経営目標
全社的に生産性を向上させたい
HRBPとは?5つの役割や必要スキル、導入成功の3ステップを解説|運送・ドライバー・タクシー等のノンデスク領域の人事・労務お役立ち情報メディア
現代の企業経営において、人事部門の役割は大きく変化しています。特に注目されているのが「HRBP(Human Resource Business Partner)」という新しい人事の在り方です。HRBPは、人事の枠を超えて経営戦略に深く関わり、組織の成長を後押しする存在です。
本記事では、HRBPの基本的な意味から具体的な役割、導入のメリットや成功に導く実践的なステップまで、人事・総務担当者が知っておくべき重要なポイントを分かりやすく解説します
HRBPの基本的な概念や、従来の人事部門との違いを詳しく見ていきましょう。
HRBP(Human Resource Business Partner)とは、直訳すると「人事ビジネスパートナー」を意味し、従来の人事部門の枠を超えて経営戦略の実現に直接貢献する人事専門職を指します。
単なる人事業務の担当者ではなく、経営陣や事業部門のリーダーと対等なパートナーとして、組織の成長と成果向上を支援する戦略的な役割を担います。
従来の人事部門が労務管理や採用といった定型業務を中心としていたのに対し、HRBPは事業戦略の実現を主目的とする点が最大の違いです。従来型人事が「人事部門内で完結した業務」を行うのに対し、HRBPは「事業部門と一体となった課題解決」を行います。
また、CHRO(最高人事責任者)が全社的な人事戦略を統括する役割であるのに対し、HRBPは特定の事業部門に密着し、現場レベルでの戦略実行を担います。このように、HRBPは経営戦略と連動する「戦略人事」の中核を担う存在と言えます。
現場から得られる情報を経営層にフィードバックし、戦略の修正や改善に貢献する「情報の橋渡し役」としても機能します。
タレントマネジメントは、戦略人事の重要な手法のひとつです。こちらの記事では、システム導入から運用まで詳しく解説しています。
現代の経営環境は急激な変化が頻発しており、従来の人事アプローチでは対応が困難な課題が増加しています。
現代は、変化が激しく先行きが読みにくい「VUCA時代」と呼ばれています。
テクノロジーの急速な進歩、社会情勢の急変、消費者ニーズの多様化など、従来の常識では予測困難な変化が日常的に発生しているのです。HRBPは、変化に迅速に対応し、組織を柔軟に変革する専門性を持つため、VUCA時代の経営に不可欠な存在として注目されています。
少子高齢化による労働力不足と、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、企業の人材戦略は根本的な変革を迫られています。単に人員を確保するだけでなく、以下のような複合的な課題への対応が求められているのです。
HRBPは事業理解と人事専門性を併せ持ち、経営戦略と連動した人材戦略を立案・実行できるため、こうした複雑な課題解決に適しています。
人材こそが企業の最も重要な経営資源であり、適切な人事戦略なしには経営目標の達成は困難です。しかし、パーソル総合研究所の調査によると、自社が「戦略人事」を実現できていると回答した日系企業はわずか29.7%に留まっており 、多くの企業で経営戦略と人事戦略の連動が課題となっているのが現状です。
経営戦略と人事戦略のズレが生み出す悪循環の例
経営目標
全社的に生産性を向上させたい
しかし、人事制度は…
依然として労働時間を重視する評価体系のまま
従業員は効率的な働き方や生産性向上を目指さず、だらだらと残業時間ばかりが増える
HRBPは、経営陣と人事部門の橋渡し役として、経営戦略を人事の観点から具体化し、実行可能な施策として展開する役割を担います。この連動により、組織全体のパフォーマンス向上が期待できるでしょう。
参考:パーソル総合研究所「企業の人事部に関する調査結果を発表」
近年、経済産業省が推進するように、従業員の持つ知識やスキルを「資本」と捉え、その価値を最大限に引き出すことで企業価値向上につなげる「人的資本経営」が重視されています。
HRBPは、まさにこの人的資本経営を現場で実践し、経営戦略と人材戦略を結びつけるためのキーパーソンとして期待されています。
参考:経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」
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HRBPは、多様な専門性を活かし、組織の成長と競争力の強化に貢献する重要な役割を担っています。
HRBPの最も重要な役割は、経営戦略を人事の視点で解釈し、実行可能な人事施策へと落とし込むことです。いわば「戦略の翻訳者」として、経営陣が策定した事業目標や成長戦略を詳細に分析し、その実現に必要な人材要件、組織体制、スキル開発計画を具体化します。
