ドライバーの採用は、企業成長や顧客満足度に直結する重要なプロセスです。
しかし、適切な人材を見極め、また惹きつけことは容易ではありません。本記事では、ドライバー採用を成功に導くための面接官の心得と実践テクニックを紹介。
会社の顔としての意識、具体的な質問例まで、面接官が押さえるべきポイントを詳しく解説していきます。
- ドライバー採用面接で確認すべき重要ポイント(事故歴、ストレス耐性など)
- 効果的な面接の進め方と適切な質問例
- 面接官が避けるべきNG行動と質問
1.面接官としての心得5選
面接官として面接にあたる際はいくつかの心得があります。
ここでは、特に意識したい5つの心得について確認しましょう。
会社の顔として面接していることを忘れない
面接官は、求職者にとって会社の印象を左右する重要な存在です。会社に多くの従業員がいても、選考を通して求職者と関わる人数は限られています。
そのため、求職者は、面接官を通して将来一緒に働く同僚や上司をイメージする可能性が高いです。
面接官の態度が悪い場合、企業に対する印象が悪化したり、入社に対する意欲が低下したりするおそれがあります。
面接官は会社の顔であることを忘れずに面接に取り組むべきです。
対話を通じて相手の本来の魅力を見つけ出す
面接では、求職者との対話を通して、相手が自社にとって必要なスキルや能力をもつ人材であるか見極める必要があります。
面接を経験してきた数や性格によって、面接が得意な人もいれば不得意な人もいます。そもそも面接に臨む求職者は緊張しており、普段よりもうまく話せなくなるケースも珍しくありません。
そのような状況で本来の魅力を理解するには、求職者がアピールしやすい雰囲気づくりやアイスブレイクが重要です。
たとえば、面接のために明るい部屋を用意したり、求職者をリラックスさせる声がけをしたりすると、対話の中で求職者の本質をつかみやすくなります。
理想とする従業員像を明確に理解しておく
面接では求職者が自社に必要な人材か見極める必要があります。
しかし、そもそも自社がどのような人材を求めているか不明確であれば、面接をしても適切な選抜ができません。
面接官が複数いるなら、面接官によって選ぶ人材の質に差が出る可能性もあります。したがって、面接を行う前に自社にとって理想となる従業員像を明らかにし、面接官全員で共有することが大切です。
理想の従業員像を明確にしておくと、自社にすぐ馴染んでスムーズに活躍できる人材を採用しやすくなります。
面接に向けた下調べの徹底
面接官は会社を代表して求職者を見極める立場です。面接や書類のみで求職者が自社に合うか判断するには、事前の下調べに力を入れる必要があります。
たとえば、評価の具体的な基準や面接で避けるべき質問内容の把握です。
また、求職者から聞かれる可能性が高い内容を想定し、あらかじめ回答を用意しておくとスムーズに答えられます。
面接官が面接に慣れていない場合は練習を行い、面接の流れを確認しておくことも大切です。
自社の詳細な知識を身につける
面接官として求職者と対面する前には、自社に関する知識を改めて確認しておきましょう。
求職者も自社の情報を調べたうえで面接に臨みますが、外部から確認できる情報は限られています。
優秀な人材に入社を決意してもらうためには、面接を通して自社の魅力を伝えることも重要です。
従業員の一般的なスケジュールやキャリアパスなど、求職者から詳しい内容について質問される可能性もあるため、すぐに答えられるようにしておく必要があります。
2.ドライバー採用の面接官が確認すべきポイント
ドライバー採用の面接では、特に確認すべき内容があります。面接官の確認ポイントについて以下で詳しく見てみましょう。
事故歴と違反歴
ドライバーを採用するうえでは、事故歴と違反歴の確認が必須です。正確な情報を得るために、運転記録証明書を提出してもらいましょう。
運転記録証明書とは、過去5年、3年、1年の交通違反、交通事故、運転免許の行政処分を記録した書類です。
基本的には、3年以上の記録を確認しておくほうが確実です。なお、改ざんのリスクを避けるため、コピーではなく原本の提出を求めましょう。
書類の申請から発行までには数日かかるので、提出を求める旨を求職者に対して早めに伝えてください。
ストレス耐性を適切に判断する
ドライバーの仕事をこなすには、ストレス耐性が重要です。ドライバーとして働いていると、渋滞や事故のリスクなどさまざまなストレスがかかります。
ストレスの発散が得意ではない場合、仕事をスムーズに進められなくなったり、精神面に問題が生じたりしかねません。
