勤怠管理と給与計算をシステム連携｜ミス削減&効率化するコツ

勤怠データの転記ミス、計算間違い、法改正への対応など、人事・総務担当者にとって給与計算は負担の大きな業務です。特に月末から月初にかけては残業が続き、他の重要な業務が後回しになってしまうことも多いでしょう。

しかし、こうした課題は、勤怠管理システムと給与計算システムを連携させることで大幅に軽減できます。本記事では、勤怠管理と給与計算の連携による効率化方法を詳しく解説します。システム選びから導入のコツまで、実践的な情報をお届けしますので、ぜひ業務改善の参考にしてください。

1．勤怠管理システムと給与計算システムの基本

まずは勤怠管理システムと給与計算システムの基本的な機能を理解し、なぜ両システムの連携が重要なのかを確認しましょう。

勤怠管理システムとは？基本機能を解説

勤怠管理システムは、従業員の出退勤時刻や勤務時間を記録・管理するためのツールです。従来のタイムカードに代わって、ICカードやスマートフォンアプリ、PCを使った打刻が一般的です。主な機能は、以下のとおりです。

複雑な勤務形態でも正確な時間管理ができ、労務管理の効率化に大きく貢献します。

給与計算システムとは？主要機能も紹介

給与計算システムは、従業員の給与を自動で計算するソフトウエアです。基本給、各種手当、残業代の計算から、社会保険料、所得税、住民税などの控除額計算まで、複雑な給与計算を正確に処理します。以下で主要機能をみていきましょう。

法改正にも自動で対応するため、税率や保険料率の変更があっても手動での修正は不要です。給与支払いから経理処理までスムーズに行えます。

なぜ勤怠管理と給与計算の連携が重要なのか

勤怠管理と給与計算は、連携することで、勤怠データが自動的に給与計算システムに反映されるため業務効率化と正確性向上が期待できます。

2．従来の勤怠管理・給与計算がかかえる課題

従来の勤怠管理・給与計算方法には、効率性や正確性の面でさまざまな課題があります。

エクセルや紙ベース管理の限界

多くの中小企業では、タイムカードやExcelを使った勤怠管理を行っていますが、この方法には多くの課題があります。

■例えば…

• 紙のタイムカードでは打刻漏れや不正打刻の発見が困難
• Excelでは関数エラーやファイル破損のリスクがある
• 複数人での同時編集ができず作業効率が悪い
• データのバックアップ管理が困難
• 法改正に伴う計算式の修正作業が必要など

手入力によるミスが発生しやすい

勤怠データを手作業で転記し給与計算する場合、ヒューマンエラーは避けられません。

例えば、勤怠データの転記ミスや各種控除額の入力ミスといった単純な誤りに加え、残業時間の計算間違いや複雑な変形労働時間制での労働時間算出ミスといった、給与計算にある複雑さがまねくミスもよくあります。

また、ミスが発見された場合の修正作業も時間がかかり、場合によっては給与の再計算と再支給が必要になることもあります。

毎月の締め作業が膨大

月末から月初にかけての締め作業は、人事担当者にとって最も負担の大きい期間です。勤怠データの集計や残業時間の確認、有給取得日数の計算といった勤怠管理に加え、複雑な給与計算や社会保険料・税額の算出など、その作業量は膨大です。

従業員数が多いほど作業時間が増加し、月の半分以上を締め作業に費やすことも珍しくありません。この期間中は他の人事業務が後回しになり、全体的な業務効率の低下を招いています。

属人化による業務継続リスク

従来の手作業による管理では、特定の担当者に業務が集中し、属人化が進みやすい傾向があります。

■勤怠管理や給与計算業務が属人化すると、以下のようなリスクが高まります。

• 担当者の急な休暇や退職時に業務が停止する
• 業務の標準化や改善が困難
• 個人の判断に依存する部分が大きく、法的リスクが高まるなど

このような状況では、組織全体の生産性向上が阻害され、コンプライアンス面でも問題が生じる可能性があります。

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3．勤怠管理と給与計算を連携するメリット

勤怠管理と給与計算をシステムにより連携することで、従来の課題を解決し、業務効率と正確性を大幅に向上させられます。具体的なメリットについてみていきましょう。

メリット1｜業務効率化による時短効果

勤怠管理と給与計算システムの連携により、最も大きな効果として現れるのが業務時間の短縮です。

従来手作業で行っていた勤怠データの転記作業が自動化され、月末の締め作業時間を大幅に短縮できるでしょう。また、給与明細の作成から配布まで一連の流れが自動化されるため、印刷や封入作業も不要になります。

