採用通知書の作成に悩む採用担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特にまだ仕組みが整っていないスタートアップや中小企業では、どのような内容を記載すべきか、法的な効力はどうなのか、送付のタイミングはいつが最適かなど、疑問点が尽きないものです。
この記事では、採用通知書の基本から実践的な活用方法まで、現場で即使える情報を徹底解説します。
- 採用通知書と内定通知書の違い
- 採用通知書に必要な記載事項と作成時の具体的な注意点
- 内定辞退を防ぐための採用通知書の活用方法とフォロー施策
1.採用通知書とは?
採用活動において重要な転換点となる採用通知書について、その基本的な定義から実務上の意義まで詳しく解説していきます。
採用通知書の定義と役割
採用通知書は、企業が求職者に対して正式な採用意思を伝える文書です。
選考プロセスの最終段階で企業が発行する重要な書類であり、求職者との信頼関係を構築する最初の正式な文書となります。
採用通知書には、企業の採用意思を明確に示すとともに、入社に向けた具体的な手続きや必要書類の案内なども含まれます。
企業にとっては、企業としての信頼性や誠実さを示す重要な機会となるため、その作成には細心の注意を払う必要があります。
採用通知書が持つ法的効力について
採用通知書自体には、求職者を法的に拘束する効力はありません。
これは内定通知書とは異なる重要な特徴です。しかし、採用通知書は企業側の採用意思を示す重要な証拠となるため、その後の採用プロセスにおいて法的な意味を持つ可能性があります。
特に、採用条件や待遇に関する記載は、後々のトラブル防止の観点から、明確かつ正確に記載することが求められます。
採用通知書はなぜ必要なのか
採用通知書は、単なる形式的な書類ではありません。優秀な人材を確保する上で、採用通知書は極めて戦略的な役割を果たします。
具体的には、求職者に対して企業の誠意を示し、入社への意欲を高める効果があります。また、採用条件や入社手続きを明確に示すことで、入社までのプロセスをスムーズに進めることができます。
さらに、他社への就職活動を止めてもらうきっかけとなり、結果として内定辞退を防ぐ効果も期待できます。
2.採用通知書と内定通知書の違いを徹底解説
採用通知書と内定通知書は似て非なる文書です。それぞれの特徴と使い分けについて、詳しく解説していきます。
採用決定と内定決定の大きな違い
採用決定は、企業が「この人を採用したい」という意思表示を示すものです。この段階では、まだ企業と求職者の間で正式な約束は交わされていません。
一方、内定決定は、企業と求職者の双方が合意した「将来の雇用」についての約束です。これは単なる意思表示ではなく、お互いが将来の雇用関係について合意したことを示す、より具体的な約束となります。
つまり、採用決定は企業からの「オファー」であり、内定決定は企業と求職者の間での「合意」という点が最も大きな違いと言えます。
それぞれの通知書の使い分け方
採用通知書
採用通知書は、主に中途採用や即戦力の採用の場面で使用されます。企業が求職者に対して採用の意思を早期に伝え、他社への就職活動を抑制する効果を期待する場合に有効です。
即時の入社が想定される場合や、採用条件の確定後すぐに労働契約を締結する予定がある場合には、採用通知書を使用することが一般的です。
内定通知書
内定通知書は、主に新卒採用や、入社までに一定期間が設けられる採用の場面で使用されます。
入社までに時間的な猶予がある場合、企業と求職者の双方に一定の拘束力を持たせることで、安定的な採用計画を実現することができます。
3.採用通知書に必要な記載事項
採用通知書の作成にあたって、必要な記載事項を漏れなく、適切に記載することは極めて重要です。
採用通知書の記載事項①基本情報(日付・宛名・発信者)の書き方
採用通知書の基本情報は、文書の信頼性を示す重要な要素です。正確な記載が求められる主な項目は以下の通りです。
項目 | 記載のポイント |
---|---|
日付 | ・採用決定日を明記 ・西暦、和暦どちらでも可(社内規定に従う) |
宛名 | ・求職者の正式な氏名(略字・通称は不可) ・必ず「様」をつける |
発信者 | ・企業名 ・代表者名または人事部門責任者名 ・社印または公印を押印 ・担当者の連絡先 |
これらの情報は採用通知書の冒頭に配置し、文書としての体裁を整えます。誤記載や不正確な情報は企業の信頼性を損なう可能性があるため、必ず複数人でのチェックを行いましょう。
これにより求職者は、不明点がある場合の連絡先を把握でき、安心して入社準備を進めることができます。
採用通知書の記載事項②採用条件の明確な記載方法
採用条件は、後のトラブルを防ぐために最も注意を払うべき項目です。職種、勤務地、給与、勤務時間、待遇などの条件を、面接時の説明と一致するように明確に記載します。
特に変更の可能性がある条件については、その旨を明記するか、別途労働条件通知書で詳細を通知することを明示します。
曖昧な表現や解釈の余地がある記載は避け、具体的な数値や条件を明記することで、求職者の不安を解消します。
採用通知書の記載事項③入社手続きに関する情報の書き方
入社手続きについては、求職者が何をいつまでに準備すべきかを明確に示す必要があります。
入社日時、入社時の集合場所、オリエンテーションの予定など、具体的なスケジュールを記載します。また、入社までに必要な健康診断や資格取得などの要件がある場合は、その期限や具体的な手続き方法も併せて記載します。
手続きの流れを時系列で示すことで、求職者の準備を助け、スムーズな入社を実現します。
採用通知書の記載事項④提出書類リストの作成方法