どのような状況でもドライバーとして適切に仕事に取り組んでもらうには、求職者にストレスとうまく付き合えるスキルがありそうかどうかを見極めることが必要です。
健康状態
会社は従業員の安全や健康に配慮する必要があり、ドライバーとしての仕事に支障がないか確認しなければなりません。
貨物自動車運送事業輸送案安全規則の第17条においても、疾病などにより安全な運転ができない場合、従業員側から事業者に申し出るよう定められています。
健康状態について正確な情報を得るためにも、採用前に健康診断書の提出を求めましょう。
ただし、健康診断書の内容は個人情報であるため、不採用になった場合の取り扱いについても厳格に定めておくべきです。
参照:e-Gov「貨物自動車運送事業輸送案安全規則 第17条第1号の2」
会社や業界への理解・興味を探る
求職者のやる気や熱意を把握するために、会社や業界に対する理解や興味の度合いをチェックしましょう。
たとえば、会社のホームページを見たか聞いたり、自社の魅力について質問したりすると、求職者の姿勢と意欲を確認できます。
ホームページの内容をよく理解したうえで面接に臨んでいることが伝わってくる場合、自社の仕事に対するモチベーションがそれなりにあると判断できます。
また、そのような求職者を採用すれば、長期にわたり真面目に仕事に取り組んでくれる可能性が高いでしょう。
3.採用面接の基本的な進め方
採用面接は、流れを理解して進めることでスムーズにできます。
ここでは、採用面接の基本的な進め方について、実践テクニックとともに解説します。
①リラックスした雰囲気づくり(アイスブレイク)
面接に臨む求職者は緊張している可能性が高いため、まずはリラックスした雰囲気をつくるところから始めましょう。
いわゆるアイスブレイクの時間を取ることが大切です。具体的には、世間話のような内容で簡単な質問をしましょう。
「はい」または「いいえ」で答えられる質問なら、緊張している求職者も気軽に答えられます。たとえば「会社まで迷わず来られましたか」といった質問です。
また、グループで面接をする場合は、簡単なゲームでアイスブレイクする方法もあります。
②履歴書に基づいて質問を企業側が行う
アイスブレイクで場の雰囲気をつくれたら、自己紹介をしてもらい、基本的な情報を確認しましょう。
その後、自社が知りたい内容について、履歴書を見ながら求職者に質問を行います。ただし、面接の定番の質問は、大抵の求職者が事前に回答を準備しています。
そのため、決まりきった質問だけでは求職者の本音をなかなか引き出せません。
求職者のありのままの姿を把握するには、自社の特徴と絡めるなど質問の仕方を工夫することも重要です。
③志望動機や入社後の展望
入社後に活躍してもらうためにも、志望動機の確認は特に重要です。
単に「志望動機を教えてください」と質問するのではなく、「当社の魅力は何だと思いますか」や「同業他社ではなく、当社を選んだ理由は何ですか」といった質問をすれば、より具体的で本音に近い志望動機を確認しやすくなります。
また、入社後の展望についても確認しましょう。入社後にやりたいことが明確であれば、積極的に動いて活躍してくれると期待できます。
④希望条件の確認
面接では、求職者の希望条件も確認する必要があります。
担当業務や待遇などの情報は求人情報にも記載していますが、改めて提示して誤解や不明点がないかを確かめましょう。
面接において条件を擦り合わせれば、採用後のミスマッチやそれに伴うトラブルを防止できます。条件は求職者にとって重要であり、個別の要望がある可能性もあります。
そうした求職者の要望を必ず叶えられるとは限らないものの、誠意をもって納得を得られるよう説明することが大切です。
⑤求職者からの質疑応答
面接では面接官が質問するだけでなく、求職者の疑問に答える時間も確保しましょう。求職者は面接の時点で自社について完全に理解できているわけではありません。
また、面接官との対話を通じて新たな疑問が生まれている可能性もあります。面接の時間は限られていますが、可能な限り丁寧に回答しましょう。
求職者からの質問に対して適切な回答ができれば、求職者の志望度を高められる可能性もあります。
予想できる質問については、あらかじめ回答を用意しておくとスムーズです。その場で正確に答えられない質問が出た場合、取り繕おうとして曖昧に答えてはいけません。
正確な内容を確認して後からメールで伝えるなどしてください。
4.ドライバー向け面接で活かせる質問例
