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運送業で意識したいコンプライアンスとは?5つのポイントを紹介

運送業界では2024年問題をはじめとするコンプライアンス対策が急務となっています。

この記事では、運送業経営者が知っておくべきコンプライアンスの重要性、具体的な対策、成功事例、そして活用可能な支援制度を解説します。

法令遵守を単なる義務ではなく、経営改善の機会として捉え、持続可能な運送業の経営を実現していきましょう。

この記事を読んでわかること
  • 運送業界における2024年問題の影響と対応策
  • コンプライアンス対策の7つの重要ポイントとその実践方法
  • コンプライアンス対策を支援する公的制度や補助金の活用方法

1.そもそもコンプライアンスとは?

コンプライアンスとは?

コンプライアンスとは、企業が社会的責任を果たすための概念です。

単に法律を遵守するだけではなく、倫理観などの社会的なルールに従い、公平に業務をおこなうことを示したものです。

コンプライアンスは、以下の3つの要素を含んでいます。

  • 法令遵守
    国や地方自治体が定めた法律や規則を守ること
  • 就業規則の遵守
    企業内部のルールや業務手順を遵守すること
  • 企業倫理・社会規範の尊重
    法令に明記されていなくても、社会から期待される行動指針や道徳的基準に従うこと

これらの要素を統合し、公正かつ公平に業務を遂行することがコンプライアンスの本質です。

なお、従業員が10人以上の企業には、就業規則の作成と届出が義務付けられています。

これは労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条の規定に基づく規定で、従業員の権利保護と公正な労働環境の確保が目的です。

作成した就業規則は、管轄の労働基準監督署長に提出します。また、内容を変更する際も同様の手続きが求められます。

これらの法的要件を遵守することで、企業はコンプライアンスを維持し、健全な労使関係を構築できます。

2.運送業界におけるコンプライアンスの重要性

運送業界は、日本の経済活動を支える重要な役割を担っています。

しかし、その重要性と比例するように、業界特有のコンプライアンス課題も多く存在します。近年、これらの課題への対応が急務となっており、企業の持続可能性に直結する問題として認識されています。

コンプライアンスが注目されている理由

運送業界でコンプライアンスへの注目が高まっています。

その背景には、働き方改革関連法や環境規制の強化による法規制の厳格化、安全運転や環境保護に対する社会的要請の増大があります。

また、労働環境改善による人材確保の必要性や、ITシステム導入によるコンプライアンス管理の効率化も要因となっています。

国土交通省の調査では、2023年度の貨物自動車運送事業者の法令違反件数が前年比10%増加しており、業界全体でのコンプライアンス強化が急務です。

コンプライアンス違反がもたらすリスクと影響

コンプライアンス違反は、企業経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

コンプライアンス違反が発生した場合、企業はさまざまな面で責任を負う可能性があります。

  • 民事責任
    損害賠償金の支払いや契約不履行による賠償、企業イメージ回復のための広告費用など、財務面での負担が生じます。
  • 刑事責任
    営業秘密の不正取得や労働法違反などの行為は、刑事罰の対象となる可能性があります。従業員の権利侵害も重大な法的問題となります。
  • 行政責任
    法令違反に対しては、行政機関からの是正命令や営業停止などの処分を受ける可能性があります。
  • 社会的責任
    違反事実の公表やSNSでの情報拡散により、企業の評判が著しく低下する恐れがあります。「ブラック企業」のレッテルを貼られると、人材確保が困難になるなど、長期的な経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

これらの責任は相互に関連し、企業の存続自体を脅かす可能性があるため、コンプライアンスの徹底が極めて重要です。

3.2024年問題とは何か?運送業界への影響

2024年問題とは何か?運送業界への影響

2024年問題とは、働き方改革関連法に基づく時間外労働の上限規制が、運送業を含む一部業種で2024年4月から全面適用される問題を指します。

この問題は、長年の慣行や業界構造の変革を迫るものであり、運送業界に大きな影響を与えると予想されています。

働き方改革関連法の全体像

2024年問題を理解するには、働き方改革関連法の概要を知ることが重要です。この法律は、労働環境の改善を目指し、主に3つの重要な変更を含んでいます。

まず、労働時間に上限が設けられました原則として月45時間、年360時間までとし、特別な場合でも年720時間を超えないよう定められています。

次に、有給休暇の取得を促進する規定が導入されました。年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対し、企業は最低5日の取得を確実にさせる必要があります。