同時に、現場から得られる情報を経営層にフィードバックし、戦略の修正や改善に貢献する「情報の橋渡し役」としても機能します。
■具体例:
経営陣「新規事業を立ち上げたい」
HRBP⇒実現に向けて以下のような施策を総合的に企画します。
この橋渡し機能により、経営戦略が絵に描いた餅にならず、人的資源の最適活用を通じて確実な成果創出につなげます。
HRBPは各事業部門のビジネスパートナーとして、現場の課題解決を支援する役割を果たします。
営業部門
売上向上に向けた人材配置の最適化をサポートし、持続的な成長を実現します。
製造部門
生産性向上のための技能開発プログラムを導入し、現場の効率を最大化します。
企画部門
社員の創造性を高める組織風土の改革を推進し、革新的なアイデアを育みます。
各部門の特性に応じたコンサルティングを提供します。
単なる人事制度の適用ではなく、事業の成功に直結する人事ソリューションを企画・提案することで、現場マネジャーの強力なサポーターとして機能し、組織全体の業績向上に貢献します。
組織内に潜在する課題を早期に発見し、適切な解決策を提案することもHRBPの役割です。従業員満足度調査、パフォーマンス分析、離職率の傾向分析などを通じて、組織の健康状態を定期的に診断します。
具体的には、以下のような改善策を提案します。
予防的なアプローチにより、大きな組織問題に発展する前に適切な対処を行い、組織の持続的な健全性を維持します。
事業戦略に基づいた人材採用と育成の企画・実行も、HRBPの大切な役割の一つです。将来の事業展開を見据えて必要な人材像を明確化し、採用チャネルの最適化、選考プロセスの設計、オンボーディングプログラムの構築を行います。
また、既存社員については個別のキャリア開発支援、スキルギャップ分析に基づく研修計画の策定、後継者育成プログラムの運営など、総合的な人材育成戦略を展開します。これにより、組織の人材力を継続的に向上させ、競争優位の源泉となる人的資本の構築を実現します。
採用ミスマッチは、人事戦略をくるわせかねない「避けるべき落とし穴」です。こちらの記事では、防止に向けた具体的な対策について詳しく解説しています。
急激な環境変化に対応するため、組織変革を主導することもHRBPの役割です。事業モデルの転換、組織構造の再編、企業文化の変革など、大規模な変化が必要な場面において、変革のビジョン策定から実行計画の立案、社員の意識改革まで一貫して推進します。
変革に対する抵抗や不安を最小限に抑えながら、組織全体を新しい方向性に導くためのコミュニケーション戦略や教育プログラムを企画・実施します。
このリーダーシップにより、組織は変化に対して柔軟かつ迅速に対応できる体制を構築できるでしょう。
HRBPを導入することで、組織運営の質と効率が大きく向上し、持続的な競争優位を築くことができるでしょう。
HRBPの導入により、人事的な観点からの正確な情報と分析が経営陣に提供されるため、より質の高い経営判断が可能になります。
■具体例:
経営陣「新規事業への参入を考えている」
⇒HRBPから、以下のような情報を提供
これらの情報を含め事前に詳細分析できるため、リスクを最小化した戦略的決定が行える
また、現場の人事課題や従業員の状況が迅速に経営層に伝達されることで、問題の早期発見と対応が可能となり、意思決定のスピードが大幅に向上します。
HRBPは事業部門との密接な連携により、各部門の特性と課題を深く理解し、最適な人事ソリューションを提供します。
営業部門であればインセンティブ制度の最適化による売上向上、開発部門であればクリエイティブな環境づくりによるイノベーション促進など、部門ごとに異なるアプローチで成果の最大化をめざせるでしょう。
また、組織全体の人材配置を戦略的に最適化することで、個人のスキルと業務のマッチ度が高まり、従業員のモチベーションと生産性を同時に向上させることができます。
VUCA時代において、環境変化への適応力は企業の存続に直結する重要な要素です。HRBPは継続的な組織診断と改善により、変化に柔軟に対応できる組織体制を構築します。
新しいテクノロジーの導入時には必要なスキル研修の企画、市場環境の変化には人材配置の見直し、働き方の多様化には制度改革の推進など、さまざまな変化に対して迅速かつ適切な対応策を実施します。
組織パフォーマンス向上には従業員のウェルビーイングも欠かせません。こちらの記事では、企業が取り組むべき5つのポイントについて詳しく解説しています。
効果的なHRBP導入には、段階的なアプローチと継続的な改善が不可欠です。
まず、自社の現状を正確に把握し、導入目的を明確にすることから始めましょう。以下の分析を行い、HRBPに期待する役割と成果を具体的に定義します。
経営陣、人事部門、各事業部門のリーダーへのヒアリングを通じて、組織全体の課題認識と期待値を整理し、HRBP導入による解決すべき優先課題を特定してください。
導入にかかるコストと期待される効果を定量的に評価し、経営陣の承認と組織全体のコミットメント獲得を目指しましょう。
