若手人材の採用に課題を感じている企業にとって、TikTokは新たな可能性を秘めたプラットフォームとして注目を集めています。
特にZ世代へのリーチ力の高さと、低コストで効果的な採用活動が実現できる点が魅力です。
本記事では、実際の成功事例を交えながら、TikTok採用の基礎から実践的なノウハウまでを詳しく解説していきます。
- TikTok採用のメリット・デメリットと具体的な活用方法
- 効果的なTikTok採用動画の作り方と運用のコツ
- 実際に成功を収めている企業の具体的な事例と実践手法
1．TikTok採用とは？
ソーシャルメディアを活用した採用活動の新しい形として、TikTokを活用した採用手法が注目を集めています。
TikTok採用とは、短尺動画プラットフォームであるTikTokを活用して、企業の魅力や職場の雰囲気を発信し、採用活動につなげる手法です。
従来の採用活動と異なり、エンターテイメント性の高い動画コンテンツを通じて、より自然な形で企業の魅力を伝えることができます。
特に、就職活動中の若年層に対して、企業の等身大の姿を効果的に発信できる点が特徴です。
2．TikTok採用が注目されている理由
デジタルネイティブ世代の就職活動において、従来の採用手法だけでは十分なリーチが得られにくくなっている現状を踏まえ、より効果的なアプローチが求められています。
若い世代の利用者が多い
TikTokのユーザー層は10代から20代が中心となっており、特に就職活動を控えた大学生や若手社会人の利用率が高いことが特徴です。
【利用率の推移（10代）】
2019年：14.6%
2020年：20.8%
2021年：31.1%
2022年：39.3%
【他のSNSとの比較】
TikTok：約1,700万人（10-20代中心）
Instagram：約3,300万人（10-30代中心）
X(旧Twitter)：約4,500万人（10-20代中心）
Facebook：約2,600万人（20-40代中心）
LINE：約8,400万人（幅広い年齢層）
YouTube：約6,200万人（幅広い年齢層）
【重要なポイント】
・全体の利用率は8.5%ですが、10代では約4割が利用
・10代女性の利用率は46.2%と特に高い
・認知率は全体の約7割に達している
・年々、10代の利用率が大きく上昇（約3年で25%近く増加）
このデータから、TikTokは若年層、特に10代へのリーチ力が非常に強く、また年々その傾向が強まっていることがわかります。
若手人材の採用を検討している企業にとって、TikTokは効果的なプラットフォームとなる可能性を秘めています。
参考：【NTTドコモモバイル社会研究所】TikTok認知率 約7割：10代女性の利用率46.2％
Z世代採用における圧倒的な優位性
Z世代（1997年～2010年生まれ）は、2023年時点で13歳から26歳に該当し、すでに就職活動や社会人として活躍する年齢層を含んでいます。
人手不足が深刻化する日本において、Z世代は重要な採用ターゲットとなっています。
注目すべきは、Z世代の就活におけるTikTokの影響力です。2022年の調査によると、2023年新卒学生の81%がTikTokで企業動画を視聴した経験があり、その80.2%が「企業に興味を持った」と回答。
さらに、企業のTikTok動画を見た学生の66.2%が実際にエントリーを行っているという結果も出ています。
このデータからも、Z世代へのリーチ手段としてTikTokが効果的な採用チャネルとなっていることが分かります。
参考：【PR TIMES】Z世代の就活生の80.2%が、「TikTok」がきっかけで企業に興味を持った経験あり そのうち66.2%は、実際にエントリーも
TikTokの視聴時間が長い
TikTok採用への注目度上昇の背景には、動画視聴時間の継続的な増加があります。
総務省の調査によると、全世代の平日動画視聴時間は令和2年度の38.7分から令和4年度には51.0分へと増加傾向にあります。
特に注目すべきは若年層の動画視聴時間です。10代は一貫して90分前後の高水準を維持していますが、より顕著なのは20代の伸びです。
20代の平日動画視聴時間は令和2年度の73.8分から令和4年度には99.9分と大幅に増加し、10代を上回るまでになっています。
特に採用ターゲットとして重要な20代の視聴時間が著しく伸びていることは、TikTokを採用チャネルとして活用する価値が高まっていることを示しています。
こうした動画コンテンツへの接触時間の増加が、TikTok採用への関心を高める要因の一つとなっています。
参考
【総務省情報通信政策研究所】令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書＜概要＞
【総務省情報通信政策研究所】令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書＜概要＞
3．TikTokを採用活動に活用するメリット
