離職率は企業の人材マネジメントを評価する重要な指標です。しかし、離職率の改善方法について悩む企業も少なくありません。
本記事では、厚生労働省の最新データをもとに、日本企業の平均離職率や業界別の特徴を解説。
さらに、離職率が高くなる原因や具体的な改善施策まで、人事担当者が知っておくべき情報をわかりやすくお伝えします。
- 日本企業の平均離職率と業界別の実態、計算方法
- 離職率が高くなりやすい企業の特徴と抱えるリスク
- 具体的な離職率改善のための実践的な施策
1.そもそも離職率とは?
企業経営において重要な指標である離職率について、その定義から計算方法、評価の仕方まで詳しく見ていきましょう。
離職率の定義とは
離職率とは、ある期間における従業員の退職者数が全従業員数に占める割合を示す指標です。この数値は、企業の人材マネジメントの健全性を評価する上で重要な基準となります。
一般的に年単位で計算されることが多く、その企業の労働環境や従業員満足度を反映する指標として活用されています。
特に近年では、働き方改革や人材戦略の文脈で、より注目されるようになってきました。
離職率が高いからと言って必ずしも悪い企業ではない
離職率の高さは、一概に企業の評価を下げる要因とはならないことを理解する必要があります。
例えば、ベンチャー企業やスタートアップでは、事業の成長に合わせて必要な人材が変化するため、自然と人材の流動性が高くなります。
また、企業の成長期における組織再編や新規事業への挑戦に伴う戦略的な人材の入れ替えにより、離職率が上昇することもあります。
さらに、業界特性や企業規模、事業のライフサイクルによっても適正な離職率は異なってきます。
重要なのは、単純に数値だけを見るのではなく、その背景にある要因を正確に理解することです。
離職率の計算方法
離職率の基本的な計算式は「年間離職者数÷期初の従業員数×100」です。ただし、この計算方法は一般的な例であり、企業によって期間や対象者の定義が異なる場合があります。
また、正社員のみを対象とするか、派遣社員やパートタイムも含めるかなど、計算の範囲設定も重要なポイントとなります。
以下に、新卒採用者・中途採用者の算出方法についても解説します。
基本的な年間離職率の算出
期初在籍者数に対する年間退職者の割合を計算
- 計算式:年間離職者数 ÷ 期初従業員数 × 100
- 例)従業員90名中10名が退職 = 11%
新卒採用者の定着率評価
入社後3年以内の新卒社員の離職状況を把握
- 計算式:3年以内退職者数 ÷ 新卒採用者数 × 100
- 例)新入社員10名中5名が退職 = 50%
中途採用者の早期離職分析
過去5年間における中途入社1年以内の離職を追跡
- 計算式:1年以内退職者数 ÷ 中途採用総数 × 100
- 例)採用10名中5名が1年以内に退職 = 50%
これらの指標は、目的に応じて使い分けることで、より詳細な人材定着状況の分析が可能になります。企業独自の基準で定義・運用されることが一般的です。
2.日本企業の平均離職率の実態
日本の労働市場における離職率の現状について、全体的な傾向から業界別の特徴まで詳しく見ていきましょう。
全体の平均離職率は15.4%
厚生労働省の調査によると、日本企業全体の平均離職率は15.4%となっています。
この数値は、正社員とパートタイム労働者を合わせた全体の平均です。
特に注目すべき点として、正社員の離職率が11.3%であるのに対し、パートタイム労働者は23.6%と大きな差があることが分かります。
この差は、雇用形態による労働条件や職場への帰属意識の違いを反映していると考えられます。
業界別の平均離職率を比較
業界によって離職率には大きな差があります。サービス業、特に宿泊業・飲食サービス業では26.9%と高い離職率を示しています。
一方、製造業や建設業では比較的低い傾向にあります。これらの違いは、業務の特性や労働環境、キャリアパスの違いなど、様々な要因が影響していると考えられます。
各業界特有の課題や特徴を理解することが、効果的な対策を講じる上で重要です。以下に産業別の入職率・離職率を表にまとめます。
産業 | 入職率 | 離職率 |
---|---|---|
鉱業・採石業・砂利採取業 | 9.3% | 9.2% |
建設業 | 10.0% | 10.1% |
製造業 | 10.0% | 9.7% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 8.3% | 10.4% |
情報通信業 | 11.7% | 12.8% |
運輸業・郵便業 | 10.1% | 10.3% |
卸売業・小売業 | 14.9% | 14.1% |
金融業・保険業 | 8.4% | 10.5% |
不動産業・物品賃貸業 | 15.0% | 16.3% |
学術研究・専門・技術サービス業 | 11.0% | 11.5% |
宿泊業・飲食サービス業 | 32.6% | 26.6% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 32.8% | 28.1% |
教育・学習支援業 | 16.0% | 14.8% |
医療・福祉 | 16.0% | 14.6% |
複合サービス事業 | 6.2% | 7.8% |
サービス業(他に分類されないもの) | 22.5% | 23.1% |
※有効回答事業所数
- 上半期:9,198事業所
- 下半期:8,643事業所
新入社員の平均離職率はどれくらい?
