運送業界特有の複雑な勤務形態により、シフト管理には多くの課題が存在します。
早朝や深夜勤務、直行直帰など、従業員それぞれの勤務時間が大きく異なることで、正確な労働時間の把握や給与計算に膨大な時間と労力を要しています。
本記事では、運送業におけるシフト管理の課題と、それを解決する勤怠管理システムの特徴や具体的な製品について詳しく解説します。
- 運送業特有のシフト管理における具体的な課題と、それを解決する勤怠管理システムの必要性
- 運送業の勤怠管理システムに求められる6つの重要機能と選定のポイント
- 運送業向け勤怠管理システムの具体的な製品例と、導入による成功事例
1.運送業のシフト管理が抱える課題
運送業では、シフト管理が複雑で困難な問題を抱えることが多くあります。特に、労働時間の管理に伴う負担や不正打刻のリスクは、早急に解決すべき重要な課題です。
複雑な勤務形態による管理の困難さ
運送業では、多様な勤務形態が採用されており、管理が難しい状況にあります。早朝に業務を開始する従業員がいる一方で、深夜や日をまたいで働く従業員もおり、勤務時間が大幅に異なる場合があります。
また、ドライバーは拠点を離れて業務を遂行するため、実際の勤務状況や休憩時間を正確に把握するのが困難です。
その結果、長時間労働の慢性化や給与計算のミスなど、さまざまな問題が発生するリスクが高まります。
労働時間管理の負担が大きい
従業員に正当な給与を支払うためには、労働時間を正確に把握しなくてはなりません。
しかし、運送業は勤務形態が複雑なうえ、不規則な働き方をしている従業員もいるため、労働時間の記録や給与計算には膨大な時間と労力が必要です。
特に、手作業で労働時間を管理している場合、計算ミスや集計の遅延が発生する可能性が高く、結果として管理担当者の負担が増大します。これにより、従業員への給与支払いに影響を及ぼすこともあります。
不正打刻の可能性
早朝や深夜に出退勤する従業員が多い運送業では、不正打刻のリスクがつきものです。
- 実際には出勤していない従業員が同僚にタイムカードを代理で打刻してもらう
- 虚偽の勤務時間を申告したりする
不正打刻が発生すると、企業は余計な残業代を支払うことになり、利益が圧迫される可能性があります。
また、公正な給与が支払われないことで、他の従業員が不利益を被り、労務管理上の信頼性を損なうリスクも伴うため、早急に対処が必要です。
2.運送業シフト管理には勤怠管理システムがおすすめ
運送業のシフト管理に関する課題を解決するには、勤怠管理システムの導入がおすすめです。
勤怠管理システムを活用することで、課題の解消に加えて、業務効率化や従業員の負担軽減などのメリットも得られます。
勤怠管理システムとは?
勤怠管理システムは、勤怠関連業務を効率化するためのツールです。
従業員はパソコンやスマートフォンを使って出退勤の打刻や休暇の申請ができ、勤務時間の自動集計や給与計算も可能です。これにより、残業時間や有給取得状況を簡単に把握できます。
勤怠管理システムには「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類がありますが、近年ではクラウド型が主流です。
クラウド型システムは、初期費用を抑えながらオンラインで簡単に導入でき、システムのアップデートも即座に反映されるため、常に最新の状態で利用できるというメリットがあります。
運送業における勤怠管理システムのメリット
勤怠管理システムの導入により、労働時間の正確な管理や不正打刻の防止が可能です。また、労務管理の負担軽減や法改正への迅速な対応も実現できます。
労働時間の正確な管理
勤怠管理システムの導入により、従業員はスマートフォンやパソコン、ICカードなど、さまざまな方法で出退勤の打刻が可能です。
営業所を離れて業務を行うドライバーも、営業所に戻らずに打刻ができるため、負担を軽減できます。
また、勤務状況をリアルタイムで把握できるため、長時間労働の兆候を早期に発見し、適切な対応が可能です。これにより、従業員への適切な指導や注意喚起が行えるほか、労働事故の防止にも役立ちます。
労務管理が簡単になる
勤怠管理システムは、打刻データを自動的に集計するため、従来のように紙のタイムカードを確認しながら手作業で集計する手間がなくなります。