最後に、同一労働同一賃金の原則が定められ、正規・非正規雇用者間の不当な待遇差が禁止されました。

運送業界特有の課題と対応の必要性

運送業界において、2024年問題は特に以下の点で大きな課題となっています。

  • 長時間労働の是正
    運送業界では、荷主の要望に応じた柔軟な配送や長距離輸送などにより、長時間労働が常態化している場合が多くあります。2024年からは、これらの慣行を抜本的に見直す必要があります。
  • 人手不足への対応
    労働時間の制限により、現在の配送量を維持するためには、より多くのドライバーが必要となります。しかし、すでに深刻な人手不足に悩む業界にとって、これは大きな課題です。
  • 運賃・料金への影響
    労働時間の制限や人員増加に伴うコスト増加は、運賃・料金の見直しにつながる可能性があります。荷主との交渉や新たな料金体系の構築が必要となるでしょう。
  • 生産性向上の必要性
    限られた労働時間内で効率的に業務を遂行するため、ITシステムの導入や業務プロセスの最適化など、生産性向上への取り組みが不可欠となります。

2024年問題は、単に法令遵守のためだけではありません。

従業員の健康と安全を確保し、持続可能な事業運営を実現するために極めて重要です。

さらに、働きやすい環境を整備することで、深刻な人手不足の解消にもつながる可能性があります。

4.運送業のコンプライアンス 5つの重要ポイント

運送業界のコンプライアンス対策を効果的に実施するためには、以下の5つの重要ポイントに注目する必要があります。(※監査などがあった場合確認される可能性のある事項の一例となります)

以下に、箇条書きで解説していきます。

1. 労働時間管理の徹底

  • 適切な休憩・睡眠施設の設置と管理
  • 十分な数の運転者の確保と適正な選任
  • 運転者台帳の正確な作成と保管
  • 社会保険加入と保険料納付の確認
  • 最低賃金法遵守の確認
  • 労働時間等告示に基づく勤務割表の作成
  • 改善基準告示に基づく労働時間管理
  • 乗務管理一覧表の作成と管理
  • 健康診断の実施状況
  • 長距離・夜間運行における交替運転者の適切な配置

運送業における労働時間管理の徹底は、ドライバーの安全と健康を守り、事故を防止するために極めて重要です。

休憩・睡眠施設の適切な管理から、運転者の選任、労働時間の管理、健康管理まで、幅広い観点からチェックをしましょう。

特に、労働時間等告示や改善基準告示に基づく管理が適切に行われているか、詳細な確認が求められます。

2. 適正な運賃・料金の設定

  • 運送約款の変更に関する適切な認可取得
  • 運賃・料金の変更に関する適切な届出
  • 許可された業務範囲内での運送業務の実施
  • 最大積載量を遵守した運行の実施
  • 過積載を防ぐための適正な配車手配
  • 運転日報等による積載量の確認
  • 過積載を奨励するような給与制度の有無の確認

運送業における適正な運賃・料金の設定は、公正な競争と安全な運送を確保するために不可欠です。

運送約款や運賃・料金の変更手続きが適切に行われているかだけでなく、実際の運送行為が法令を遵守しているかも厳しくチェックしましょう。

特に、過積載に関しては、配車計画から実際の運行、給与体系まで、多角的な確認が大切です。

3. 安全管理体制の構築

  • 営業所の位置変更や掲示事項の適切な管理
  • 自動車車庫の位置、収容能力の適正な管理
  • 事業用自動車の適切な管理(種別変更、配置車両数、車体表示など)
  • 運行管理者の適切な選任と届出
  • 運行管理規程の策定と適切な運用
  • 点呼の確実な実施と記録
  • アルコール検知器の適切な管理と使用
  • 乗務等の記録の適切な管理
  • 運行記録計の適切な使用と記録管理
  • 運行指示書の適切な作成と管理
  • 車両の適切な整備管理体制の構築
  • 日常点検および定期点検の確実な実施