TikTok採用には、従来の採用手法にはない独自のメリットが存在します。効果的に活用することで、採用活動の質を大きく向上させることができます。
メリット①職場の雰囲気が伝わりやすい
動画という媒体の特性を活かし、オフィスの様子や社員の日常業務、社内イベントなどをリアルに伝えることができます。
写真や文章だけでは伝えきれない職場の空気感や、社員同士のコミュニケーションの様子を、より生き生きと表現することが可能です。
採用候補者は、自分が働くことになる環境をより具体的にイメージすることができ、ミスマッチを防ぐことにもつながります。
メリット②コスパが高い
従来の採用手法と比較して、TikTok採用は非常にコストパフォーマンスが高いことが特徴です。
一般的な新卒採用では、1人あたり約90万円のコストが発生すると言われていますが、TikTokは基本的に無料で利用でき、動画の撮影・編集もスマートフォン1台で完結できます。
また、広告出稿を行う場合でも、従来のマス広告と比べて低コストで効果的なリーチが期待できます。
メリット③まだメジャーな採用方法ではない
現時点では、TikTokを採用活動に活用している企業はまだ少数派です。
そのため、早期に参入することで、競合他社との差別化を図ることができます。特に、若手層をターゲットとした採用において、先進的な企業というイメージを確立することが可能です。
また、競合が少ない分、コンテンツの目立ちやすさも確保しやすい状況です。
メリット④動画制作が簡単
TikTokは直感的な操作性と豊富な編集機能を備えており、専門的な知識がなくても魅力的な動画を制作することができます。
アプリ内の編集ツールを使用することで、テキストの挿入やエフェクトの追加、音楽の付与なども簡単に行えます。
また、トレンド音源やフィルターを活用することで、より注目を集めやすい動画を作成することも可能です。
メリット⑤バズった時の拡散力が高い
TikTokの特徴的なアルゴリズムにより、フォロワー数に関係なく、魅力的なコンテンツは大きく拡散される可能性があります。
特に、トレンドを上手く取り入れた動画や、独創的な企画は、急速に視聴回数を伸ばすことがあります。
一度バズれば、採用ターゲット層に一気にリーチできる可能性があり、採用活動の効率を大きく高めることができます。
4．TikTokを採用活動に活用するデメリット
TikTok採用には数々のメリットがある一方で、いくつかの注意点や課題も存在します。これらを理解し、適切に対策を講じることが重要です。
デメリット①効果が出るまでに時間が必要
TikTokでの採用活動は、即効性を期待することは難しく、継続的な取り組みが必要です。
質の高いコンテンツを定期的に投稿し、視聴者との関係性を構築していく必要があります。また、企業アカウントとしての信頼性を確立するまでには、ある程度の時間を要します。
特に、採用活動の成果が表れるまでには、最低でも3ヶ月から半年程度の期間を見込んでおく必要があります。
デメリット②炎上する可能性がある
ソーシャルメディアの特性上、投稿内容によっては予期せぬ批判や炎上のリスクが存在します。
特に、若年層が多いプラットフォームであるため、センシティブな話題や不適切な表現には細心の注意が必要です。
また、企業としての品位を保ちながら、エンターテイメント性のある内容を提供するバランス感覚も求められます。
5．効果的なTikTok採用コンテンツの作り方のコツ
採用効果を最大化するためには、適切なコンテンツ戦略が不可欠です。ターゲット層の興味を引き、かつ企業の魅力を効果的に伝えるコンテンツづくりを目指しましょう。
若者の心をつかむ動画制作のコツ
若年層をターゲットとした動画制作では、最新のトレンドを意識することが重要です。
人気の楽曲やダンス、チャレンジ企画などを取り入れることで、より多くの注目を集めることができます。また、視聴者が共感できるような日常的な場面や、裏側を見せるような企画も効果的です。
定期的にトレンドを調査し、自社らしさを保ちながら取り入れていくことがポイントです。
ギャップを活かしたコンテンツ作りのコツ
真面目なイメージの企業が意外な一面を見せたり、普段は見られない社員の素顔を紹介したりすることで、視聴者の興味を引くことができます。
このようなギャップは、企業に親しみやすさを感じさせる効果があります。ただし、企業イメージを損なわない範囲で実施することが重要です。
社内の雰囲気を魅力的に伝えるコツ
職場の実際の様子や社員の日常を切り取ることで、より具体的な企業イメージを伝えることができます。
オフィスツアーやデスク周りの紹介、社内イベントの様子など、普段は見られない場面を共有することで、就職希望者の興味を引くことができます。
社員の生の声や表情を通じて、企業文化や働く環境をリアルに伝えましょう。
動画は短く・情報はしっかりと組み込むコツ
TikTokの特性を活かし、15秒から60秒程度の簡潔な動画を心がけましょう。