また、一部の勤怠管理システムは給与計算ソフトと連携できるため、正確な勤怠データを給与計算に直接反映することが可能です。この仕組みにより、給与計算ミスやそれに伴うトラブルを防げます。
不正打刻防止が可能
運送業における課題のひとつが、代理やなりすましによる不正打刻です。しかし、生体認証機能が可能な勤怠管理システムを活用すれば、不正打刻を効果的に防止できます。
また、GPS機能が付いた勤怠管理システムでは、ドライバーの位置情報をリアルタイムで把握できるため、虚偽の勤務報告も防げます。
法改正の手続きも対応可能
労働関連の法律は頻繁に改正されるため、そのたびに企業は対応しなくてはなりません。従来の勤怠管理方法では、法改正へのスムーズな対応が難しく、結果として法令違反を招くおそれもあります。
クラウド型の勤怠管理システムを導入しておけば、ベンダーが法改正に応じてシステムを自動的にアップデートします。これにより、自社で手間をかけることなく、スムーズに最新の法律に対応可能です。
3.運送業の勤怠管理システムに求められる機能
勤怠管理システム導入を検討する際には、以下の機能が実装されているかを確認することが重要です。
①スマホ打刻
スマホ打刻は、従業員のスマートフォンを用いて出退勤の打刻が行える機能です。
営業所から離れて業務を行うドライバーや、直行直帰の従業員もスマートフォンがあれば打刻が可能となり、労働時間を正確に記録できます。
また、勤怠管理システムによっては、打刻漏れ防止のために従業員のスマートフォンへアラートを送信する機能を備えている場合もあります。
終業時間を過ぎても打刻が行われていない場合に通知することで、打刻漏れの防止が可能です。
②各種申請機能
各種申請機能は、従業員が自分のデバイスを使って業務関連の手続きを行える機能です。
たとえば、残業申請や有給休暇の申請などが挙げられます。設定によっては、事前に残業申請を行っていない場合、退勤時に打刻できないように制限することも可能です。
また、働き方改革関連法により、年10日以上の有給休暇が付与されている従業員は、5日以上の有給休暇の取得が義務付けられています。
申請・承認機能を備えた勤怠管理システムなら、有給休暇の残日数を正確に管理でき、法令遵守を容易にします。
③GPS機能
GPS機能は、人工衛星からの電波を利用して現在地や時刻情報を取得する仕組みで、カーナビやスマートフォンで一般的に使われています。
これを活用した勤怠管理システムでは、従業員の勤務状況をリアルタイムで把握可能です。
たとえば、休憩や仮眠を取っていると報告されている場合でも、実際には高速道路を移動しているなどの虚偽報告を見抜けます。また、違法な長時間労働が発生していないかを確認するためのチェックにも役立ちます。
④シフト管理
運送業において、従業員のシフト管理は手間と時間のかかる作業です。個々の従業員から希望休の要望などをヒアリングし、うまく調整しつつシフトを組まなくてはなりません。
しかし、シフト管理機能を備えた勤怠管理システムを導入することで、これらの作業を効率化できます。
シフトの提出から集計までシステム上で行える製品もあり、スムーズにシフトを組めます。また、シフトの調整や共有もシステム上で完結するため、管理者の負担軽減にも有効です。
⑤給与計算
勤怠管理システムの中には、給与計算システムとの連携が可能な製品もあります。勤怠データをそのまま給与計算システムに移行できるため、ミスのない正確な給与計算が可能です。
ただし、システムごとに連携方法が異なるため、導入前に自社で使用している給与計算システムと連携可能かどうかを確認することが重要です。
⑥日報作成
運送業を営む企業では、運転日報の作成と保存が法的に義務付けられています。しかし、勤怠と日報を別々に管理している場合、管理に手間がかかることがあります。
日報作成機能を備えた勤怠管理システムを導入すれば、こうした課題を解消可能です。
スマートフォンから日報を作成・提出できるシステムであれば、ドライバーと管理者の双方の負担を大幅に軽減できます。
4.運送業におすすめの勤怠管理システム9選
勤怠管理システムは数多く存在するため、どれを選べば良いのか迷う企業経営者や担当者も多いかと思います。以下では、運送業に特化したおすすめのシフト管理ツール9つを厳選してご紹介します。
【運送業特化】勤怠ドライバー