ドライバー採用の面接では、仕事に関する具体的な質問をする必要があります。
ここでは、面接の質問例を紹介します。
安全運転に関する質問
ドライバーの仕事を任せるうえで安全運転は重要です。そのため、面接においても、求職者が安全運転にきちんと配慮できるか、どの程度配慮できるかをチェックする必要があります。
たとえば「運転において違反の経歴はありますか」と質問し、大きな違反をしていないか確認しましょう。
小さな違反のみでも、何度も繰り返している場合は注意が必要です。
さらに「仕事中に事故にあった場合、どうしますか」という質問も考えられます。
運転する以上、どれほど気をつけていても事故にあう可能性はゼロではありません。本人に非のない、もらい事故などのケースもあるからです。
万が一の事態が発生しても適切な対応ができる人材なら、安心して自社のドライバーの仕事を任せられます。
免許を取得してからの質問
ドライバーとしての採用では、求職者の運転経験も確認したいポイントです。
免許を取得してからの期間は履歴書でも確認できますが、面接においても改めて確認しましょう。
たとえば「免許を取得してからどの程度の運転経験がありますか」と質問すると、求職者が運転に慣れているか把握できます。
ドライバーとしての業務経験もあれば、即戦力として活躍してもらうことが可能です。
キャリアビジョンを探る質問
入社後に意欲的に働いてもらえるか探るには、求職者のキャリアビジョンに関する質問が有効です。
キャリアについての考え方を聞けば、求職者が自社に適した人材かどうかもわかります。
たとえば「入社後、どのように活躍したいですか」と質問すると、求職者自身がどのような働き方をイメージしているか確認できるはずです。
入社直後の働き方だけでなく、将来的な展望への回答も得られるなら長く活躍してもらえる可能性があります。
安全意識の確認の質問
ドライバーとして日常的に運転するなかでは、安全意識が特に重要です。そのため、面接においても求職者の安全意識をチェックできる質問をしましょう。
単に「安全に対する意識をもっていますか」と聞くのではなく、「ドライバーとして何がいちばん大切だと思いますか」といった質問がおすすめです。
安全意識が重要だと即答できる求職者は、ドライバーの仕事に向いていると判断できます。
5.採用面接のNG行動・質問とは?
採用面接においては、面接官として気をつけたいNG行動や質問もあります。
以下で具体的に解説します。
印象を悪くするような態度をとらない
すでに触れたとおり、面接官は会社の顔であるという意識が重要です。
求職者からの印象が悪くなるような態度をとらないように気をつけましょう。
たとえば、面接中にあくびや腕組みをしないよう徹底してください。面接官の役目に集中していると無意識のうちに表情が険しくなっている場合もあるため、柔らかい表情を意識することも大切です。
また、面接では、なるべく求職者のほうを向いて話を聞きましょう。メモをずっと取り続けたり、資料ばかり見ていたりすると、求職者へきちんと向き合っていないと思われる可能性があります。
求職者の話を否定したり遮ったりしない
面接では、求職者の話に最後までしっかり耳を傾けるべきです。仮に求職者が間違った内容を話していても、途中で否定したり遮ったりしてはいけません。
求職者が最後まで話を聞いてもらえないと感じ、面接官だけでなく会社に対してマイナスなイメージをもつおそれがあるからです。
その結果、入社に対する意欲も下がり、内定を出しても入社してもらえない可能性が生じます。
求職者に一般的にしてはいけない質問
面接においては、求職者に対してタブーとされる質問もいくつかあります。
基本的に、思想信条に関わる質問は避けなければなりません。
たとえば、尊敬する人物、宗教、支持政党、購読中の新聞などについての質問はしないようにしましょう。
また、結婚、育児、容姿、性別などに関する質問をすると、ハラスメントに該当するリスクがあります。
6.適切な面接スキルを身につけ、採用成功の確度をあげよう
ドライバー採用の成功には、適切な面接スキルが不可欠です。
会社の顔としての自覚を持ち、求職者の本質を見極める努力が必要です。同時に、不適切な質問や態度は避け、公平で効果的な面接を心がけましょう。
これらの心得と対応スキルを身につけることで、自社に最適なドライバーを見出し、安全で効率的な運送業務の実現につながるはずです。
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