若手人材の定着状況を学歴別に分析すると、入社後3年以内の離職率に明確な差が見られます。
高卒社員の場合、1年目で15.1%、2年目で26.8%、3年目には37.0%まで上昇。
一方、大卒社員は1年目10.6%、2年目21.9%、3年目で32.3%と、高卒より若干低い水準で推移しています。
注目すべきは、いずれの学歴でも毎年約10%ずつ離職率が上昇する点です。この傾向は過去10年間ほぼ変化がなく、入社後の早期支援体制の構築が企業の重要課題となっています。
特に1年目の定着率向上が、長期的な人材育成の鍵を握っているといえます。
3.離職率の平均が注目されている背景
近年、離職率が企業経営における重要な指標として注目されている理由について解説します。
働き方や転職への意識が変化してきた
従来の終身雇用を前提とした雇用システムが大きく変化し、特に若手世代を中心に柔軟なキャリア形成を志向する傾向が強くなっています。
成果主義の浸透や働き方改革の進展により、個人のキャリア選択の幅が広がり、職場環境や待遇面での改善を求めて転職を選択するケースが増加しています。
この変化は、単なる雇用形態の多様化にとどまらず、働く人々の価値観そのものの転換を示唆しています。
企業側も、この潮流を踏まえ、優秀な人材の確保・定着のために、従来の年功序列型から能力・成果重視型の人事制度への移行を進めており、離職率は人材戦略における重要な指標となっています。
少子高齢化による労働人口の減少
急速な高齢化と出生率低下により、日本の労働市場は大きな転換点を迎えています。
特に団塊世代と団塊ジュニア世代の相次ぐ退職により、経験豊富な人材の損失と若手人材の不足という二重の課題に直面しています。
このような環境下では、新規採用による人材補充が従来以上に困難になることが予想され、既存社員の維持・定着が企業の存続に直結する重要課題となっています。
そのため企業は、離職率の動向を注視するとともに、職場環境の改善や人材育成制度の充実など、社員の定着率を高めるための施策に積極的に取り組んでいます。
採用規模が世界規模になってきた
少子高齢化に伴う労働人口の減少により、企業の人材確保が年々困難になっています。
このような状況下で、企業は国内の人材だけでなく、グローバルな人材市場からの採用が拡大しています。
優秀な外国人材の獲得や、国内の人材の流出防止において、企業の評判や働きやすさは重要な要素となり、企業選びの指標の一つとして離職率が注目されています。
特に、高度なスキルを持つグローバル人材や経験豊富な中途採用人材にとって、離職率は企業選択の際の重要な判断材料となっており、企業側も人材確保戦略の一環として離職率の管理に力を入れています。
人材が定着せず仕事の質が低下するリスクの可能性
働き方の多様化に伴い、転職のハードルが下がった現代において、頻繁な人材の入れ替わりは企業にとって深刻な課題となっています。
特に、専門性の高い業務や長期的な経験が必要な職種では、熟練社員の離職が業務品質の著しい低下を招くリスクがあります。
また、新入社員の教育・育成には多大な時間とコストが必要となり、その投資が実を結ぶ前に離職されることは、企業の競争力維持に大きな影響を及ぼします。
さらに、組織に蓄積された暗黙知や業務ノウハウの継承が途切れることで、長期的な企業価値の低下につながる可能性も懸念されています。
4.離職率の平均が高くなる企業の特徴6選
離職率が高くなりやすい企業には、いくつかの共通する特徴が見られます。これらの要因を理解することが、効果的な対策の第一歩となります。
離職率平均が高い企業の特徴①働き方に柔軟性がない
働き方改革が進む現代において、固定的な勤務体系にこだわり続ける企業では離職率が上がる原因になっています。
特にコロナ禍を経て一般化したリモートワークの制限や、画一的な出社要請は、従業員の不満を高める主要因となっています。
注目すべきは、育児や介護との両立を目指す社員層での離職傾向です。テレワークやフレックスタイムなど、多様な働き方のニーズに応えられない企業からは、優秀な人材が柔軟な勤務体制を持つ企業へと流出するケースが増加しています。
ワークライフバランスを重視する現代では、働き方の選択肢を増やすことが人材定着の鍵となっています。
離職率平均が高い企業の特徴②長時間労働や残業が多い
長時間労働や残業が常態化している企業では、必然的に離職率が高くなる傾向が見られます。過度な時間外労働や休日出勤は、従業員の心身に大きな負担を与え、健康状態を悪化させます。
また、慢性的な長時間労働は、個人の生活時間を圧迫し、ワークライフバランスを崩壊させてしまいます。
その結果、仕事への不満が蓄積され、生産性の低下を招くとともに、最終的には離職という形で表れることが多くなります。
このような悪循環を防ぐためにも、適切な労働時間管理が重要となります。
離職率平均が高い企業の特徴③人事評価制度があいまい
