運送会社の人事必見!採用で知っておくべき年齢制限の基礎知識の画像

運送会社の人事必見!採用で知っておくべき年齢制限の基礎知識

ドライバー採用を適切に行っていくためには、年齢制限に関する知識を持っておくことは重要な要素です。

2007年の雇用対策法改正により、原則として年齢制限は禁止されていますが、一定の条件下では例外も認められています。

本記事では、法的規制の内容から実務上の対応まで、運送業界の人事担当者が知っておくべき重要事項を徹底解説します。

この記事を読んでわかること
  • 年齢制限が禁止された法的背景と、ドライバー採用で認められる6つの例外事由の具体的内容
  • 年齢制限に関する表現で使用可能なものと避けるべきものの判断基準
  • 年齢にとらわれない効果的な採用活動の具体的な方法と評価基準の設定方法

1.採用における年齢制限の基本ルール

ドライバー採用における年齢制限の基本ルール

どの業界においても人材確保は重要な経営課題となっていますが、採用時の年齢制限については慎重な対応が求められています。

ここでは、基本的なルールについて解説します。

雇用対策法で定められた年齢制限の禁止事項

2007年10月1日に施行された改正雇用対策法により、募集・採用における年齢制限は原則として禁止されることとなりました。

それまでは努力義務とされていた年齢制限の禁止が法的な義務として定められ、違反した場合には行政指導の対象となる可能性があります。

具体的には、求人広告や募集要項において年齢の上限や下限を設定することは認められず、「若手ドライバー募集」「40歳以下限定」といった表現も避けるべきとされています。

この規制は正社員採用だけでなく、パートタイムや契約社員の募集においても適用され、運送業界特有の例外は設けられていません。

参考:募集・採用における年齢制限禁止について|厚生労働省

年齢制限禁止の背景にある社会的課題

年齢制限が禁止された背景には、日本社会が直面する深刻な課題があります。

少子高齢化が進行する中で、労働力人口の確保が大きな課題となっており、特に運送業界では慢性的な人手不足が続いています。

また、就職氷河期世代の雇用問題や高齢者の就労促進という社会的要請も、この法改正の重要な要因となりました。

年齢による差別を禁止することで、すべての年齢層に公平な就労機会を提供し、個人の能力や適性に基づいた採用を促進することが求められているのです。

年齢にとらわれない採用のメリット

年齢制限のない採用活動には、企業にとって様々なメリットがあります。まず、応募者の母数が増えることで、より優秀な人材との出会いの機会が広がります

また、多様な年齢層の従業員が混在することで、世代間での知識やスキルが共有され、職場の活性化にもつながります。

特にドライバー職では、若手の体力と中高年の経験が相互に補完し合うことで、より効率的な業務運営が可能になります。

さらに、年齢に関係なく実力本位で採用を行うことは、企業の社会的評価の向上にもつながり、結果として採用活動全体の効率化にも寄与します。

2.採用で認められる「例外事由6区分」とは

ドライバー採用においても、一定の条件下では年齢制限が認められる場合があります。

ここでは、法令で定められた6つの例外事由について詳しく解説します。

例外事由1号

定年制を採用している企業における期間の定めのない労働契約での募集では、その定年年齢を上限として年齢制限を設けることが認められています。

例えば、定年が65歳の企業が、65歳未満の人材を募集することは可能です。

ただし、この例外を適用する場合は、定年制度が就業規則等で明確に定められており、実際に運用されていることが前提となります。

また、有期労働契約での募集や、定年年齢以外の年齢制限を設けることは認められません。

例外事由2号

労働基準法などの法令により特定の年齢層の就労が制限されている業務については、その制限に応じた年齢制限を設けることができます。

具体的には、危険有害業務における18歳未満の就労制限や、深夜業務における制限などが該当します。

ドライバー職に関しては、大型自動車の運転に必要な免許の年齢要件なども、この例外事由に含まれると解釈されます。

例外事由3号 イ

長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を募集する場合は年齢制限が認められます。

この例外は、新卒一括採用の慣行や、若年層の安定的な雇用促進を目的としています。ただし、上限年齢は原則として35歳未満とされ、特別な場合でも45歳未満までとされています。