その中で、企業の魅力や重要なメッセージを効果的に盛り込むことが重要です。
視聴者の興味を引く冒頭作り、理解しやすい展開、印象的なエンディングなど、構成にも工夫を加えることで、より効果的な情報発信が可能になります。
多くの社員を巻き込むコツ
様々な部署や年齢層の社員が登場することで、より多角的な企業の魅力を伝えることができます。
新入社員から管理職まで、幅広い立場の社員が参加することで、組織の一体感や風通しの良さも表現できます。
また、社員自身がコンテンツ制作に関わることで、より自然な表現や独創的なアイデアも生まれやすくなります。
6．TikTok採用の具体的なステップと注意点
TikTok採用を成功させるためには、計画的なアプローチと継続的な取り組みが必要です。以下では、具体的な実践手順を解説します。
アカウント立ち上げから最初の投稿まで
企業アカウントを作成する際は、プロフィールの設定に十分な注意を払いましょう。
企業名、ロゴ、企業概要などを適切に設定し、採用情報へのリンクも明確に表示します。最初の投稿は、企業の全体像や魅力が伝わるような内容を心がけ、以降の投稿の方向性を示唆するものにすると良いでしょう。
また、投稿前に社内でガイドラインを設定し、投稿可能な内容や注意点を明確にしておくことも重要です。
効果的なハッシュタグ戦略
適切なハッシュタグを活用することで、投稿の到達率を高めることができます。
採用関連のハッシュタグ（#採用 #就活 #新卒採用など）に加え、業界特有のハッシュタグや、トレンドのハッシュタグを組み合わせることで、より幅広い層へのリーチが期待できます。
ただし、ハッシュタグは3～5個程度に抑え、投稿の本質を失わないようにすることが重要です。
投稿頻度と時間帯の最適化
コンスタントな投稿を維持するため、週3回程度の投稿を目標にしましょう。
また、ターゲット層の利用が多い時間帯（平日の夜間や週末など）を意識して投稿することで、より高い視聴率が期待できます。投稿のパフォーマンスを定期的に分析し、最適な投稿タイミングを見つけ出すことも重要です。
7．TikTok採用の成功事例から学ぶポイント
実際にTikTok採用で成果を上げている企業の事例を分析することで、効果的な活用方法のヒントを得ることができます。
①三和交通株式会社
三和交通株式会社は、TikTokを活用した企業ブランディングの先駆的存在として注目を集めています。
取締役部長と課長代理陣による短いネクタイがトレードマークの個性的なダンス動画は、そのシュールさとコミカルさで多くのファンを獲得。
TikTok2021上半期トレンドへのノミネートや有名人とのコラボ実現など、現在では21万人以上のフォロワーを持つ人気アカウントに成長しました。
この取り組みの結果、企業イメージの向上と知名度アップにつながり、中途採用応募者の増加と採用活動費の削減という具体的な成果を上げています。
経営層が率先して参加し、タクシー会社という堅いイメージの業界でありながら、ユーモアのある表現を取り入れたことで、組織の柔軟性や風通しの良さを効果的に伝えることに成功した事例と言えます。
参考：https://www.tiktok.com/@sanwakotsu
②三洋商事株式会社
三洋商事株式会社は、社員の日常業務や職場の雰囲気を効果的に発信することで、採用活動での成功を収めています。
特に注目すべきは、新入社員から管理職まで、様々な立場の社員が登場する動画コンテンツです。
実際の業務風景やチーム活動の様子を自然な形で紹介することで、視聴者に対して具体的な働くイメージを提供しています。
この取り組みにより、採用応募者の質が向上し、入社後のミスマッチも減少したとのことです。
参考：https://www.tiktok.com/@sanyosyoji
③株式会社リンクロノヴァ
建設業界で注目を集める株式会社リンクロノヴァは、週3回の定期投稿を徹底し、安定した視聴者層の確保に成功しています。
特に人気を集めているのは、社長と社員が共に出演する料理動画シリーズです。
一見すると建設業とは無関係に思える内容ですが、この企画を通じて経営層と社員の距離の近さや、自由な発想を認める社風を効果的に表現しています。
各動画が平均して1万いいねを獲得するなど、高いエンゲージメント率を維持しており、採用活動においても大きな成果を上げています。
参考：https://www.tiktok.com/@lincronova
8．堅い企業イメージを変える、TikTok採用の可能性
TikTok採用は、従来の採用手法とは異なる新しいアプローチとして、多くの可能性を秘めています。
特に若手層へのリーチ力の高さと、低コストで効果的な採用活動が実現できる点は、多くの企業にとって大きな魅力となっています。
ただし、成功のためには継続的な取り組みと適切な戦略が不可欠です。企業の個性を活かしながら、ターゲット層に響くコンテンツを提供し続けることで、採用活動の新たな可能性を切り開くことができるでしょう。
