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裁量労働制とは?令和6年4月から変わった適用要件も解説!

働き方改革が進む中、裁量労働制を取り入れる会社も増えてきています。

本記事では、裁量労働制の基本から法改正のポイント、実務での運用方法まで、人事労務担当者が押さえておくべき内容を詳しく解説します。

この記事を読んでわかること
  • 裁量労働制の種類と他の労働時間制度との違い、活用メリット
  • 2024年4月施行の法改正における重要な変更点と対応方法
  • 裁量労働制を導入・運用する際の具体的な注意点と実務のポイント

1.裁量労働制とは?

1.裁量労働制とは?

働き方改革が進む中、多様な労働時間制度の一つとして注目を集める裁量労働制について、基本的な概念から最新の制度改正まで、詳しく解説していきます。

裁量労働制度の定義と目的

裁量労働制とは、労働者の裁量性を重視し、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定められた時間働いたものとみなす制度です。

労働基準法第38条の3および第38条の4に基づき、専門的な知識やスキルを必要とする業務、もしくは事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務に従事する労働者に適用されるケースが多くあります。

この制度の主な目的は、業務遂行の手段や時間配分を労働者の裁量に委ねることで、創造的な業務の効率的な遂行を促進し、成果を重視した評価を可能にすることです。

実務では、研究開発、システム開発、企画業務などの分野で多く活用されており、労働時間による管理ではなく、成果による評価を重視する現代の働き方に適合した制度として注目されています。

なぜ今裁量労働制が注目されているのか

近年、裁量労働制が注目を集めている背景には、働き方改革の推進と労働環境の多様化があります。

テレワークの普及や職種の専門化が進む中、従来の時間管理による労働評価では対応が難しくなってきています

特に創造的な業務や専門的な業務においては、単純な労働時間と成果が比例関係にないケースが多く、より柔軟な労働時間管理の必要性が高まっています。

また、2024年4月からの法改正により、制度の適用範囲が拡大され、より多くの企業や職種での導入が可能となることも、注目度が高まっている要因の一つです。

このような社会的背景と制度改正により、裁量労働制は現代の働き方改革における重要なツールとして位置づけられています。

専門業務型と企画業務型の違い

裁量労働制には、専門業務型と企画業務型の2種類があり、それぞれ適用要件や対象業務が異なります。

専門業務型

労働者が業務遂行の手段や方法、時間配分などについて大幅な裁量をゆだねられる業務に就いた場合、労使で定めた時間分働いたとみなす制度です。比較的導入のハードルが低いのが特徴です。

企画業務型

事業運営に関する企画、立案、調査、分析の業務に従事する労働者を対象とし、より厳格な要件が設定されています。企画業務型では、労使委員会の設置や決議、行政官庁への届出など、より慎重な手続きが必要とされ、対象となる労働者の範囲も限定的です。

これらの違いを理解し、自社の状況に適した型を選択することが、制度の効果的な運用につながります。

2.裁量労働制とその他の働き方との違い

裁量労働制とその他の働き方との違い

働き方改革の流れの中で、様々な労働時間制度が導入されています。ここでは、裁量労働制と他の柔軟な働き方との違いを明確にしていきます。

変形労働時間制

変形労働時間制は、一定期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲で、特定の日や週の労働時間を変更できる制度です。

繁忙期と閑散期の労働時間を調整することで、効率的な人員配置が可能となります。裁量労働制が個人の裁量に基づく働き方であるのに対し、変形労働時間制は会社が労働時間を管理し、シフトなどで調整する点が大きく異なります。

特に季節変動のある業種や、サービス業などで活用されることが多く、労働時間の柔軟な配分による業務効率の向上を目的としています。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は、1日の労働時間帯を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、労働者が自由に出退勤できる時間帯(フレキシブルタイム)に分けて運用する制度です。

裁量労働制が成果に応じた評価を重視するのに対し、フレックスタイム制は実際の労働時間を管理しながら、始業・終業時刻の決定を労働者に委ねる点が特徴です。

ワークライフバランスの向上や通勤時の混雑回避など、労働者の生活との調和を図りやすい制度として広く普及しています。

事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制は、労働者が事業場外で業務に従事し、労働時間の算定が困難な場合に適用される制度です。

