱えていました。
現在、これらの企業では人件費の増加、配送能力の低下、運賃の上昇、荷主との関係再構築など、多方面にわたる影響が現実のものとなっています。
特に中小運送企業は、人材確保や設備投資の資金面での制約から対応が困難なケースも多く、業界の二極化が進んでいます。
一方で、事前に対策を講じていた企業は安定した事業運営を続けており、危機を好機に変えた成功事例も出始めています。
参考:
厚生労働省|建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制
全日本トラック協会|第6回 働き方改革モニタリング調査について
働き方改革に取り組むべき3つの理由
運送業界が働き方改革に積極的に取り組むべき理由は、単なる法令遵守を超えた経営戦略の観点から3つあります。
厚生労働省の調査によれば、働き方改革に取り組んでいる企業は従業員の離職率が平均20%低いという結果が出ています。ESG投資の観点からも、働き方改革は企業価値向上に直結するのです。
- 人材確保・定着の強化
働きやすい環境を整えることで、若手ドライバーの採用が容易になり、既存ドライバーの定着率も向上する - 生産性・収益性の向上
業務効率化や待機時間削減などのプロセス改善は、1ドライバーあたりの生産性向上につながり、労働時間が減っても収益性を維持・向上させることが可能となる - 企業価値・ブランド力の向上
「働きやすい運送会社」というブランドイメージは、ドライバー採用だけでなく、荷主からの信頼獲得にも寄与する
参考:厚生労働省|第3節 中小企業における働きやすい職場環境づくり
▼ドライバーの定着率をあげる
以下の記事では、トラック業界の離職率問題を解説しています。現状分析から具体的対策まで、若手ドライバーの定着率向上策6選を紹介!ぜひ参考にしてください。
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2.働き方改革関連法の基本と運送業界への適用

働き方改革関連法は日本の労働環境を変える法改正であり、運送業界への猶予期間は既に終了しました。法律の理解と適用条件の把握が対応策の第一歩です。
働き方改革関連法の全体像と目的
働き方改革関連法は、正式名称を「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といい、2019年4月から順次施行され、現在は全面施行されています。
この法律は従来の労働関連法規に加えられた一連の改正の総称であり、「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」という3つの主要目的を持っています。
運送業界における働き方改革関連法のポイント
- 時間外労働の上限規制の導入
- 月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ
- 勤務間インターバル制度の導入促進
- 年5日の年次有給休暇の確実な取得
- 労働時間の客観的な把握 など
これらの改正は単に労働時間を短縮するだけでなく、労働生産性の向上と労働者の健康確保を同時に実現することを目指しています。
運送業界特有の課題と猶予期間終了後の実態
運送業界に対して働き方改革関連法の適用に5年間の猶予期間が設けられた背景には、業界特有の課題が認められたからでした。
配送量の変動、長距離運行の必要性、待機時間問題、ドライバー不足などがその理由です。
しかし、この猶予期間も2024年3月31日で終了し、現在は年間960時間という時間外労働の上限規制が全面適用されています。
この規制施行後1年が経過し、業界内では様々な変化が起きており、適応できた企業とそうでない企業の二極化が進んでいます。
対応しなかった場合のリスクと罰則
時間外労働の上限規制に違反した場合、企業は深刻な法的・経営的リスクに直面します。
2025年現在、既に規制違反により行政処分を受けた企業の事例も出始めており、コンプライアンス遵守の重要性はますます高まっています。
経営面では、法令違反の状態が続くことで優秀なドライバーの離職や新規採用の困難さにつながる人材流出のリスク、取引先からの信用低下、最悪の場合事業停止命令などの行政処分を受ける危機などが現実化しています。
▼働き方改革に対応するために
