人材採用の多様化が進む中、「第二新卒採用」が注目を集めています。
新卒でも中途でもない、独特の採用区分である第二新卒には、即戦力としての期待と若手人材ならではの成長可能性が共存しています。
本記事では、第二新卒とはなにか、採用のメリットやデメリット、効果的な採用戦略から育成方法まで、人事担当者が知っておくべき情報を詳しく解説します。
- 第二新卒採用の具体的なメリット・デメリットと、新卒・中途採用との違い
- 業界別の最新の採用動向と、成功のための実践的な採用戦略
- 採用から定着までの一貫した人材育成プログラムの設計方法
1.第二新卒とは何?定義と特徴を解説
第二新卒という採用区分について、基本的な定義から既存の採用形態との違いまで、人事担当者が押さえておくべきポイントを詳しく解説します。
第二新卒とはいつまで?
第二新卒とは、学校卒業後に就職し、3年以内に転職活動する若手人材を指します。年齢層は主に20代前半から半ばで、高校卒や大学卒など、様々な学歴背景を持つ人材が含まれます。
厚生労働省の調査によると、新卒入社後3年以内の離職率は約3割に上り、この層が第二新卒市場の中心となっています。新卒一括採用とは異なる採用区分として位置づけられ、企業にとって重要な人材供給源となっているのが現状です。
参考:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)|厚生労働省
新卒採用との違いと特徴
第二新卒採用は、従来の新卒採用とは明確に異なる特徴を持っています。
ビジネスマナーや基本的な仕事の進め方を理解している場合が多く、新入社員研修の一部を省略できる可能性があります。
また、実際の職場経験を経ているため、仕事に対する理解や期待値がより現実的であり、ミスマッチによる早期離職のリスクを低減できる可能性が高いとされています。
一方で、前職での経験や価値観が形成されているため、組織への適応には新卒とは異なるアプローチが必要です。
既卒との違いと特徴
既卒と第二新卒は、しばしば混同されがちですが、重要な違いがあり、採用後の教育プログラムや期待される役割に大きく影響します。
第二新卒 | 一度は正社員として就職した経験を持つ人材 |
既卒 | 学校卒業後に正社員としての就業経験がない人材 |
第二新卒は職場での基本的なルールやコミュニケーションスキルを身につけているため、既卒と比較して職場への適応がスムーズであり、より短期間での戦力化が期待できます。
また、実務経験を持つことで、業界や職種に対する理解も深く、より現実的なキャリアプランを描けることも特徴の一つです。
2.第二新卒採用のメリットとデメリット
企業が第二新卒採用を検討する際に、その利点と課題を正確に理解することは非常に重要です。以下では、それぞれの側面について詳しく解説していきます。
企業にとってのメリット
第二新卒採用のメリット
- 基本的なビジネスマナーを身につけている
- 新卒に近い柔軟性がある
- 即戦力が期待できる
- 採用後のミスマッチが起こりにくい
第二新卒採用には、企業にとって複数の明確なメリットがあります。最大の利点は、基礎的なビジネススキルを持ちながらも、新卒に近い柔軟性を併せ持つ人材を獲得できることです。
実務経験があることで即戦力としての活躍が期待でき、かつ給与水準は中途採用と比較して抑えられる傾向にあります。
また、通年採用が可能なため、企業の人材ニーズに応じて柔軟な採用活動が行えます。さらに、実際の就業経験があることで、職務内容や企業文化への理解が深く、採用後のミスマッチが起こりにくいという特徴も持っています。
考慮すべきデメリット
第二新卒採用にも、いくつかの注意すべき点があります。最も懸念されるのは、早期退職のリスクです。
一度転職を経験している人材であるため、条件面での折り合いがつかない場合や環境に適応できない場合に、再度の転職を選択する可能性があります。
また、前職での経験や価値観が強く根付いている場合、自社の企業文化や業務方針への順応に時間がかかる可能性があります。
さらに、新卒一括採用のような大規模な採用活動が難しく、優秀な人材の確保に時間と手間がかかることも考慮すべき点となります。
コスト面での比較
第二新卒採用のコストについて、新卒採用や中途採用と比較して考察します。
採用コストの面では、新卒一括採用のような大規模な採用活動が不要なため、説明会や採用イベントにかかる費用を抑えることができます。