営業職や外回りの多い職種で一般的に使用され、所定労働時間か、あらかじめ定められた時間を労働したものとみなします。

裁量労働制が業務の遂行方法や時間配分に高度な裁量性を必要とするのに対し、事業場外みなし労働時間制は単に労働時間の把握が困難な場合に適用される点が異なります。

高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度は、高度な専門的知識を持つ労働者を対象に、労働時間規制の適用を除外する制度です。

年収要件(1,075万円以上)や職務要件など、厳格な適用条件が設けられており、裁量労働制よりもさらに限定的な制度となっています。

裁量労働制が労働時間のみなし制を採用するのに対し、高度プロフェッショナル制度は労働時間規制そのものを適用除外とする点が大きく異なります。

この制度は、特に高度な専門職に対して、より柔軟な働き方を可能にすることを目的としています。

3.企業側から見た裁量労働制のメリットとデメリット

企業側から見た裁量労働制のメリットとデメリット

裁量労働制の導入を検討する企業にとって、メリットとデメリットを正確に理解することは重要です。ここでは、実務的な観点から両面を詳しく解説します。

メリット

裁量労働制の導入により、企業は以下のような具体的なメリットを期待することができます。

メリット①労働時間管理の簡素化

実労働時間ではなく、みなし労働時間で管理することで、時間管理に関する事務負担が軽減

メリット②専門性の高い人材の確保がしやすい

裁量労働制を導入している企業は、働き方の自由度を重視する高度専門人材にとって魅力的な職場となり、採用面での優位性を持てる

メリット③モチベーション向上に貢献

時間にとらわれない、より質の高い成果を生み出す環境が整備されると、従業員の創造性とモチベーションの向上も期待従業員の創造性とモチベーションの向上も期待できる

デメリット

一方で、裁量労働制には注意すべきデメリットも存在します。

デメリット①長時間労働のリスク

みなし労働時間制であっても、実際の労働時間が著しく長くなる可能性があり、従業員の健康管理に特別な配慮が必要

デメリット②労務管理

制度の運用には慎重な労務管理が求められ、適切な評価制度の構築や健康管理措置の実施など、新たな管理体制の整備が必要

デメリット③不公平感

従業員間での不公平感が生じる可能性もあり、同じ部署内でも裁量労働制が適用される従業員と適用されない従業員が混在する場合、処遇や働き方の違いによる軋轢が生じる可能性がある

4.裁量労働制の導入時注意点

裁量労働制を導入する際には、法的要件の遵守と実務的な運用面での配慮が必要です。ここでは、特に重要な注意点について解説します。

みなし労働時間と時間外手当

裁量労働制においては、みなし労働時間の適切な設定が極めて重要です。みなし労働時間は、業務の実態や過去の労働時間データを基に、適正な水準で設定する必要があります

実際の業務量や労働時間と大きく乖離したみなし時間の設定は、労働基準監督署からの是正指導の対象となる可能性があります。

また、みなし労働時間を超えて労働した場合の時間外手当の取り扱いについても、あらかじめ明確な基準を設定しておく必要があります。

特に、深夜労働や休日労働が発生した場合の割増賃金の計算方法については、労使間で十分な協議を行い、合意形成を図ることが重要です。

36協定について

裁量労働制を導入する場合でも、36協定の締結は必要不可欠です。みなし労働時間制であっても、法定労働時間を超える可能性がある場合には、36協定の締結と届出が必要となります。

特に注意すべき点として、裁量労働制の対象者に対する時間外労働の上限規制は一般の労働者と同様に適用されることが挙げられます。

また、健康管理の観点から、実際の労働時間を適切に把握し、過重労働を防止するための措置を講じることも重要です。

36協定(サブロク協定)とは?

36協定(サブロク協定)とは、労働基準法第36条に基づき、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合に、労働者の過半数を代表する者(労働組合または従業員代表)と使用者との間で締結する労使協定のことです。

協定では、時間外労働の上限(原則月45時間、年360時間、特別条項適用時でも年720時間)や休日労働の日数、割増賃金率などを定め、労働基準監督署に届け出る必要があります。違法な長時間労働を防止し、労働者の健康を守るための重要な制度として位置づけられています。