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メリット2｜人為的ミスの大幅削減

システム連携により、以下のような人為的ミスの削減が期待できます。

• 転記ミス
  勤怠データが自動的に給与計算システムに反映されるため、転記ミスがおきない
  
  
• 計算ミス
  あらかじめ設定されたルールに基づいて各種手当や残業時間が自動計算されるため、計算ミスのリスクがない
  
  
• 法定料率ミス
  社会保険料や税額の計算が、最新の法定料率で自動計算されるため、料率の適用ミスが防げる

メリット3｜法改正への自動対応

労働関連法規や税制は頻繁に改正されるため、手作業での対応は非常に困難です。システム連携により、これらの法改正への対応も、システム連携することで自動化できます。

例えば、社会保険料率の変更、最低賃金の改定、所得税率の変更などが発生した場合、システム側で自動的にアップデートするため、人事担当者が個別に対応する必要がありません。また、働き方改革関連法に対応した残業時間の上限管理や、有給休暇の取得義務化への対応も自動で行われます。

これにより、法令違反のリスクを大幅に軽減でき、コンプライアンス体制の強化にもつながるでしょう。

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メリット4｜コスト削減効果

システム導入により、直接的・間接的なコスト削減効果が期待できます。

初期導入費用を考慮しても、多くの企業で1年以内に投資回収が可能な水準でのコスト削減効果が実現されています。

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4．勤怠管理システムと給与計算システム連携の4つの方法

勤怠管理システムと給与計算システムを連携する方法は、大きくわけて3つあります。自社の状況に応じて最適な選択肢を選びましょう。

①一体型システム：勤怠管理から給与計算まで一括管理

一体型システムは、勤怠管理と給与計算が一つのシステム内で完結する最もシンプルな連携方法です。同一ベンダーが提供するため、データの整合性が完全に保たれ、操作方法も統一されているため習得しやすいのが特徴です。

【ポイント】

• 勤怠データの入力から給与明細の出力まで、すべての処理が一つの画面で完結
• データの移行作業や設定の複雑さがない
• サポート窓口が一つで済むため、トラブル時の対応がスムーズ
• 別々にシステムを導入するより割安になるケースが多い

　

②シリーズ連携：スムーズなデータ連携

シリーズ連携は、同一ベンダーが提供する勤怠管理システムと給与計算システムを組み合わせる方法です。一体型と比べて各システムの専門性が高く、より詳細な機能を利用できます。

【ポイント】

• データ連携も専用のインターフェースで自動化されており簡単
• 各システムが独立しているため機能拡張や他システムとの連携も柔軟に対応できる
• まず勤怠管理から始めて後から給与計算を追加するといった段階的導入も可能

　

③API連携：既存システムを活用

API連携は、異なるベンダーのシステム同士を専用のインターフェース（API）で接続する方法です。既に優秀な勤怠管理システムや給与計算システムを導入している企業に適しています。

【ポイント】

• 各システムの長所を活かしながら、データの自動連携を実現できる
• 特殊な要件がある企業にも対応できる

　

④CSV連携：汎用的な連携方法

CSV連携は、勤怠管理システムから出力されたCSVファイルを給与計算システムに取り込む方法です。最も汎用的で、ほぼ全てのシステムで対応可能な連携方法です。

【ポイント】

• 特別な設定や技術が不要なため、低コストで導入できる
• データの確認や修正が簡単で、異なるベンダーのシステム同士でも確実に連携できる

　

5．勤怠管理・給与計算システム導入状況別｜最適な連携方法

ここまで、4種類の導入方法について解説してきました。どの導入方法を選ぶかは、企業の現状に応じて適切に判断することが重要です。以下で、選定時のポイントを解説します。

勤怠管理・給与計算のどちらかのみシステム導入済みの場合

既に勤怠管理システムや給与計算システムを、どちらかのみ導入している場合、そのシステムと連携可能なシステムを選ぶとよいでしょう。まずは、現在使用しているシステムがどのような連携方法に対応しているかを確認します。以下の2点をチェックしてください。

両方とも導入済みの場合の連携方法

勤怠管理と給与計算の両システムが既に導入されている場合は、現状を活かした連携方法を検討します。最も現実的なのはCSV連携で、両システムがCSV出力・インポートに対応していれば手軽に始められます。API連携が可能な場合は、より自動化された連携を実現できますが、技術的な設定が必要になります。