「勤怠ドライバー」は、運送業向けの機能を備えた勤怠管理システムです。スマートフォンやICカード、デジタコなど多様なデバイスから勤怠データを取得でき、運送業特有の複雑な給与計算にも対応しています。
また、働き方改革関連法の改善基準で求められる複雑な労働時間管理が可能です。さらに、改正改善基準専属のアドバイザーによる手厚いサポートが受けられます。
サービス名 | 勤怠ドライバー |
料金 | 要問い合わせ |
特徴 | 運送業に特化した設計で、2024年問題への対策としても有効 |
【運送業特化】DiSynapse(デシナプス)TA
「DiSynapse TA」は、出勤や退勤時にWebカメラで撮影を行うことで、本人確認を強化した勤怠管理システムです。
タイムカードに画像データを付加することでなりすましを防止できます。また、出張時や出張から戻った際の時間も記録できるボタンが用意されており、社外での行動時間も正確に把握可能です。
勤務表に基づいた残業時間、深夜勤務時間、早出時間の管理ができ、月ごとの合計時間も把握できます。さらに、他の給与ソフトとの連携も可能なオプションを備えています。
サービス名 | 出退勤システムDiSynapseTA |
料金 | ・出退勤システム スタンドアロンライセンス 220,000円(税込み) ・出退勤システム スタンドアロンライセンス 保守5年パック 88,000円(税込み) |
特徴 | Webカメラを活用し、出退勤の本人確認を強化 |
https://www.jyot.co.jp/disynapse/ds-ta
【運送業特化】ロジポケ
「ロジポケ」は、運送業界に特化した業務改善や経営支援を行う勤怠管理システムです。経営管理や運送手配、請求管理、安全教育、監査対策、採用業務など、多岐にわたる運送業務をデジタル化できます。
クラウド型のため、インターネット接続環境があればすぐに利用を開始でき、導入時のサポートも充実しています。
サービス名 | ロジポケ |
料金 | 要問い合わせ |
特徴 | 運送業に関連する幅広い業務をデジタル化できるうえ、充実した導入支援サポートを提供 |
【運送業特化】TUMIX コンプラ
「TUMIX コンプラ」は、運送会社が運送業のために開発したクラウド型の勤怠管理システムです。
デジタコのデータを直接取り込める機能を備えており、打刻はワンクリックで簡単に行えます。運送業専用のカスタマイズ可能なフォーマットを採用し、勤務簿や手当簿を自動で簡単に作成できます。
また、運行結果のデータ化・可視化が可能で、改善基準告示対応の強化にも寄与します。
サービス名 | TUMIX コンプラ |
料金 | ・基本料 月額17,000円(税別)※別途初期費用あり ・追加IDごとに3,000円(税別) ・利用者数が1~30人までのサービス利用料 1人あたり500円(税別) ・データ連携利用料 月額3,000円(税別) |
特徴 | 自動で就業規則に則った勤務簿を作成し、労務管理の精度向上と負担軽減を実現 |
【運送業特化】ジコナクス
「ジコナクス」は、労働時間管理台帳、乗務員台帳、車両台帳、ヒヤリハット報告書、点検整備記録簿などをシステム上で管理できるほか、社内SNSやレポート作成といったコミュニケーション機能も搭載しています。
正確な労働時間の管理、安全運転の推進、そして管理業務の効率化を目指す企業におすすめのシステムです。
サービス名 | ジコナクス |
料金 | 1ユーザー 月額7,000円(税別) |
特徴 | 安全管理から顧客管理、社内コミュニケーションまで、豊富な機能を搭載 |
KING OF TIME
「KING OF TIME」は、多彩な打刻方法を提供する勤怠管理システムです。パスワード認証、クラウドタイムレコーダー、ICカード、生体認証など、目的に応じた打刻方法を選べます。
スケジュールやシフト管理、各種申請承認、給与システムとの連携など、必要な機能を網羅しており、操作性にも優れているため、誰でも簡単に利用できるのが特徴です。
サービス名 | KING OF TIME |
料金 | 1ユーザー 月額300円(税別) |
特徴 | 豊富な打刻方法、幅広い機能、優れた操作性と充実したサポート体制が充実 |
・サービス名:KING OF TIME
・料金:1ユーザー 月額300円(税別)
・特徴:豊富な打刻方法、幅広い機能、優れた操作性と充実したサポート体制が充実
奉行Edge 勤怠管理クラウド