5.2024年の法改正による変更点

2024年の法改正による変更点

2024年4月からの法改正により、裁量労働制には重要な変更が加えられます。ここでは、改正のポイントと実務への影響を詳しく解説します。

主な改正内容と影響

2024年4月からの法改正では、労働者保護の強化と制度の適正な運用を目的とした重要な変更が実施されます。

具体的には、労働者本人の同意取得の義務化が導入され、同意しなかった場合の不利益取扱いの禁止が明確化されました。

また、一度与えた同意の撤回手続きについても、労使協定で定めることが必要となります。

これらの変更により、従業員の意思をより尊重した制度運用が求められることとなり、企業側には従来以上に慎重な対応が必要となります。

さらに、専門業務型裁量労働制の対象業務として、銀行や証券会社におけるM&A関連業務が新たに追加されるなど、適用範囲の拡大も図られています。

健康管理措置の強化ポイント

改正法では、健康管理措置の強化が重要なポイントとして位置づけられています。

特に専門業務型裁量労働制において、健康・福祉確保措置の実施が新たに義務付けられました

具体的には、長時間労働の抑制や休日確保を図るための全社的な措置と、個々の労働者の状況に応じた個別の措置の両方を実施することが求められます。

例えば、連続した休暇の付与や、労働時間の上限設定などの全体的な措置に加えて、産業医による面接指導や健康相談の実施といった個別的な措置を組み合わせて実施する必要があります。

新しい対象業務と適用要件

法改正により、専門業務型裁量労働制の対象業務が拡大され、従来の19業種に加えて、新たにM&A関連の調査・分析業務が追加されました。

この追加により、金融機関における専門的な業務にも裁量労働制の適用が可能となります。また、企画業務型裁量労働制においても、運用規程に記載すべき事項が追加され、より詳細な制度設計が求められることとなりました。

これらの変更に対応するため、企業は既存の規程や運用方法の見直しを行い、必要に応じて改定を行う必要があります。

6.裁量労働制導入後の運用ポイント

裁量労働制導入後の運用ポイント

裁量労働制を効果的に機能させるためには、導入後の適切な運用と管理が不可欠です。ここでは、実務的な観点から重要なポイントを解説します。

労働時間の適切な把握方法

裁量労働制を導入している場合でも、実際の労働時間を適切に把握することは重要です。

労働時間の把握は、従業員の健康管理や過重労働防止の観点から必要不可欠です。

具体的な方法としては、ICカードやPCログによる客観的な記録、自己申告制による方法などが考えられますが、どの方法を採用する場合でも、実態を正確に反映できる仕組みを構築することが重要です。

特に、深夜労働や休日労働の実態把握については、割増賃金の支払いや健康管理の観点から、より厳密な管理が求められます。

効果的な評価制度の設計

裁量労働制の本質は、労働時間ではなく仕事の成果で評価することにあります。そのため、明確で客観的な評価基準の設定が不可欠です。

評価項目には、業務の質や量、創造性、専門性の発揮度合い、チームへの貢献度など、多面的な要素を含めることが望ましいです。

また、定期的な面談を通じて、目標の設定や進捗確認、フィードバックを行うことで、従業員の成長を支援する体制を整えることも重要です。

評価結果は、処遇や報酬に適切に反映させることで、モチベーションの維持・向上につながります。

トラブル防止のための施策

裁量労働制の運用において、様々なトラブルを未然に防ぐための施策が重要です。

まず、制度の趣旨や運用ルールについて、対象者を含む全従業員に対して十分な説明を行い、理解を得ることが必要です。

また、従業員からの相談や苦情に対応する窓口を設置し、問題の早期発見と解決を図る体制を整えることも重要です。

特に、長時間労働や健康問題に関する懸念については、産業医や衛生委員会と連携しながら、適切な対応を取ることが求められます。

7.成功する裁量労働制導入のために

裁量労働制は、適切な運用により企業と労働者の双方にメリットをもたらす制度です。

2024年の法改正では、労働者保護の強化と適用範囲の拡大が図られており、これを機に多くの企業で制度の見直しや新規導入の検討が進むことが予想されます。

成功のカギは、制度導入の目的明確化、対象業務・対象者の適切な選定、そして何より従業員との信頼関係の構築にあります。

経営層のコミットメント、人事部門による適切な制度設計、現場管理職の理解と協力、これらの要素を総合的に考慮しながら、自社の実情に合った運用を行うことで、裁量労働制は働き方改革の有効なツールとして機能するはずです。

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