以下の記事は、2024年の法改正後における運送業界の働き方改革の実践ガイドです。具体的な施策から成功事例まで、経営者向けに詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
3.2024年問題を乗り越えるための5つの実践ステップ

規制適用から1年が経過し、成功企業から学んだ法令遵守と業績維持を両立させる5つの実践ステップを紹介します。段階的に実施することで最大の効果を得られます。
ステップ1:労働時間の可視化と現状分析
最初に取り組むべきは、ドライバーの労働時間の正確な把握と分析です。多くの運送企業では、実際の労働時間が正確に記録・分析されていないケースが少なくありません。
特に待機時間や付帯作業時間の把握が不十分な場合が多いのが現状です。
具体的な実践方法
デジタルタコグラフやGPS機能付き勤怠管理システム導入による、運転時間のほか、荷積み・荷下ろし、待機時間などを含めた総労働時間を自動記録できる仕組みを整える

システムの導入については、月額5,000円程度から導入可能なクラウドサービスも増えています。
次に収集したデータを基に、ドライバーごと、配送ルートごと、荷主ごとの労働時間を視覚化するダッシュボードを作成します。
そして、データ分析から特に労働時間が長くなる要因を特定し、改善の優先順位を決定します。
▼おすすめ勤怠管理システム
以下の記事では、2024年問題に対応するトラック向け勤怠管理システムの特徴と導入メリットを解説しています。おすすめ5選も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
ステップ2:シフト・配車計画の最適化
労働時間の分析結果を基に、次はシフトや配車計画の最適化を図ります。これは追加投資を最小限に抑えながら、即効性のある改善を実現できる重要なステップです。
具体的な実践方法
- ドライバーの勤務シフト見直し
特定のドライバーに長時間労働が集中しないよう、公平な業務分担を実現するシフト設計を行う - 配車計画の最適化
AIを活用した配車最適化ソフトウェアの導入
ドライバーの勤務シフト見直しについては、例えば、長距離運行と短距離運行を交互に組み合わせたり、夜間運行の担当を交代制にするなどの工夫が効果的です。
次に配車計画の最適化を進めます。AIを活用した配車最適化ソフトウェアの導入は、初期投資は必要ですが、人手による配車計画と比較して20-30%の効率化が期待できます。
中小企業向けの比較的安価なソリューションも増えています。2025年現在、規制適用後に配車計画の最適化に成功した企業では、ドライバー1人あたりの時間外労働を削減しながらも配送効率を維持しています。
ステップ3:テクノロジー導入による業務効率化
デジタル技術を活用した業務効率化(物流DX)は、働き方改革を成功させるための重要な要素です。適切なテクノロジー導入により、労働時間削減と生産性向上の両立が可能になります。
具体的な実践方法
- 配送管理システム(TMS)の導入
受注から配車、運行管理、請求までを一元管理するTMSにより、事務作業の効率化とドライバーの負担軽減を図れる - 電子取引・電子サインの活用
紙の納品書や受領書をデジタル化することで、ドライバーの事務作業時間を削減できる

配送管理システム(TMS)については、クラウド型TMSなら月額3万円程度から導入可能です。
スマートフォンアプリで電子サインを取得するシステムは、導入コストも比較的低く、即効性があります。
また、リアルタイムの交通情報を考慮した最適ルート提案システムの導入も効果的です。
▼デジタコ×勤怠管理
以下の記事では、デジタコと勤怠管理について徹底解説!勤怠管理システムについても紹介しています。ぜひ参考にしてください。
ステップ4:ドライバーの多能工化と育成プログラム
限られた人材を最大限に活用するため、ドライバーのスキル向上と多能工化を進めることも重要です。
特定の業務や配送ルートしか担当できない状況では、シフト編成の柔軟性が失われ、一部のドライバーに労働時間が集中してしまいます。
具体的な実践方法
- クロストレーニングの実施
異なる車種や配送ルート、荷物の取り扱いなどについて、ドライバー間で相互に技術やノウハウを共有する - スキルマトリクスを作成