この例外を適用する場合は、キャリア形成のための体制が整備されていることが必要です。

例外事由3号 ロ

技能・ノウハウの継承を目的とする場合、特定の職種において特定の年齢層の人材を募集することが認められます。

この例外は、社内の年齢構成に偏りがあり、技能伝承に支障が生じる可能性がある場合に適用できます。

ただし、募集する年齢層は30歳から49歳までの間に限定され、その範囲も5年から10年程度とされています。

例外事由3号 ハ

芸術・芸能の分野における表現の真実性等を確保するために特定の年齢層の人材が必要な場合、年齢制限が認められます。

ただし、この例外事由はドライバー職には通常適用されません。特殊な広告や映像制作に関連する運転業務などの極めて限定的な場合にのみ、検討の余地があります。

例外事由3号 ニ

60歳以上の高齢者を募集する場合や、就職氷河期世代を対象とした募集を行う場合など、特定の雇用対策に基づく募集については年齢制限が認められます。

この例外は、高齢者雇用の促進や特定世代の就労支援という政策目的に基づくものです。

具体的には、60歳以上の募集や、35歳以上55歳未満の就職氷河期世代限定の募集などが該当します。

参照:その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?|厚生労働省

3.年齢制限に関する誤解と正しい理解

年齢制限に関しては、様々な誤解が存在します。

ここでは、よくある誤解を取り上げ、正しい理解を促進します。

力仕事が多いことを理由にした制限は認められるか

運送業界では体力的な負担を理由に年齢制限を設けたいと考える企業も多いですが、これは法的には認められません

体力や筋力は個人差が大きく、年齢のみを基準とすることは適切ではありません

むしろ、求める体力レベルや必要な身体能力を具体的に明示し、それらを満たす人材を募集することが望ましいとされています。

例えば、「重量物(○kg程度)の運搬作業があります」「長時間の立ち仕事があります」といった具体的な業務内容の記載が推奨されます。

「若手ドライバー活躍中」という表現は使えるか

職場の実態を説明する目的で「20代・30代のドライバーが活躍中」といった表現を使用することは、直ちに違法とはなりません

ただし、このような表現が特定の年齢層を優遇または排除する意図を持つと解釈される可能性があるため、慎重な対応が必要です。

代わりに「未経験者も歓迎」「充実した研修制度あり」といった、年齢に依存しない表現を用いることが推奨されます

また、現場で活躍している従業員を紹介する際も、特定の年齢層に偏らないよう配慮が必要です。

経験者優遇と年齢制限の関係性

経験者を優遇することと年齢制限は、法的に別個の問題として扱われます。

業務経験を応募要件とすること自体は問題ありませんが、それが実質的な年齢制限として機能する場合は注意が必要です。

特に「長期勤続によるキャリア形成」を理由とする例外事由(3号イ)を適用する場合、経験者優遇との組み合わせは認められません

応募要件は、年齢ではなく具体的な技能や資格、経験年数など、客観的な基準に基づいて設定することが重要です。

4.年齢にとらわれない採用のポイント

年齢にとらわれない採用のポイント

年齢制限にとらわれない採用活動を実践するためには、具体的な戦略が必要です。

ここでは効果的な採用方法を解説します。

求める人材像を明確にした募集要項の作成

効果的な募集要項作成の鍵は、具体的な業務内容と求める能力を明確に示すことです。

年齢による制限を設ける代わりに、「安全運転の経験」「時間管理能力」「コミュニケーション力」など、業務に必要な具体的なスキルや適性を詳しく記載します。

また、勤務条件や待遇についても具体的な数値や事例を用いて説明することで、応募者が自身の適性を判断しやすくなります。

特に、未経験者向けの研修制度や資格取得支援など、キャリア開発に関する情報は重要なアピールポイントとなります。

経験とスキルに基づく選考基準の設定

採用選考においては、客観的な評価基準の設定が重要です。

運転技術、安全意識、顧客対応力などの具体的な評価項目を設定し、それぞれについて明確な判断基準を設けます。

面接では、過去の運転経験や安全運転への取り組み、顧客対応の実例など、具体的なエピソードを聞き出すことで、応募者の実力を適切に評価することができます。

また、実技試験や適性検査を導入することで、より客観的な評価が可能になります。

多様な年齢層が活躍できる職場環境づくり

年齢にとらわれない採用を成功させるためには、職場環境の整備が不可欠です。

具体的には、フレックスタイム制の導入や休憩施設の充実、作業補助機器の導入など、様々な年齢層が働きやすい環境を整備します。

また、若手とベテランの混合チーム編成や、メンター制度の導入により、世代間のコミュニケーションを促進し、お互いの強みを活かせる体制を構築することが重要です。

5.よくある質問と解決策

よくある質問と解決策

年齢制限に関する実務上の疑問について、具体的な解決策とともに解説します。

採用面接での年齢に関する質問はどこまで許容されるか

採用面接における年齢に関する質問については、慎重な対応が必要です。

基本的に年齢そのものを尋ねることは問題ありませんが、それを採否の判断材料とすることは避けなければなりません。

例えば、単に年齢を確認する目的での質問は許容されますが、「この年齢で転職を考えた理由は?」といった質問は、年齢差別的な意図があると解釈される可能性があります

代わりに、「これまでのキャリアで得た強み」「今後のキャリアプラン」など、年齢に依存しない質問を行うことが推奨されます。

年齢制限に違反した場合のリスク

年齢制限に関する法令違反があった場合、企業は様々なリスクにさらされる可能性があります。

まず、厚生労働省からの是正勧告や指導を受ける可能性があり、従わない場合は企業名の公表などの行政処分を受けることもあります

また、年齢差別を理由とした訴訟リスクや、企業イメージの低下による採用活動への悪影響も考えられます。

特に、SNSなどで年齢差別的な採用活動が指摘された場合、風評被害が拡大するリスクもあります。

違反を防ぐためには、採用担当者への教育を徹底し、募集要項や採用プロセスの定期的な見直しが重要です。

年齢差別のない公平な評価方法とは

公平な評価を実現するためには、年齢に依存しない客観的な評価基準の確立が不可欠です。

具体的には、運転技術や安全意識、コミュニケーション能力など、業務に直接関連する能力を評価項目として設定します。

評価方法としては、実技試験やロールプレイング、筆記試験などを組み合わせることで、多面的な評価が可能になります。

また、評価者の主観や偏見を排除するため、複数の評価者による評価や、評価基準のルーブリック化なども効果的です。

定期的な評価者研修を実施し、年齢バイアスに対する意識を高めることも重要な取り組みとなります。

6.年齢にとらわれない採用を!

年齢制限に関する法規制は、多様な人材の活用と公平な雇用機会の提供を目指すものです。

運送業界においても、年齢ではなく個人の能力や適性に基づいた採用活動が求められています。

法令を遵守しながら効果的な採用活動を行うためには、募集要項の工夫や評価基準の確立、職場環境の整備など、総合的なアプローチが必要です。

ドライバー向け人材サービス
【カラフルエージェント ドライバー】

トラックドライバー・タクシードライバー等の採用にお困りの方は、「カラフルエージェント ドライバー」にご相談ください!即戦力人材から若手未経験人材まで、各社のニーズに合わせて最適なご提案をいたします。