教育研修のコストも、基礎的なビジネススキルを持っているため、新卒採用と比較して低く抑えられる傾向にあります。
一方で、個別の面接や選考にかかる時間的コストは中途採用と同程度必要となり、また、人材紹介会社を利用する場合は紹介手数料が発生します。
ただし、即戦力として期待できることから、長期的な視点では投資対効果の高い採用方法と言えます。
3.第二新卒市場の現状と傾向
第二新卒市場は近年大きな変化を遂げており、その動向を理解することは効果的な採用戦略を立てる上で重要です。以下では、市場の現状と主要な傾向について詳しく解説していきます。
市場規模と動向
第二新卒市場は年々拡大傾向にあり、特に近年は新卒一括採用の見直しや働き方改革の影響で、さらなる成長が見込まれています。
厚生労働省の統計によると、新卒入社後3年以内の離職率は高卒で約4割近く、大卒で約3割となっており、この層が第二新卒市場の主な供給源となっています。
キャリアチェンジに対する社会的な認識も変化し、第二新卒としての転職がキャリア形成の一つの選択肢として定着してきています。
さらに、企業側も人材の多様性を重視する傾向が強まり、第二新卒採用を積極的に行う企業が増加しています。
業界別の採用状況
業界によって第二新卒採用への取り組み方は大きく異なります。IT・通信業界やサービス業では、即戦力となる第二新卒の採用に積極的な企業が多く見られます。
特に、技術系職種では、基礎的なスキルを持つ第二新卒の需要が高まっています。
一方、製造業や金融業など、従来の新卒一括採用を重視してきた業界でも、人材の多様化を図る観点から第二新卒採用を強化する動きが出てきています。
各業界の採用動向は、景気変動や技術革新の影響を受けながら、常に変化し続けている状況です。
離職率と再就職の実態
第二新卒の離職と再就職に関する実態を把握することは、採用戦略を立てる上で重要です。
調査によると、第二新卒として入社した社員の定着率は、業界や職種によって大きく異なります。特に、前職での経験を活かせる職種への転職では、比較的高い定着率が報告されています。
一方で、全く異なる業界への転職の場合は、環境への適応に時間がかかり、再度の転職につながるケースも見られます。
採用時には候補者の前職経験と、希望する職種とのマッチングを慎重に検討しましょう。
4.効果的な第二新卒採用戦略
第二新卒採用を成功に導くためには、適切な戦略と実践的なアプローチが不可欠です。ここでは、採用から育成までの具体的な方法について解説していきます。
採用基準の設定方法
効果的な第二新卒採用を実現するためには、明確な採用基準の設定が不可欠です。特に重要なのは、前職での経験や習得したスキルの評価基準、そして自社の企業文化との適合性を見極める基準です。
採用基準を設定する際は、単なる職務経験だけでなく、学習意欲や成長可能性、コミュニケーション能力なども重要な評価ポイントとして考慮します。
また、部署や職種ごとに求める要件を細かく設定し、選考過程でそれらを適切に評価できる仕組みを構築することが、採用成功の鍵となります。
効果的な募集方法
第二新卒の採用では、従来の新卒採用とは異なる募集アプローチが必要です。複数の募集チャネルを組み合わせて効果的に募集しましょう。
第二新卒採用の効果的なアプローチ
- 人材紹介会社の活用
- 転職サイトの活用
- SNSを活用した情報発信
特に、第二新卒向けの専門求人サイトや、業界特化型の転職サイトの活用は、より適切な人材とのマッチングを可能にします。
また、自社のキャリア開発支援制度や研修プログラムなど、第二新卒特有のニーズに応える情報を積極的に発信することで、より質の高い応募者を集めることができます。
面接での評価ポイント
第二新卒の面接では、通常の新卒面接とは異なる評価ポイントに注目する必要があります。下記のヒアリングポイントを丁寧に確認することが重要です。
面接時のヒアリングポイント
- 前職での具体的な経験や習得したスキル
- 志望動機や転職理由
- 将来のキャリアビジョン
また、自社の企業文化や価値観との適合性、チームワークやコミュニケーション能力なども重要な評価ポイントとなります。
面接では、具体的な行動事例を聞き出すケースインタビューを取り入れるなど、より実践的な評価方法を採用することで、候補者の実力と適性を正確に判断することができます。
5.第二新卒の育成と定着化