「奉行Edge 勤怠管理クラウド」は、打刻や各種申請、勤怠マネジメントまで、勤怠管理業務をすべてデジタル化できるクラウド型のシステムです。
勤務実績の報告や申請をシステム上で一元管理し、個人単位で労働状況を可視化します。また、Webやアプリを使ったシフトの提出からシフト表作成までの全工程をデジタル化します。
さらに、帳票作成を自動化し、給与計算システムとも自動連携することで、管理業務の効率化が実現可能です。
サービス名 | 奉行Edge 勤怠管理クラウド |
料金 | ・基本機能 月額11,800円(税別) ・基本機能+シフト管理(作成者1名利用)月額16,600円(税別) ・基本機能+シフト管理(作成者5名まで利用)月額21,400円(税別) |
特徴 | 複雑な就業ルールや多様な働き方に対応可能な柔軟性 |
https://www.obc.co.jp/bugyo-edge/attend
ジョブカン勤怠管理
「ジョブカン勤怠管理」は、フレックス制や裁量労働制など、多様な勤務形態に対応可能な勤怠管理システムです。
従業員はパソコンやスマートフォンからシフトを申請でき、管理者はその申請を基にシステム上で簡単にシフト表を作成可能です。
作成したシフトはシステム上で共有できるほか、シフト印刷機能、LINEでのシフト確認、シフト募集機能など、多彩なサポート機能を備えています。また、必要な機能だけを選び、単独での利用もできます。
サービス名 | ジョブカン勤怠管理 |
料金 | 有料プラン 1ユーザーあたり月額200~500円(税別) |
特徴 | 勤怠集計やシフト作成の簡潔化を実現し、ペーパーレス化を推進 |
freee人事労務
「freee人事労務」は、GPS対応の勤怠管理機能を備え、給与計算や給与明細作成もシームレスに行えるクラウド型のシステムです。
また、所得税納付書や賃金台帳、月額変更届などの必要書類を自動作成できるため、大幅な業務効率化ができます。
勤怠管理だけでなく、給与事務や労務管理業務全般を効率化し、連携できる他社サービスが豊富なのも特徴です。
サービス名 | freee人事労務 |
料金 | ・ミニマム 月額2,000円~(税別) ・スターター 月額3,000円~(税別) ・スタンダード 月額4,000円~(税別) |
特徴 | 勤怠管理から給与計算、人事労務管理までを一元化 |
5.勤怠管理システム導入の成功事例
勤怠管理システムの導入を検討する際には、すでに導入し成果を上げている企業の事例を参考にしましょう。
完和物流有限会社
紙の日報や出勤簿を基に給与計算を行っていた同社では、担当者の事務工数が多すぎる課題を抱えていました。
課題解決のため勤怠管理システムを導入した結果、データで管理を行えるようになり、管理者の事務工数も大きく削減できました。
https://www.kanwa-butsuryuu.jp/
開真産業株式会社
同社では、タイムカードのデータを分担してソフトに手入力しており、作業時間は1日30分に及んでいました。
また、2024年問題への対応を見据え、労働時間の可視化が必要と判断した同社は勤怠管理システムを導入しました。導入後は、データ入力や確認の手間が大幅に減り、月間の工数を約75%削減することに成功しています。
株式会社日商
同社では当時、デジタコなどのデータをソフトに手入力し集計しており、デジタルデータを一度アナログ処理してから管理するという非効率な運用が課題でした。
また、内勤者だけでなくドライバーの労働時間や稼働状況を正確に把握する必要がありました。
勤怠管理システムを導入した結果、打刻データとデジタコ情報を連携させて管理できるため、拠点や内勤者、ドライバーの労働状況を容易に把握できます。
作業効率が大幅に向上しただけでなく、データの蓄積によって自社や従業員の傾向を把握することも可能になりました。
6.今こそ始める!効率的なシフト管理改革
打刻のリスクなど、多くのシフト管理における課題を抱えています。これらの課題を解決する手段として、勤怠管理システムの導入が有効です。
特に運送業に特化したシステムでは、スマホ打刻やGPS機能、給与計算連携など、業界特有のニーズに応える機能が充実しています。
システム導入により、労務管理の効率化だけでなく、従業員の働き方改革や法令遵守の実現も可能です。
自社の規模や特性に合った製品を選定し、積極的に活用することで、より効率的な事業運営を実現できるでしょう。