評価基準が不明確で、成果が適切に処遇に反映されない企業では、社員のキャリア展望が描きにくく、離職率の上昇につながっています。
特に、日々の努力や業績が昇進や報酬に結びつかないと感じる従業員は、より公平な評価システムを持つ企業への転職を検討する傾向が強まっています。
また、評価プロセスの透明性が欠けていると、不当な評価を受けているという不信感が醸成され、職場全体のモチベーション低下を引き起こします。
単なる個人の不満にとどまらず、組織全体の生産性低下や、優秀な人材の流出という深刻な問題に発展するリスクをはらんでいます。
離職率平均が高い企業の特徴④社員のやる気が低迷している
組織全体のモチベーションが低下している企業では、離職の連鎖が起こりやすい傾向にあります。
目標設定が不明確であったり、仕事の意義が見出せないといった状況が続くと、従業員の帰属意識が低下し、より良い機会を求めて離職を選択する可能性が高まります。
離職率平均が高い企業の特徴⑤育成体制が整っていない
育成プログラムが不十分だと、特に入社間もない若手社員の早期離職リスクを高めています。
具体的な指導方針やマニュアルが整備されていないため、教育担当者によって指導内容や方法にばらつきが生じ、新入社員の成長を妨げる要因となっています。
また、明確なキャリアパスが示されなかったり、教育不足によるスキルアップの機会も限られているのではないか?という、将来への不安や焦りを感じる社員が増加してしまいます。
結果として、より充実した研修制度や成長機会を提供する企業への転職を選択するケースが多発しています。これは単なる人材流出にとどまらず、組織全体の競争力低下にもつながる深刻な課題となっています。
離職率平均が高い企業の特徴⑥ハラスメントが多い
パワハラやセクハラなどのハラスメントが適切に対処されない職場環境では、離職率の急激な上昇が見られます。
被害を受けた社員は心身の健康を損なうだけでなく、最終的には退職を選択せざるを得ない状況に追い込まれるケースが後を絶ちません。
さらに深刻なのは、ハラスメントの存在が職場全体の雰囲気を悪化させ、直接の被害者以外の社員の離職も誘発する点です。
特にマタニティハラスメントやモラルハラスメントなど、見えにくい形での嫌がらせは、企業の信頼性を根本から揺るがし、優秀な人材の流出を加速させる要因となっています。
5.離職率平均が高い企業が抱えるリスク
離職率が高い状態が続くことで、企業はさまざまなリスクに直面することになります。これらのリスクを認識することが、対策の重要性を理解する上で重要です。
採用コストが膨張する
離職率の高さは、企業に採用コストの増加をもたらします。新たな人材を採用するためには、求人広告費用や採用イベントの開催費、面接官の人件費など、多くの直接的なコストが発生します。
さらに、採用後の研修プログラムの実施や、新入社員が業務に習熟するまでの教育期間における生産性の低下なども、間接的なコストとして企業の財務を圧迫します。
また、欠員期間中は既存の従業員の業務負担が増加し、組織全体の生産性低下にもつながります。このような採用サイクルが頻繁に発生することは、企業の持続的な成長を妨げる要因となります。
従業員の負担が増加する
離職者の発生は、残された従業員に大きな負担をもたらします。特に、一度に複数の離職者が出たり、頻繁に離職が発生したりする場合、退職者が担当していた業務を既存の従業員が分担して対応せざるを得なくなります。
このような過度な負担の増加は、従業員の心身の疲労を招き、さらなる離職を誘発する危険性があります。結果として、組織全体の生産性低下や職場環境の悪化につながる可能性があります。
企業の評判が悪化
高い離職率は、企業の評判に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に近年はSNSの普及により、企業の労働環境や職場の実態に関する情報は急速に拡散されやすくなっています。
離職率の高さは、労働条件の悪さや組織運営の問題点を示唆するものとして捉えられ、「働きにくい企業」というレッテルを貼られかねません。
そのような評判は、新たな人材の採用活動において大きな障害となり、優秀な人材の確保が困難になる可能性があります。結果として、企業の持続的な成長や競争力の維持に支障をきたすリスクがあります。
企業にノウハウが定着しない
頻繁な離職は、企業にとって貴重な知識やノウハウの流出につながる深刻な問題です。
特に、長年の経験で培われた技術的なスキルや、顧客との信頼関係、業務上の暗黙知などは、文書化が困難であり、離職とともに失われてしまいます。
知識やスキルの継続的な流出は、企業の競争力を弱め、持続的な成長を妨げる要因となります。結果として、企業の発展に必要な専門性やノウハウが組織内に定着せず、業績向上の障壁となってしまいます。
6.離職率平均を下げる対策例を紹介!