採用後の育成と定着化は、第二新卒採用の成功において極めて重要な要素です。適切な育成プログラムと支援体制の構築について解説していきます。
効果的な研修プログラム
第二新卒向けの研修プログラムは、既存の経験とスキルを活かしつつ、新たな環境での成長を支援する内容が求められます。
基本的なビジネススキルは既に習得していることを前提に、自社特有の業務知識や専門スキルの習得に重点を置いたプログラムを設計します。
また、メンター制度の導入や、同期入社の社員同士のネットワーク作りを支援する取り組みも効果的です。研修期間は個人の経験や適性に応じて柔軟に設定し、段階的なスキルアップを図ることが望ましいとされています。
キャリアパスの設計
第二新卒社員の長期的な定着を図るためには、明確なキャリアパスの提示が重要です。入社後の成長過程や昇進・昇格の基準を明確にし、目標設定とその達成に向けたサポート体制を整備します。
特に、前職での経験を活かせる配属先の選定や、スキルアップのための機会提供など、個々の背景に配慮したキャリア開発支援が求められます。
また、定期的なキャリア面談を実施し、本人の希望と会社の期待値のすり合わせをすることで、より効果的なキャリア開発が可能となります。
職場定着のための施策
第二新卒社員の定着率を高めるためには、職場環境の整備と支援体制の構築が不可欠です。
新しい環境への適応をサポートするメンター制度の導入や、同期入社社員との交流機会の創出など、コミュニケーションを促進する施策が効果的です。
また、前職での経験を活かせる業務アサインメントや、新しいスキル習得の機会提供など、モチベーション維持のための取り組みも重要です。
長期的な定着を図るためには、定期的な面談や意見交換の機会を設け、課題や不安の早期発見と解決に努めることが大切です。
6.採用成功のためのチェックリスト
第二新卒採用を効果的に進めるためには、準備から実施、フォローアップまでの各段階で重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、採用成功に向けた具体的なチェックポイントを解説していきます。
採用前の準備事項
採用活動を開始する前に、組織として必要な準備を整えることが重要です。まず、採用目的の明確化と、必要な人材要件の定義を行います。
具体的には、募集職種や人数、求める経験やスキルレベルの設定、予算の確保などを綿密に計画します。また、選考プロセスの設計や面接官の教育も重要な準備事項となります。
さらに、受け入れ部署との連携体制の構築や、入社後の教育プログラムの準備など、採用後を見据えた体制づくりも欠かせません。
これらの準備を怠ると、採用後のミスマッチや早期離職のリスクが高まる可能性があります。
採用時の確認ポイント
第二新卒の選考時には、特有の確認ポイントに注意を払う必要があります。前職での具体的な経験内容や、習得したスキル、退職理由などを丁寧に確認することが重要です。
また、自社の企業文化との適合性や、キャリアビジョンの一致度なども重要な判断材料となります。面接では、コミュニケーション能力や学習意欲、チームワーク力などの soft skills も重点的に評価します。
さらに、給与や待遇面での希望と、自社で提供可能な条件とのすり合わせも、この段階で確実に行うことが求められます。
採用後のフォローアップ
採用決定後は、入社までの期間と入社直後の支援体制が特に重要になります。
内定者フォローとして、会社情報の提供や、配属部署との事前コミュニケーションの機会を設けることで、スムーズな職場適応を促進できます。
入社後は、定期的な面談を実施し、業務の習熟度や職場環境への適応状況を確認します。また、メンター制度や同期社員とのネットワーク作りなど、社内での人間関係構築をサポートする施策も効果的です。
キャリア開発計画の策定と、その実現に向けた具体的な支援も、重要なフォローアップ要素となります。
7.第二新卒採用で実現する人材戦略の未来
第二新卒採用は、新卒と中途採用の特徴を併せ持つ採用手段として注目されています。社会人経験による即戦力性と、若手特有の成長性を兼ね備えた人材の確保が可能な点が強みです。
ただし、採用を成功させるには、選考基準の設定から入社後の育成、定着化まで、包括的な戦略が必要です。特に、応募者の経験・価値観と企業文化との適合性を見極めることが重要です。
第二新卒採用を効果的に活用することで、人材の多様性向上と必要な戦力の確保を同時に実現できます。