各ドライバーのスキルレベルを可視化した「スキルマトリクス」を作成し、計画的な育成と適材適所の配置に活用する
クロストレーニングの実施により、特定ドライバーへの依存度を下げ、シフトの柔軟性を高めることができます。
多能工化や技能向上に対するインセンティブ制度の導入も効果的です。
2025年現在、規制適用後に多能工化プログラムを導入した企業では、シフト編成の柔軟性向上により、時間外労働削減と配送能力維持の両立に成功しています。
ステップ5:待機時間削減のための荷主との協力体制構築
運送業界の長時間労働の大きな要因の一つが、荷積み・荷下ろし時の待機時間です。この問題は運送会社だけでは解決できず、荷主企業との協力が不可欠です。
規制適用から1年が経過した現在、荷主との関係を見直し、協力体制を構築することが重要です。
具体的な実践方法
- 荷主への働きかけと情報共有
上限規制の現状と影響について荷主企業に丁寧に説明し、理解を求める - 時間枠を区切った予約制の荷積み・荷下ろしシステムの導入
- 一貫パレチゼーションの推進
荷物をパレット単位で管理し、積み替えをせずに配送する
荷主への働きかけと情報共有については、協力による荷主側のメリット(物流の安定化、企業イメージ向上など)も提示することが重要です。
2025年現在、荷主との協力体制構築に成功した企業では、平均待機時間が大幅に短縮され、ドライバー1人あたりの労働時間削減を実現した事例も報告されています。
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4.働き方改革で成果を上げた運送企業の成功事例

規制適用から1年が経過し、様々な企業が独自の取り組みで成果を上げています。実際の成功事例から学ぶことで、自社に適した対策のヒントが得られるでしょう。
奈良県合同陸運:労務管理の適正化で働きやすさを実現
奈良県合同陸運株式会社では、勤怠管理システムの導入により「運行管理」と「労働時間管理」を分離し、正確な労働時間把握を実現しました。
デジタルタコメーターでは管理できなかった日常点検や点呼、運転日報作成などの時間も適切に把握できるようになり、手待ち時間と休憩時間の区別も明確になりました。
また、1ヶ月単位の変形労働時間制への変更により次月の業務量に応じたシフト作成が可能になりました。
年次有給休暇の入社時付与や基本給中心の給与体系への見直しにより、ドライバーからは「以前より休息時間や休日も取りやすくなり、家族との時間が十分に取れる」と好評です。
これらの取り組みにより、2024年の時間外労働上限規制を見据えた安全で効率的な運行体制が構築されています。
菱木運送:システム活用で改善基準告示の遵守を実現
菱木運送株式会社は、独自開発した「乗務員時計」システムを導入し、改善基準告示遵守をリアルタイムにサポートしています。
このスマートフォンベースのシステムでは、「時計で時間を確認するように」改善基準告示を守るために必要な時間情報が自動的に算出され、ドライバーと運行管理者に提供されます。
カウントダウン方式の残余時間表示により、ドライバーが改善基準告示を詳しく理解していなくても自己管理が可能です。
また、待機時間のデータをシステムで収集・分析することで荷主との交渉材料とし、待機時間削減と労働時間短縮を実現しています。
「指導」ではなく「サポート」の発想に基づくこのシステムにより、運転に集中できる環境が整い、事故発生率が大幅に減少。
自動車保険の割引率はMAX75%で継続5年目を迎えるなど、安全性向上と経営効率化の両立に成功しています。
群馬小型運送:新卒採用と多様な働き方で人材確保
群馬小型運送株式会社は、トラックドライバー不足の課題に対応するため、8年前から高卒・大卒の新規採用に踏み切り、働きやすい環境整備を進めました。
従来の電話連絡をスマホアプリによるビジネスチャットに切り替え、情報共有の効率化と時短を実現。年5日の計画年休制度を導入し、子どもの学校行事参加も積極的に推進しています。
また残業の事前申請制導入により、「今日は何時まで残業が必要」と上司に申請し、その時間内に業務を終わらせる意識が向上しました。
さらに定年を60歳から65歳に引き上げてベテランの経験を活かす一方で、女性専用のパウダールームや専用営業車の配備、「プチ社食」制度など多様な働き方支援も実施。