離職率を改善するための具体的な施策について、実践的な方法を紹介します。これらの施策は、企業の状況に応じて適切に選択し、組み合わせることが重要です。
①働きやすさを追求する
働きやすい職場環境の整備は、離職率低下に直接的な効果をもたらします。
特に、多様化する働き方のニーズに応えるため、柔軟な勤務制度の導入が重要です。また、定期的な面談の実施により、従業員の不満や悩みを早期に発見し解決することができます。
さらに、ワーク・ライフ・バランスを重視した制度の導入は、従業員の満足度を高め、長期的な定着につながります。
職場環境の改善は、単なる福利厚生の充実だけでなく、企業の持続的な成長のための重要な投資として捉える必要があります。
具体的な施策例
- テレワーク制度の導入
- フレックスタイム制の活用
- 短時間勤務制度の整備
- 定期的な1on1面談の導入
- 有給休暇取得の促進
②企業理念の浸透度を高める
企業理念やビジョンへの共感は、従業員の帰属意識を高め、長期的な定着を促進する重要な要素です。
企業の存在意義や目指すべき方向性を明確に示し、それを従業員と共有することで、自社で働く意義や誇りを感じられる環境を作ることができます。
また、経営層から従業員へ定期的にメッセージを発信し、企業理念に基づいた成功事例を共有することで、理念の実践的な理解を促進することができます。
企業理念の浸透は、単なるスローガンの共有ではなく、日常的な業務の中で実感できる形で推進することが重要です。
具体的な施策例
- 社内報での企業ビジョンの定期的な発信
- クレドカードの作成と配布
- 定期的な理念研修の実施
- 経営層による企業ビジョン説明会の開催
- 理念に基づいた成功事例の共有会
※クレドカードは、企業の理念や価値観、行動指針を社員が常に携帯できるよう、カード形式にまとめたものです。
③部署間の壁を取り払う取り組み
部署間の壁を取り払い、組織全体のコミュニケーションを活性化することは、離職率の低下に大きな効果をもたらします。
異なる部署の社員が交流する機会を意図的に創出することで、社内の人間関係が豊かになり、問題解決の幅も広がります。
また、部署を越えた協力体制を構築することで、従業員の視野が広がり、キャリアの可能性も拡大します。
さらに、組織全体の一体感が醸成されることで、従業員の帰属意識が高まり、長期的な定着につながります。重要なのは、これらの取り組みを継続的に実施することです。
具体的な施策例
- 部署横断型プロジェクトの実施
- 共有スペースやカフェテリアの設置
- 部署間ローテーション制度の導入
- 社内SNSやチャットツールの活用
- 部署間メンター制度の導入
④待遇面での不満・不安を解消
待遇面での不満や不安は、離職の主要な原因の一つとなっています。特に、給与体系や評価制度が不透明な場合、従業員の不信感や不満が蓄積されやすくなります。
そのため、給与の算出根拠を明確にし、公平で透明性の高い評価システムを構築することが重要です。
また、市場水準を考慮した適切な報酬制度の設計や、福利厚生の充実を図ることで、従業員の満足度を高めることができます。
さらに、キャリアパスを明確に示すことで、将来の待遇に対する不安を軽減し、長期的な定着を促進することができます。
具体的な施策例
- 給与制度の明確化と公開
- 客観的な評価基準の設定と共有
- 成果連動型の報酬制度の導入
- 定期的な処遇見直しの実施
- スキルアップに応じた昇給制度の導入
⑤働き方改革の具体策
働き方改革の推進は、従業員の健康維持とワークライフバランスの実現に不可欠であり、離職防止に大きな効果をもたらします。
特に長時間労働の是正は、心身の健康維持だけでなく、仕事への意欲向上にもつながります。
また、育児や介護などライフステージの変化に対応できる柔軟な勤務制度を整備することで、貴重な人材の流出を防ぐことができます。
さらに、業務効率化や生産性向上の取り組みを全社的に推進することで、労働時間の短縮と質の高い仕事の両立が可能になります。
具体的な施策例