提出書類のリストは、求職者が円滑に入社準備を進められるよう、詳細かつ分かりやすく記載します。
必要書類の名称、提出期限、提出方法を明確に示し、可能であれば各書類の入手方法や記入上の注意点も添えます。
特に、住民票や資格証明書など、取得に時間を要する書類については、その旨を明記し、十分な準備期間を設けることが重要です。
また、個人情報に関わる書類については、その取り扱いについても言及することで、求職者の安心感を高めます。
採用通知書の同封書類一覧表
採用通知書を送付する際の一般的な同封書類について、表で紹介します。
同封書類 | 概要 | 備考 |
---|---|---|
入社承諾書 | 応募者の入社意志を確認するための書類 | 内定承諾書とも呼ばれる。採用通知書と一緒に送付されることが多い |
労働契約書 | 企業との労働契約を締結するための書類 | 労働条件通知書と一体となっていることが多い。別送の場合もある |
添え状 | 送付書類の種類・内容・通数などを記載した文書 | ビジネスマナーとして同封が推奨される |
返信用封筒 | 記入済み書類を返送するための封筒 | 切手貼付・宛名記入済みが望ましい。郵送トラブル防止に効果的 |
4.採用通知書作成・送付時の3つのポイント
採用通知書を作成する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを守ることで、より効果的な採用通知書を作成することができます。
採用通知書作成ポイント①法的トラブルを防ぐ
採用通知書の送付方法は、後のトラブル防止の観点から非常に重要です。書留郵便を使用することで、確実な配達記録を残すことができ、採用通知書が確実に相手に届いたことを証明できます。
また、内容証明郵便を利用することで、送付した文書の内容も証明することができます。特に採用条件に関する重要な事項を含む場合は、これらの方法を積極的に活用すべきです。
電子メールでの送付を行う場合も、開封確認機能を使用するなど、配達の証跡を残すことが推奨されます。
採用通知書作成ポイント②誠意が伝わる文面の作り方
採用通知書は、単なる事務的な通知以上の意味を持ちます。求職者の入社意欲を高め、企業への帰属意識を醸成する最初の正式な文書となります。
そのため、誠意ある丁寧な文面作りが重要です。具体的には、面接でのやり取りに触れたり、求職者の魅力やスキルに言及したりすることで、個別性の高い文面を心がけます。
また、今後の活躍への期待を示すなど、前向きなメッセージを含めることで、求職者のモチベーション向上にもつながります。
採用通知書作成ポイント③送付期限設定
採用通知書の送付タイミングは、採用成功の鍵を握ります。面接から採用通知までの期間が長くなると、求職者が他社の選考に進んでしまうリスクが高まります。
そのため、採用を決定したら、できるだけ早く、遅くとも1週間以内には採用通知書を送付することが推奨されます。特に優秀な人材の場合、複数の企業から内定を得ている可能性が高いため、迅速な対応が求められます。
また、入社手続きに必要な期間も考慮し、余裕を持ったスケジュール設定を心がけましょう。
5.採用通知書の見本
採用通知書作成の際に活用できる、実践的なテンプレートをご紹介します。
このテンプレートは、これまでご説明した要点を全て盛り込んだ、即実務で使える内容となっています。それぞれの項目に自社の情報を当てはめるだけで、適切な採用通知書を作成することができます。
特に採用実務の経験が少ない企業の担当者の方は、このテンプレートを基に、自社の状況に応じたカスタマイズを行うことで、効率的に採用通知書を作成することができます。
6.内定辞退を防ぐ!採用通知書提出~入社までのポイント
採用通知書の送付から入社までの期間は、内定辞退防止の重要な時期となります。この期間をどのように活用するかで、入社までの定着率が大きく変わってきます。
内定通知書に感謝の気持ちや採用理由を入れる
採用通知書には、単なる事務的な通知以上の意味を持たせることが重要です。
選考過程で感じた求職者の長所や、採用を決定した具体的な理由を記載することで、求職者の入社意欲を高めることができます。
また、面接でのやり取りに言及するなど、個別性の高い内容を含めることで、より強い信頼関係を構築することができます。
メールなどでの連絡を併せておこなう
採用通知書の送付と並行して、メールや電話での連絡を行うことは、求職者との関係強化に効果的です。
特に、入社手続きに関する質問や不安に素早く対応することで、求職者の安心感を高めることができます。また、定期的な連絡を通じて、企業への帰属意識を醸成することも可能です。
ただし、連絡頻度は適切に設定し、求職者に負担にならないよう配慮することが重要です。
採用通知書送付後のフォローをおこなう
採用通知書送付後のフォローは、入社までの定着率を高める重要な施策です。
入社前研修や職場見学の機会を設けたり、配属予定部署の社員との交流の場を設定したりすることで、入社後のイメージを具体化し、不安を軽減することができます。
また、入社までの期間が長い場合は、会社の近況や配属予定部署の情報を定期的に共有するなど、継続的なコミュニケーションを心がけることが大切です。
7.採用通知書から始まる、成功する採用の第一歩
採用通知書は、単なる事務手続きの書類ではありません。企業の採用意思を明確に伝え、入社までの重要なコミュニケーションツールとなります。
作成時は法的な観点を踏まえつつ、誠意ある文面作りを心がけ、適切なタイミングでの送付を意識することが重要です。また、採用通知書の送付後も、継続的なフォローを行うことで、入社までの定着率を高めることができます。
本記事で解説したポイントを押さえることで、より効果的な採用通知書の活用のお役に立てれば幸いです。