これらの取り組みにより、新卒採用は毎年度1~3名で順調に推移し、「一人で抱えていたマルチタスクが解消され、1~2時間早く帰れるようになった」との声も聞かれ、人材確保と働きやすさの両立に成功しています。
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5.今すぐ始められる働き方改革アクションプラン

働き方改革を成功させるには具体的な計画と実行が不可欠です。すでに時間外労働上限規制が適用されている中、迅速な対応が求められています。効果的なアクションプランを立てましょう。
短期・中期・長期に分けた実施計画の立て方
働き方改革を成功させるためには、段階的なアプローチが重要です。これらの計画を立てる際は、各フェーズで具体的な数値目標を設定し、定期的にモニタリングしましょう。
- 短期(3ヶ月以内)→現状分析と「見える化」に注力
- ・デジタルタコグラフや勤怠管理システムを導入し、ドライバーごとの労働時間を可視化
・36協定の内容確認と必要に応じた見直し
・社内における働き方改革の目的と方針の共有
- 中期(4ヶ月~1年)→業務プロセスの改善と効率化の推進
- ・配車計画の最適化、シフト見直し、業務の標準化、荷主とのコミュニケーション改善などを計画的に実施
・特に効果が高いと思われる施策から順に取り組むことで、早期に成果を実感できる
- 長期(1年以上)→テクノロジーの本格導入や人材育成システムの構築、ビジネスモデルの抜本的な見直し
- ・物流DXの推進、ドライバー育成プログラムの確立、多様な働き方に対応した評価・報酬制度の整備
社内推進体制の構築方法と経営層の関わり方
働き方改革を組織全体で推進するためには、適切な推進体制の構築が不可欠です。
まず、経営層を含む「働き方改革推進委員会」を設置しましょう。この委員会には経営者または役員クラスが委員長として参加し、経営課題としての重要性を組織全体に示すことが重要です。
委員会メンバーには、経営層だけでなく、現場管理者やドライバー代表、労働組合代表なども含め、多様な視点を取り入れられる構成にします。
次に、実務レベルでの推進役として「働き方改革推進チーム」を編成します。このチームは日常的に改革を推進し、データ収集・分析、施策の具体化、進捗管理などを担当します。
人事部や総務部だけでなく、配車担当や現場ドライバーからも人選し、実務に即した改革を進めることが重要です。
経営層は改革の方向性や基本方針を示すだけでなく、定期的な進捗確認や成果の評価、必要なリソースの配分判断などを通じて、継続的に関与すべきです。
特に「経営トップからのメッセージ」は改革を推進する上で強力な原動力となります。
コスト増加を抑えながら改革を進めるための予算配分術
働き方改革を進める上で多くの企業が直面する課題が、改革に伴うコスト増加への対応です。特に中小運送企業では、限られた予算内で最大の効果を上げる予算配分が重要となります。
まず、労働時間分析から得られたデータを基に、「投資対効果が高い施策」を見極めましょう。
例えば、特定の荷主での待機時間が全体の30%を占めているなら、その荷主との調整に優先的にリソースを割くといった具体的な判断ができます。
また、一度に全てを改革するのではなく、段階的な投資計画を立てることも重要です。
初期段階では投資額が少なく即効性のある施策(シフト見直しや標準作業手順書の作成など)に集中し、そこで生まれた余力や収益改善分を次の投資に回すという好循環を作り出しましょう。
テクノロジー投資においては、初期費用を抑えるクラウドサービス(月額課金型)の活用や、必要最小限の機能から始めて段階的に拡張していく「スモールスタート」の発想も有効です。

また「共同投資」の可能性も検討すべきです。さらに、国や自治体による働き方改革関連の助成金・補助金を積極的に活用することも重要です。
6.働き方改革を通じた運送業界の持続可能な未来への展望

働き方改革は運送業界の構造的課題を解決し、持続可能な未来を築く重要な転換点です。単なる法令対応ではなく、業界全体の発展に向けた取り組みとして捉えましょう。
2024年以降のビジネスモデル再構築のポイント
2024年以降の運送業界では、従来の「長時間労働前提」のビジネスモデルからの脱却が不可欠です。新しいビジネスモデル再構築のポイントは主に3つあります。