- 残業時間の上限設定と管理の徹底
- フレックスタイム制度の導入
- 時差出勤制度の活用
- 育児・介護のための時短勤務制度
- ノー残業デーの設定
⑥社員の声を経営に活かす
従業員の意見や提案を積極的に収集し、経営に反映させることは、離職率低下に大きな効果をもたらします。
特に、現場の声を直接聞く機会を定期的に設けることで、従業員は自身の意見が企業の意思決定に影響を与えられるという実感を得ることができます。
また、収集した意見を実際の改善施策として具現化し、その進捗を従業員にフィードバックすることで、組織への信頼感と帰属意識が高まります。
このような双方向のコミュニケーションを通じて、企業と従業員の関係性を強化することが重要です。
具体的な施策例
- 定期的な1on1面談の実施
- 従業員満足度調査の定期実施
- 提案制度の導入と報奨金制度
- 経営層との直接対話の場の設定
- 匿名の意見箱の設置
- 改善提案の実施状況の可視化
⑦社員満足度を高める制度づくり
従業員一人ひとりの成長とキャリア形成を支援する制度の整備は、離職率低下の重要な要素となります。
特に、社員の希望するキャリアパスと企業の成長戦略を結びつけ、双方にとって価値のある人材育成を行うことが重要です。
また、スキルアップのための支援制度や、キャリア開発のための相談体制を整備することで、従業員の将来に対する不安を解消し、長期的な定着を促進することができます。
これらの制度は、単なる福利厚生ではなく、企業の持続的な成長のための重要な投資として位置づける必要があります。
具体的な施策例
- キャリア開発支援制度の整備
- 資格取得支援制度の導入
- 社内外の研修プログラムの提供
- 定期的なキャリア面談の実施
- スキルアップ手当の支給
- キャリアコンサルタントの配置
⑧公平な評価システムの構築
透明性の高い人事評価制度の構築は、従業員の定着率向上に大きく貢献します。
評価基準を明確に示し、客観的な指標に基づいた公平な評価を実施することで、従業員の不満や不信感を解消することができます。
また、定期的なフィードバックを通じて、評価結果の根拠を丁寧に説明し、改善点や期待される成長についても明確に伝えることが重要です。
さらに、評価者の教育を徹底することで、部署や上司による評価のばらつきを最小限に抑え、組織全体での公平性を担保することができます。
具体的な施策例
- 客観的な評価指標の設定
- 定期的な評価面談の実施
- 360度評価の導入
- 評価者研修の定期的な実施
- 評価結果の異議申立て制度
- 評価プロセスの可視化
⑨採用精度の向上に向けて
採用段階でのミスマッチを防ぐことは、早期離職の予防に大きな効果をもたらします。
企業理念や実際の業務内容、職場環境について誠実な情報開示を行うことで、入社後のギャップを最小限に抑えることができます。
また、選考プロセスにおいて、候補者の期待と企業の求める人物像を丁寧にすり合わせることが重要です。
さらに、職場見学や実際の業務体験の機会を設けることで、双方にとって入社後のミスマッチリスクを大幅に低減することができます。これらの取り組みは、結果として定着率の向上につながります。
具体的な施策例
- 詳細な職務記述書の作成と公開
- インターンシップの実施
- 職場見学会の開催
- 現場社員との面談機会の設定
- オンボーディング計画の充実
- 入社後の期待役割の明確化
- 採用担当者の教育強化
7.離職率平均15%超え、今こそ考える定着化
離職率は単なる数値以上に、企業の組織健全性を示す重要な指標です。
本記事で解説したように、日本企業の平均離職率は14.6%ですが、この数値は業界や企業規模によって大きく異なります。
離職率の改善には、働き方改革の推進、評価制度の整備、キャリアパスの明確化など、複数の施策を組み合わせた総合的なアプローチが必要です。
重要なのは、自社の状況を正確に把握し、適切な対策を講じることです。離職率の改善はすぐには実現できませんが、継続的な取り組みによって、必ず成果につながるでしょう。