一度にすべての機能を導入するのではなく、段階的なアプローチを取ることで、リスクを最小化しながら着実に定着を図ります。まず特定の事業部門や機能から試行的にHRBPを配置し、その効果を検証しながら他部門への展開を進めましょう。
その際、HRBPに必要なスキルセットを定義し、内部昇格による人材育成か外部採用による即戦力確保かを戦略的に判断します。
導入規模を検討する際の一つの目安として、Deloitte Tohmatsu Groupが紹介する米国の調査では、「従業員200名あたりHRBP1名」 という比率が示されています 。もちろん、企業のステージや事業内容によって最適な比率は異なりますが、具体的な人員計画を立てる上での参考になります。
参考:Deloitte.「グローバル企業におけるHRBPのあり方」
HRBP導入後は、継続的な効果測定と改善が成功の鍵となります。以下のように、複数の指標でHRBPの成果を定量的に評価してください。
四半期ごとの振り返りと年次の総合評価により、HRBPの活動内容と成果を多角的に分析し、必要な改善策を実施しましょう。
また、HRBP自身のスキル開発やキャリア発展を支援するため、研修プログラムや外部ネットワークへの参加機会を提供し、継続的な能力向上を図ります。組織の成長とともにHRBPの役割も進化させ、常に最適な人事戦略の実現を目指す改善サイクルの構築を目指しましょう。
HRBPの成功には、事業理解と人事専門性を兼ね備えた人材が不可欠です。カラフルエージェントでは、豊富な経験を持つマネジメント層の紹介も可能です。段階的導入をサポートする実務経験者をご紹介します。
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HRBP導入を成功させるために、事前に把握しておくべき重要なポイントと対策を確認しましょう。
HRBP導入でよく見られる失敗として、役割と責任の曖昧さが挙げられます。既存の人事部門との役割分担が不明確なまま導入すると、業務の重複や責任の所在不明により組織の混乱を招くのです。
また、HRBPに過度な期待をかけすぎることも注意が必要です。短期間での劇的な成果を求めると、現実的でない業務負荷や責任を押し付けることになり、HRBP自身のモチベーション低下や早期離職につながります。
事業部門のリーダーがHRBPの価値を理解しておらず、連携不足によりHRBPが孤立してしまうケースも注意が必要です。
HRBP導入を成功させるには、組織全体でその価値と意義を共有することが不可欠です。具体的には、以下のような取り組みが効果的です。
経営陣
HRBPの役割と期待される成果を明確に示し、組織全体に一貫したメッセージを発信する
各部門のマネジャー
HRBPとの協働により得られる具体的なメリットを事例を交えて説明し、積極的な連携を促進
従業員
HRBPが個人のキャリア発展や働きやすさの向上にどう貢献するかを具体的に示し、理解と支持を獲得
また、導入初期の成功事例を積極的に共有するなど、HRBPの価値を組織内で実感できるよう工夫しましょう。
HRBPの真価は短期間では見えにくいため、長期的な視点での評価と支援が必要です。成果指標を短期的な数値目標だけでなく、組織文化の改善、従業員のエンゲージメント向上、将来の競争力強化など、質的な要素も含めて設定しましょう。
また、HRBPのスキル開発とキャリア発展を継続的に支援する仕組みを構築し、優秀な人材の定着を図ります。外部の専門機関との連携や他社との情報交換により、最新の人事トレンドやベストプラクティスを取り入れ、常に進化し続ける体制を整えてください。
HRBPの価値を社内で理解してもらうためには、効果的なコミュニケーションが欠かせません。こちらの記事では、7つの実践方法と成功事例を詳しく解説しています。
HRBP導入にはさまざまな課題が伴いますが、適切な人材確保が成功の鍵となります。カラフルエージェントでは、組織変革をリードできる経験豊富な管理職から実務担当者まで、幅広い人材をご紹介できます。
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HRBPは単なる人事の新しい役職ではなく、組織の競争力を根本から変革する戦略的な仕組みです。従来の人事業務の枠を超えて、経営戦略と人事戦略を一体化させることで、変化の激しいVUCA時代においても持続的な成長を実現できる組織づくりを目指せます。
導入には時間と労力を要しますが、段階的なアプローチと継続的な改善により、必ず組織の未来を切り拓く力となるでしょう。HRBPを戦略的に活用し、組織の成長を加速させましょう。
HRBPの実現には心理的安全性の高い組織づくりが重要です。強い組織を作るための8つの方法を具体的に紹介しています。
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