①「量」から「質」への転換
単純な配送量や運行距離だけでなく、定時性や安全性、環境負荷の低さなど「質的価値」を評価・差別化要素とするビジネスモデルへと転換していく
具体例:定時性に高い価値を置く荷主向けの時間指定サービスや、環境配慮型の低炭素配送など、付加価値の高いサービス開発を推進する
②「単独型」から「連携型」への転換
運送事業者同士の連携や、荷主・倉庫業者などサプライチェーン全体での協力体制構築により、リソースを効率的に活用する「共創型」のビジネスモデルを目指す
具体例:地域の運送会社同士で配送エリアを補完し合う「配送連携」や、異なる強みを持つ企業同士の事業統合
③「アナログ型」から「デジタル型」への転換
AIやIoTなどのデジタル技術を駆使し、高度な最適化と効率化を実現する新たなビジネスモデルの構築に取り組む
具体例:AI配車システムの導入、車両動態管理のデジタル化、電子取引と納品のペーパーレス化など
働き方改革を競争優位性に変える経営戦略
働き方改革を単なるコスト増要因と捉えるのではなく、競争優位性を生み出す戦略的投資と位置づけることが重要です。
まず、「人材獲得・定着の差別化」戦略を考えましょう。働きやすい環境を整えることで、深刻なドライバー不足の中でも優秀な人材を確保・定着させる強みが生まれます。
具体的には、「休みがしっかり取れる」「家族との時間が確保できる」「身体的負担が少ない」といった労働環境の魅力を採用活動で積極的にアピールし、業界内での「選ばれる企業」としてのブランドを確立します。
次に「サービス品質向上」戦略があります。無理のない労働環境は、ドライバーの安全運転や丁寧な荷扱い、顧客対応の質向上につながります。
これが事故率低下や荷物破損の減少、顧客満足度の向上といった形で競争力に直結するのです。
また、「荷主との関係強化」戦略も重要です。コンプライアンス意識の高い大手荷主は、法令遵守体制が整っている運送会社を優先的に選ぶ傾向にあります。
働き方改革への積極的な取り組みをアピールすることで、長期的・安定的な取引関係を構築できるでしょう。
▼ドライバー採用戦略
以下の記事では、運送業界のドライバー不足の実態と採用成功のための戦略を解説しています。採用担当者がすべきことや専門サービスの活用法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
これからの一歩を踏み出すための具体的行動リスト
働き方改革という大きな変革を前に、「どこから手をつければいいのか」と戸惑う経営者も多いでしょう。ここでは、改革の第一歩を踏み出すための具体的な行動リストを示します。
働き方改革の行動リスト
- 経営の意思としての宣言
全社員に向けて働き方改革に取り組む決意を明確に伝え、トップのコミットメントを示す - 現状把握のための労働時間調査
デジタルタコグラフやGPS機能付き勤怠管理システムなどを活用し、ドライバーの実労働時間を正確に把握する - 改革推進チームの結成
現場を知る管理者とドライバー代表を含めた横断的なチームを編成し、改革推進の中核を担ってもらう - 荷主への説明と協力依頼
主要荷主に対して上限規制の現状と自社の取り組み方針を説明し、待機時間削減などの協力を依頼する
改革は一朝一夕に成し遂げられるものではありませんが、これらの具体的なアクションを着実に実行していくことで、持続可能な未来へと向かう道筋が見えてくるはずです。
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7.持続可能な運送業への変革を今こそ始めよう
運送業界の2024年問題は、現在進行形の大きな挑戦である一方、業界の体質改善と持続的成長への転換点でもあります。
本記事で紹介した「労働時間の可視化」「シフト・配車計画の最適化」「テクノロジー導入」「ドライバーの多能工化」「荷主との協力体制構築」という5つのステップを段階的に実施することで、法令遵守と業績維持の両立が可能になります。
働き方改革は単なるコスト増要因ではなく、人材確保・定着、生産性向上、企業価値向上をもたらす戦略的投資です。
まだ対応が進んでいない企業も、今日から一つでも実践できるアクションを選び、持続可能な運送業の未来に向けた第一歩を踏み出しましょう。