また、中間システムやRPAツールを活用してデータ連携を自動化する方法もあります。

どちらも未導入の場合のおすすめ選択肢

勤怠管理・給与計算ともに未導入の企業には、一体型システムが最もおすすめです。操作方法も統一されており、サポート窓口も一つで済むため、初めてのシステム導入でも安心です。段階的導入も可能で、まず勤怠管理から始めて業務に慣れてから給与計算を追加することもできます。

コスト面でも別々に導入するより経済的で、将来的な機能拡張にも対応できます。

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6．おすすめ勤怠管理・給与計算システム比較

おすすめの勤怠管理・給与計算システムを4つ紹介します。導入のポイントや特徴をわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。

ジョブカンシリーズ

画像：ジョブカンシリーズ

ジョブカンシリーズは、勤怠管理から給与計算まで一括で管理できる統合型システムです。シンプルで直感的な操作画面が特徴で、初めてシステムを導入する企業でも迷わず使用できます。

freee人事労務

画像：freee人事労務

freee人事労務は、会計ソフトで有名なfreee株式会社が提供する人事労務システムです。freee会計との連携により、給与計算から経理処理まで一気通貫で処理でき、月次決算の効率化にも貢献します。

KING OF TIME

画像：KING OF TIME

KING OF TIMEは、勤怠管理に特化した高機能システムで、300円/人の従量課金制により利用できます。KING OF TIME給与との連携により、勤怠データから給与計算まで自動化可能です。導入実績も豊富で、信頼性の高いシステムとして評価されています。

マネーフォワードクラウド

画像：マネーフォワードクラウド

マネーフォワードクラウドは、勤怠管理・給与計算・会計がシームレスに連携するクラウドサービスです。従業員31名以上で300円/人、30名以下は基本料金制という柔軟な料金体系が特徴です。給与計算データが自動で仕訳に変換され、マネーフォワードクラウド会計に連携されるため、経理業務の効率化も同時に実現できます。

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運送業・トラックドライバーの管理に特化した、業界ならではの機能が充実した勤怠管理システムも多数あります。以下の記事で詳しく比較していますので、ぜひご覧ください。

7．勤怠管理・給与計算システム導入成功のための準備と進め方

自社に適したシステムが決まったら、導入フェーズに進みましょう。事前準備と段階的な進行が、成功のカギをにぎります。

導入前に整理すべき業務フローと課題

システム導入前に、現在の業務フローを詳細に整理し、課題を明確にしましょう。

これらの情報を整理することで、システムに求める機能や改善したい点が明確になり、適切なシステム選択につながります。

スムーズな移行のためのデータ準備

システムを導入する際、初期設定に必要なデータの事前準備が欠かせません。以下の一覧をもとに、情報を整理しておきましょう。

既存システムからのデータ移行が必要な場合は、CSV形式での出力や、移行ツールの利用方法も事前に確認しておきましょう。データの正確性を保つため、複数人でのチェック体制も整えてください。

従業員への教育と運用定着のコツ

新システムの定着には、従業員への適切な教育と継続的なサポートが必要です。導入前に説明会を開催し、新システムのメリットと操作方法を分かりやすく説明しましょう。スマートフォンアプリでの打刻方法、休暇申請の手順、給与明細の確認方法など、実際に操作しながら学べる研修が効果的です。

操作マニュアルは図解を多用し、よくある質問をQ&A形式でまとめておきます。導入初期は問い合わせが増加するため、社内のサポート体制を整え、迅速に対応できるよう準備しておきましょう。

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導入効果を測定する指標の設定方法

システム導入の効果を客観的に評価するため、事前に測定指標を設定しておきます。以下のような項目を、導入前に測定しておきましょう。

また、導入後は従業員満足度を調査し、給与明細の見やすさやシステムの使いやすさをアンケートで評価します。これらの指標を定期的に測定し、改善点を反映させながら継続的にシステムを最適化することで、長期的な効果を最大化できるでしょう。

8．システム連携で実現する業務効率化とミス削減

勤怠管理と給与計算の連携は、単なるシステム導入にとどまらず、業務全体の品質向上につながります。毎月の締め作業や手作業による入力ミスから解放され、人事担当者が採用・人材育成などの戦略的業務に集中できる環境が整うでしょう。

システム選定に迷う場合は、まず現状の課題を正確に把握し、自社に最適な連携方式を検討することが重要です。段階的な導入や試用期間をもうけているベンターも多いので、まずは気軽に実行に移してみましょう。

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