運送業における安全管理体制の構築は、事故防止と法令遵守の要となります。

営業所や車庫の管理から、運行管理者の選任、点呼の実施、各種記録の管理、車両の整備に至るまで、幅広い観点からチェックしましょう。

特に、運行管理者の適切な選任と職務遂行、点呼の確実な実施、記録の適切な管理、車両の定期的な点検整備が重要です。

4. 下請法遵守と公正な取引

  • 自家用自動車(白トラ)における有償使用の有無(白ナンバーでの営業行為はNG)
  • 経費明細書等における自家用自動車利用の確認
  • 全運転者の運転者台帳の存在確認
  • 全運転者の適切な賃金支払いと社会保険加入状況
  • 全運転者に対する適切な運行管理の実施
  • 運賃・料金の適切な事業者収入計上
  • 不適切な名目での運転者への支払いの有無

運送業における下請法遵守と公正な取引は、業界の健全性を保つ上で極めて重要です。

自家用自動車の不正使用や名義貸し行為を中心に違反がないことを確認しましょう。特に、運転者の雇用状況、車両の管理状況、運賃の適切な計上など、事業の実態を詳細に確認します。

5. 従業員教育とコンプライアンス文化の確立

  • 運転者に対する計画的な指導・監督の実施
  • 指導・監督の記録の適切な管理と保存
  • 新規雇用運転者の事故歴把握と特別指導の実施
  • 特定の運転者(事故惹起者、新規雇用者、高齢者)への特別指導の実施
  • 適性診断の適切な受診
  • 事業報告書・事業実績報告書の適時提出
  • 事故報告の適切な実施と記録の保管
  • 輸送の安全に関する情報の適切な公表

運送業における従業員教育とコンプライアンス文化の醸成は、安全運行と法令遵守の基盤となります。

運転者への指導・監督の内容や実施状況、特別な配慮が必要な運転者への対応、適性診断の実施状況などが重要です。

これらの要件を満たすことで、安全意識の高い組織文化が醸成され、事故防止と信頼性向上につながります。

参考:トラック運送サービスを持続的に
提供可能とするためのガイドライン|厚生労働省・国土交通省・経済産業省・農林水産省

参考:トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン|国土交通省

参考:運送業のコンプラチェック|GFAいけやま行政書士事務所

5.運送業のコンプライアンス対策を支援する公的制度や補助金

運送業のコンプライアンス対策を支援する公的制度や補助金

運送業のコンプライアンス対策を進める上で、様々な公的支援制度や補助金を活用することができます。ここでは、主な支援制度と申請のポイントを紹介します。

活用できる主な支援制度

支援制度ごとに特徴を解説します。

働き方改革推進支援助成金(厚生労働省)

  • 目的
    長時間労働の是正や労働環境の改善
  • 支援内容
    労務管理システムの導入や専門家によるコンサルティング費用の補助
  • 補助率
    最大75%(上限額は取り組み内容により異なる)

参考:働き方改革推進支援助成金

「物流生産性向上実装事業」「物流生産性向上設備・機器等導入事業」(農林水産省)

  • 目的
    物流事業者の生産性向上や労働環境改善
  • 支援内容
    設備投資や システム導入費用の補助
  • 補助率
    「物流生産性向上実装事業」
    補助率は定額・1間接事業者あたり3,000万円
    「物流生産性向上設備・機器等導入事業」
    補助率二分の一以内・1間接事業者あたり1億円

参考:最大1億円で物流2024年問題に対応する設備導入を支援!「令和5年度物流生産性向上推進事業」を解説

IT導入補助金(経済産業省)

  • 目的
    ITツール導入による業務効率化
  • 支援内容
    ソフトウェア、クラウドサービス等の導入費用の補助
  • 補助率
    最大50%(上限額450万円)

参考:IT導入補助金2024

事業再構築補助金(経済産業省)

  • 目的
    ビジネスモデルの転換や新分野展開
  • 支援内容
    設備投資や システム構築費用の補助
  • 補助率
    最大2/3(上限額は企業規模により異なる)

参考:事業再構築補助金

6.持続可能な運送業経営のためのコンプライアンス戦略

運送業を営む皆様、2024年問題への対応を含むコンプライアンス対策は、単なる法令遵守以上の意味を持っています。これは貴社の業務効率を高め、企業価値を向上させるでしょう。

労働時間管理の徹底、安全管理体制の強化、ITツールの積極的活用など、具体的な改善策を実践しましょう。また、荷主企業との協力関係構築や、各種公的支援制度の活用も重要です。

困難に思えるかもしれませんが、一歩ずつ着実に進めることで、成果は現れます。

より安全で効率的、そして従業員にとっても働きがいのある運送業を作り上げていきましょう。

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https://colorfulcorp.co.jp/media/contents/transportation-power-harassment/

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